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大切なことは目に見えない(文学フリマ東京41参加レポート)

ちょう長くなったので目次からお好きなところをどうぞ!


最初に

私の参加を気にしてくださったかた、本を手に取ってくださったかた、本を買ってくださったかた、文学フリマの事務局の皆さん、会場設営ボランティアのみなさん、本当に本当にありがとうございました。皆様のおかげで、毎回楽しくイベント参加ができています。重ねてお礼申し上げます。ありがとうございます。

出発前のできごと

朝、仕事に行くときより1時間以上早く起床して身支度を整えた。
ふだんは3秒で終わらせる化粧に300倍の時間をかける。
「あっ」
眉毛を整えるために小さなハサミを取り出し、握りなおすとき落としかけた。慌ててキャッチしようと手を伸ばした拍子に、ハサミの先が手首の内側にぷっすりと刺さった。
「わっ、わっ、」
慌ててハサミを引き抜き、手首を口に当てる。手首の内側と言う場所から、浅い知識でピューピューと血が噴き出て止まらない様子を想像してしまう。やばい。これ、救急車案件では?ここまで来て文学フリマ、欠席?!

おそるおそる口から手首を話して傷口を確かめた。じんわりと血が滲む程度でピューピューはしていない。あ、よかった、大丈夫そう。ほっとしていたらみるみるうちに血がビーズくらいの大きさに膨らんできた。あわわわわ。
手首をもう一度口に当ててティッシュと絆創膏のあるところまで急ぐ。ティッシュを数枚抜いて傷口にあて、指で思いきり押さえる。そのまま両手を心臓より高い位置まで上げてじっと待った。一分くらい耐えてからティッシュをそっと離す。血は滲んでいたが、さっきほどじゃない。良かった。行ける。アロエ軟膏を塗って絆創膏を貼り、支度を続けた。早起きしたおかげで予定通りの時間に国際展示場まで到着できた。一夜明けた今も微妙に手首が痛い。


文学フリマで買った本

文学フリマで買った本

吉村のぞみさんの「あったかい虚空」

短歌を始めてから毎回一冊は買うようにしている歌集。表紙がかわいかったのと「あったかい虚空」というタイトルがいいなと思って。まだ読んでいないのだけど、このタイトルの言葉を入れるとしたら8音なので、どう使われたのかなというのも気になって購入した理由のひとつ。

卵一個ぶんさんの「オムライス探訪記」VOL.1&2

一冊のつもりだったけど選べなかった。どっちも都内のオムライス情報が丁寧にレポートされていて、どっちにも気になるお店があったから。

マサキサンチームさんの「イタリアを生き抜く毎日ごはん<上>」

私も気になったけど、半分は夫へのお土産でもあった。大好きなパスタの国イタリアでの自炊。あちらの水で茹でたパスタは日本とはぜんぜん違うとも聞いたことがある。食材は?物価は?やっぱりパスタばっかりなの?気になることだらけだった。飲食関係のお仕事として留学されて、そのうえでの自炊かと思ってお話を伺ったら、研究職で博士号取得のための留学だったそうで。その傍らでこの本の執筆、制作をされていたそうで。大変残念なお知らせですが、天は二物も三物も与えるんスよ。

紡ちひろさんの「海辺のマルゴ」

noteで記事をお見かけして、最初は本の表紙のかわいさにひかれてフォロー。購入したとき、キョドキョドしながらnoteでお見かけしたことも、挿絵のイラストをご自身で描かれていると拝読してすごいと思ったこともお伝えしたけど、大丈夫だっただろうか。挙動不審で怖がられたりしなかっただろうか。

うみねこ書房さんの「挫折.ep」

これもwebカタログを総なめして表紙のおしゃれさに目を奪われて。それから登録されているそれぞれの本の詳細を読んで、「挫折.ep」の

「挫折」という言葉には、マイナスなイメージがあるけれど、本当にそれだけなのかな、と個人的に思います。

文学フリマ東京41webカタログ「挫折.ep」より

という言葉に共感して、どんなエピソードでそう思ったか知りたくなって購入。まさか本当にCDケースに入った本とは思ってなかったからびっくりしたけど、すごく自由でいいと思った。やっぱりおしゃれだ。

