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スペインが「メジャー3連覇」の偉業。
“支配できずとも勝つ”新次元の強さ。 

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細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2012/07/02 13:20

スペインが「メジャー3連覇」の偉業。“支配できずとも勝つ”新次元の強さ。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

優勝トロフィーを囲むスペインの選手たち(前列左からイニエスタ、セスク、ピケ、シャビ、後列左からブスケッツ、アルバ)。グループリーグでの対戦では苦しめられたイタリアだったが、決勝では圧巻の強さを見せ、史上初のユーロ連覇を成し遂げた。

 あまりにも不幸なアクシデントがなかったとしても、やはりスペインはイタリアを倒し、欧州王座の栄冠に輝いていただろう。それほどまでにスペインは強く、満身創痍のイタリアが太刀打ちできる相手ではなかった。

 後半開始からわずか12分、投入されたばかりのモッタがピッチに倒れた時点で、勝負の行方は決した。

 駆け寄ったチームメートはすぐベンチに選手交代の合図を送ったが、彼らは既に、指揮官が3枚の交代カードを使い切っていたことを忘れていた。もはや、打つ手はない。それを察した選手は頭を抱え、テクニカルエリアに立つ指揮官プランデッリは腕組みをしたまま動かなかった。

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 モチベーションを失ったイタリアに対し、スペインは容赦なく追い打ちを掛けた。75分にはトーレスをピッチに送り込み、これをゴーサインとして、10人の敵陣に空いたスペースをさらに深くえぐる。84分にはトーレスがゴールネットを揺らし、さらに5分後にはマタの追加点で万事休す。“これ以上の何か”が起こるわけもない3分間のロスタイムは平穏なまま過ぎ去り、ウクライナのオリンピックスタジアムにレフェリーの笛が鳴り響いた。

 ユーロの連覇、そしてその間にW杯制覇を挟む“メジャー3連覇”は、紛れもなく史上初の偉業である。ユーロ2008制覇に端を発する黄金時代には、4年の歳月が経過した今も付け入る隙すら見当たらない。スペインはやはり、史上最強と断言していい。イタリアとのファイナルは、彼らがそれを誇示するための90分間だった。

ゲームの流れを変えた、キエッリーニの負傷交代。

 グループリーグ初戦でスペイン相手に互角の戦いを演じたイタリアは、しかしその90分間で得た確かな手応えに頼らなかった。この日のシステムは、“奇襲”として奏功したあの時の3-4-1-2ではなく、戦いを通じて本来の機能美を取り戻し始めた4-3-1-2。初戦のように前線からボールを奪いに行くのではなく、まずはきっちり構えて試合を落ち着かせようとした。

 スペインにとっての幸運とイタリアにとっての不幸は、イニエスタとセスクの個人技から生まれた14分の先制点ではない。ゲームの流れを動かしたのは、かねてから故障を抱えていたイタリアの左SBキエッリーニの負傷交代だった。

 直後はイタリアにポジティブに作用した。代わりに投入されたバルザレッティが積極的に高い位置を取り、“預けどころ”の一つとして機能し始める。さらにピルロが最終ラインに下がってボールを受け始めると、モントリーボとデロッシが空いたスペースに顔を出しては“受けてさばく”を繰り返し、中盤の主導権を掌握。キエッリーニの負傷交代から約15分間は、間違いなくイタリアの時間帯だった。

 しかし、この時間帯にゴールを決められなかったことが、結果的には大きく響いた。

【次ページ】 徐々に機能性を高めていった“ゼロトップ”。

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