NTTドコモR&Dの技術ブログです。

Docomo Innovations, Incにおける取り組みのご紹介

NTTドコモ R&D Advent Calendar 2024 の22日目の記事です。

自己紹介

Docomo Innovations, Inc(DII)でPrincipal Cloud Architectとして仕事をしております、山崎と申します。本記事では「Docomo Innovationsって何をやっているところなのか」という紹介をしたいと思います。

Docomo Innovations, Incとは

DIIは、主にR&Dの拠点として、アメリカにおける最新の技術動向の調査であったり、AIや無線の分野での研究を行ったり、海外企業との協業を推進するなど、新たなビジネスや技術に対する前哨基地として活動をしております。

オフィスはアメリカのSunnyvaleにあり、NTT全体のアメリカ拠点のハブになっているNTT One Campusの一角に位置しています。同じ場所にはNTT Researchをはじめとする様々なNTTの研究組織が入居しています。DII自体は日本からの出向者と現地のメンバーを含め、30人弱の会社ですが、同じフロアに投資関連を見るNTT Docomo Ventures, Incのシリコンバレー支店も入っているため、技術面と投資戦略面で互いに情報をやり取りしながらプロジェクトを進めることも多いです。

NTT One Campus外観
オフィスの雰囲気はこんな感じです

会社の目的・役割

シリコンバレーという地の利を生かした技術開発・ビジネス開発力をアセットに、ドコモと連携して実行するオープンイノベーションを通じてドコモグループの事業拡大に貢献する

というのが会社としてのミッションですが、もう少しブレイクダウンすると

  • ドコモとして注力すべき技術領域へいち早く取り組む(研究・開発)
  • ドコモのビジネスを拡大する可能性のある企業との協業や投資
  • ドコモ本体と連携し、グローバルな視点でビジネスに取り組む文化の醸成

というような内容になってきます。ビジネス観点の話ではドコモグループのビジネスとの協業可能性や、社内の課題を解決するような企業のソリューションの探索なども含めて、スタートアップなども含めて広く情報収集をしていますが、ここでは書けない話がほとんどのため割愛させていただき、今回は主に取り組んでいる技術領域の話と、文化醸成の取り組みについて紹介をしたいと思います。

取り組んでいる技術領域

大きく分けて主に3つの領域があります。

  • データドリブンな5G/6Gネットワークの研究開発
  • ML/GenAIに関する研究開発・技術支援
  • パブリッククラウド・クラウドネイティブ技術に関する技術支援(主にDevOps)

ただし、最近は生成AIの活用・応用が様々な分野に染み出していたり、ネットワークの世界でもAIの活用が叫ばれていることもあって、これらの領域が相互に関連したプロジェクトが増えています。

ML/GenAI関連の取り組み

ML関連の取り組みもいくつか行っていますが、昨今は生成AIに関する取り組みが多くなってきています。DIIでは特にコストとセキュリティを重要観点として調査や技術検証を行っていますが、具体的な応用実装についてのプロジェクトもいくつか取り組んでいる最中です。

コスト効率化に向けたモデルの改良手法(モデルマージ・量子化・枝刈りなど)の調査・技術検証を行っている他、ドコモ本体で取り組んでいる生成AIアプリケーション実装の技術支援などを行っています。アプリケーション実装に必要になってくるRAG周りの技術検証・調査などもプロジェクトの要望に合わせて日々取り組んでいます。

セキュリティ観点では、 Top 10 for Large Language Model Applicationsに代表されるようなリスクに対応するための具体的な手法の調査や、各パブリッククラウドやセキュリティベンダがどのようなレイヤーで対策を行っているかなどの情報収集などを行い、ドコモ社内へフィードバックしています。また、安全に活用するためのLLM本体のReasoningに関する技術検証なども併せて行っています。

プロジェクト例
  • 画像生成技術周りの支援プロジェクト
    • Diffusionモデルを活用した3Dモデルの自動生成やアバターのスタイル変換技術などの応用のための技術支援
  • Federated Learningプロジェクト
    • データをシェアせずに学習する分散機械学習の手法についての研究開発・広告レコメンドシステムへの応用プロジェクトの技術支援
  • モバイルNWのドキュメントのRAG化
    • モバイル関連の仕様書や各種ドキュメントを取り込んだRAGソリューションを構築するための技術支援
パブリッククラウド・クラウドネイティブ技術関連

クラウド技術も非常に変化が激しい領域であるため、常に最新の情報を集め、ベストプラクティスを追い続けることで、ドコモ本体のクラウドインフラのコスト効率化や生産性の改善のための支援を行っています。

Beyond5G・6G関連の取り組み

O-RANにおける消費電力の抑制・品質改善のためのアルゴリズムの研究開発や、6G標準化に向けた北米地域の動向のモニタリング・情報展開などを行っています。

グローバル文化の醸成: 事業開発プログラム「Open Innovation BootCamp」

DIIでは、ドコモグループの更なる成長のために、既存の事業に変革を起こしたり、新規事業を立ち上げるといった新しい価値創造が必要と考え、そのための取り組みの一環として、シリコンバレーの新しい技術やビジネスアイデアを活用し、実際に事業導入して継続する仕組みとして「Open Innovation Bootcamp(OIB)」を主催しています。

SFの完全無人タクシー体験、Plug and Playのイノベーションエコシステム見学、先進デバイスの体験などを通じて、現地の最新技術や商習慣に触れ、また、アメリカと日本の文化的・ビジネス的な違いを深く理解するディスカッションや、現地起業家との交流を通じて、グローバルな視野を広げるプログラムを提供しています。

新たな発想や着眼点を得た上で、各事業リーダーが抱える課題に対して向き合い、今後の取り組みに活かすためのプランを作り上げるところまで、1週間という短い期間の中で集中して取り組むプログラムとなっています。

今年度は携帯電話ビジネスのフロント戦略を担う組織から、サービス開発、マーケティング、プラットフォーム開発など様々な組織から10組のチームが参加し、それぞれのチームで熱い議論が交わされていました。

この取り組みで生まれた事業プランの具体的な実行に移し、進めていくところまで含めて、DIIは伴走者として継続的に関わりサポートしています。

終わりに

本記事ではDocomo InnovationsのOverviewについてご紹介しました。

私がDIIに赴任したのは今年の4月からなのですが、社内外含め様々な人と話す中で「DIIって何をやっているの?」という質問をされることが多く、実はあまり活動の内容が知られていないということがわかったため、この機会に興味を持っていただけると嬉しく思います。本記事で紹介した内容以外にも、様々な活動に日々精力的に取り組んでいます。シリコンバレーに立ち寄る際があればぜひお声かけください。