シルク舎さんの「終戦直後の樺太」

ぱらっと数ページ立ち読みさせてもらってから購入。まざまざとしたリアル。これはどんどん広がってほしい本だと思う。

海とキッチンさんの「オーブンの前で待ち焦がれている」と「明後日は、美味しいごはんが食べられますように

気になるボタンを押したのはwebカタログを総なめしたときだった。それから詳しく調べていくうちに、リンクを貼ったみちさんのnoteを拝読。

おやつを焼くのと同じくらいの、文を書くことが好きなんだと、本を作って実感した。私は私の作ったおやつのことを、誰かに話したくて文章を書き始めたんだよな。そして、それを手に取れる紙で形に残したいと思ったんだよ。
試し刷りが届いた夜、ひとしきり表紙を眺めたりページをめくって印刷具合を確かめて満足した後、自分の本棚に並べてみた。うん、嬉しい。でも、なんとも欲深いことに、誰かの本棚にも置かれたいという気持ちが芽生えてしまった。は〜〜、欲深いね。でもいいんだよなそれで。欲深く、承認欲求を持って臨まないと!!だって3308分の1に選んでもらわないといけないし、選んでほしいし。

「あなたの本棚に置かれたいのよ|文学フリマ東京に出るよ!」より

ここに共感した。私はお菓子作りはできないけど、「誰かの本棚にも置かれたい」という気持ちとか、文章を書くのが好きとかって部分に。

そして、水野あおいさんの本の方は、言語聴覚士というお仕事をされている水野さんの、お仕事で向き合った食事のことなどが書かれているそうだ。作品紹介でそのことを知って、父親のことがよぎって気になった。食道がんの再発で食道の部分がほとんど動かなくなってしまい、最後の半年は点滴で生きていた父親。気管を切開した後でリハビリの効果があまり芳しくなくて物が食べられないとわかると「生きている意味がない」と言った父親。この本を読んで、あの頃の父親と私に違う向き合い方ができたりするかな、と思った。

ブースにお邪魔したとき、お金を準備しようとカバンをごそごそしながらブースに近づく私に、おふたりのどちらかが「フリーペーパーだけでも、どうぞ」と声をかけてくださった。同じ出品者として、そのお声がけをする気持ちがめっちゃわかってしまって、んふふ…と思いながら「いやいや、そんなこといわずに。。。」とかなんとか言ってから「二冊ともください」と言ってしまった。キモいな。すみませんでした。

参加レポート

なんか、答え合わせみたいな回だった。

友人の子どもが来てくれた

友人には私とおなじ誕生日の子がいる。いまや立派なティーンエイジャーになっている。本が好きな子で、数年前から文学フリマに興味を持っているとは聞いていた。いつか、文学フリマで会えたらいいなとぼんやり考えていた。
今回の文学フリマが始まって少したったころ、その子を持つ友人からLINEがきた。なんと、その子が文学フリマに遊びに来るらしい。私のブースに寄るよう、お使いを頼んだらしい。
赤ちゃんのころ一緒に遊んだくらいで、ほとんど初対面みたいな状態なのに大丈夫だろうか。しかも、これだけの人ごみ、これだけの広さだ。子どもにはだいぶヘビーじゃないだろうか。「うれしいけど、すごい混雑だからたどり着けなくても無理しないでほしい」と返信した。
しばらくして
「こんにちは」
と声をかけられた。会ってすぐにその子だとわかった。本当に来てくれた。友人からの差し入れを持って。賢そうなすっきりした顔立ちをしている。大きくなったなぁ。
「お母さんから『なにかオススメ買ってきて』って言われました」
「えっそうなの、お金はだいじょうぶ?ちゃんとお母さんにもらった?」
「はい、お小遣いもらったんでだいじょうぶです」
「そんならよかった。えーっとえーっと、どれがいいかな、、だいたい、書いてあることお母さんには話しちゃってるんだよね~笑」
「そうなりますよね笑」
すごい。大人だ。大人の会話だ。ちょっと悩んでから結局、新刊を買ってもらった。お礼を言って
「だいじょうぶ?困ってることない?困ったらここにくるんだよ」
と送り出した。すぐ友人にお礼のLINEを送った。
「いつか会えたらいいな」の「いつか」が来てしまった。今はほんのちょっぴり「いつか出店するのをサポートできたらいいな」って思っている。

遠方から相互フォローさんが来てくれた

noteのおすすめ欄から知ってフォローさせていただいたおはぎさんという方がいる。

シェア型書店を始められたいきさつを書いていらして、それがただ履歴の羅列じゃなくてノリが良く、けっこうおもしろい。いつも楽しみにしている。ありがたいことにフォローを返していただいて「楽しみなZINE」というマガジンに私の記事を追加してくださった。

うれしいなと思いつつ、遠方にお住まいのようだったのでいつかお渡しできたらいいなと思っていた。そのおはぎさんが、なんと、実際に来てくれた!

「こんにちは。読んでいいですか」
と声をかけられた。どうぞどうぞ、と返す。
その方はしばらく読んでから新刊を「ください」と言ってくれた。お金をやりとりして本をお渡しようとしていたら
「Xのスペース聞いてました。匿名だったんですけど」
そう声をかけてくれた。あれ、Xで繋がってる人かしら……?と思ってえっと……とお顔を見ると、続けて
「スペース聞いて、noteも読んでまして。買いたくなっちゃったので●●から思い切って来ちゃいました」
そうお話してくださったのを聞いているうちに、予感が確信に変わっていく。
「えっと、もしかして、」
「はい、おはぎです」
ビックリして声が出なかった。こちらこそいつもnoteを楽しみにしているのだ。いつかお会いできたらいいなと思っていたのだ。まさか、こんなに早く『いつか』が来るなんて。
あんまりにも驚いて、そのフットワークの軽さに感動して、ありがたくて、私は「ありがとうございます」をリピート再生する壊れたスピーカーになってしまった。いや本当にびっくりしたし嬉しかった。私も行動力の化身だと夫にさんざん怖がられているがまだまだだ。見習いたい。

闘魂注入してもらった

おはぎさんの登場で完全に満足してしまい、もう今日これで終わりでいいなと思ってボチボチ片づけを始めようとしたところに、とあるイベントでご一緒させていただいた惣田大海水さんがいらしてくれた。

「お久しぶりです」「あのときはありがとうございました」なんて挨拶を交わしてから惣田さんは「父を送る《改》」を買ってくださった。そして
「スタババさんの、装丁の学校のレポート、すっごく楽しみにしているんです」
と言ってくれた。

鈴木成一さんという著名なブックデザイナーが講師となり、短期集中で作家様のゲラから装丁デザインを提案する実践的な講座。これに6月~8月の2カ月参加したレポートを書いている。のだけれど、講座が終わった瞬間からすっかり燃え尽き症候群になってしまって、最後まで書ききれていない状態のレポートだ。このレポートを、まっすぐに正面切って褒めてもらえた。

「えへへ。ありがとうございます。あと二回くらいで終わると思うんですけど、結局なんにも繋がってなくて。へへ」
「いやいやいやいや!挑戦しようとした、その姿勢が本当にすごい」
「……ありがとうございます。がんばって書き切ります」

そうだった。書くことは、どうやら自分が思うよりもずっとずっと広く、遠くへ届いているものらしいぞと少し前にも実感したのに。忘れてしまっていた。大切なものは目に見えない。

総括

今回売れた数は以下のとおり。

・新刊 果の遡源…8冊
・歌集 ナマモノ…2冊
・父を送る《改》…4冊

合計14冊。前回合計が17なので3冊ダウン。でもまぁ、こんなものかなという印象。思っていたより良くも悪くもなかった。想定どおり。そう。想定どおりなのだ。想定できてしまうようになったのだ。イベントの非日常感がたまらなく良くてクセになって出ていたはずなのに、いつの間にか『うんうん、こんなもんよね』になっている。
来てくださった人との出会いで感動はあったけれど、自分が作った本を売ることに関する特別感が薄れている。場慣れしてしまっている。

今回の文学フリマで会えた人たちとのやりとりが、なんとなく今までの参加の総論というか、まとめというか、答えみたいに感じた。
本を作る楽しさはずっと変わらない。なんならこの方向で糧を得られるようになれば、こんなにうれしいことはないとまで思っている。だから、本作りを止めることはないけれど、イベント参加のスタイルは少し変えていこうと思う。文学フリマ東京は年1回か、参加しない年もあるかもしれない。その分、小規模のイベントだったり旅行がてらの遠征だったりを楽しみたい。

とにもかくにも、お疲れさまでした!


宣伝です!

文学フリマに出品した本をboothで通販していますので、よかったらご利用ください。
※会場から自宅宛に返送した在庫を受け取るのが今週末(11月29日)の予定なので、お買い上げいただいた本は11月29日以降の発送となります。

完売した過去の作品などをkindleでも販売しています。新刊もおいおいkindleで販売すると思いますので、紙にこだわらない方はよかったらこちらもご利用ください。



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