
IT百物語で振り返る2023年「転機の」ITエンジニア動向
今年もITエンジニアの動向を振り返っていきます。
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IT人材 2023年トレンド予測:景気後退と人流に注意
年始に投稿したトレンド予測です。ネガティブな予測をしていましたが、大筋で当たっている結果となりました。ただ個人的に意外だったのは人材紹介周りのトレンドです。
予測では人材紹介の高級化について予測していました。実際、年収レンジが800万円以上の人材について60%以上の高い人材紹介フィーを求める紹介は確認されており、局所的に残っています。
一方でこれまで500-800万円の中堅層プログラマが企業側の採用ハードルの高まりや、提示給与の不振による現職残留で決まらなくなりました。結果、年収レンジ400-500万円の人材を採用ハードルの低いSESに大量に決めるフローも存在しています。過去を振り返ってもこうした人材紹介ありきの大量採用企業は継続はしないものです。充足しやすく、且つ顧客である企業が費用対効果に疑問を持ちやすいという点で、持続可能な施策とは言い難いです。
IT百物語noteのアクセス数で振り返る2023年の話題
この1年を振り返り、アクセス数が多い記事をカウントダウン形式でご紹介します。
5位 就職氷河期世代とIT業界/若手世代が注意するべき轍
どうにも景気が悪いですが、一つの転機は就職氷河期世代にあると考えています。そして就職氷河期時代に拡がった働き方である非正規雇用の流れが、解雇しにくい日本において雇用の調整弁として企業から見ると都合が良かったという側面があります。おそらくは一時的な不況を凌ぐためだったと思われるのですが、想定よりも長く続いたために長く給与の伸び悩みに繋がっていったと考えています。
4位 駆け出しエンジニアブーム時の未経験・微経験フリーランスのその後と、エージェントの異変
2018年からブームになったプログラミングスクール。このサバイバーが確認されています。生き抜いていることは良いことなのですが、当初の目的がフリーランスであり、年収(年商の誤り)イッセンマンを目指しているのでどうにもスキルに対する単価設定が合いません。このnoteでは歴史的な経緯と持続可能なキャリアについてもお話ししました。
3位 リモートワークから出社に切り替える企業の意思決定
働き方についても変化しました。特にコロナ禍でニューノーマルと呼ばれた働き方であるリモートワークから、物理出社への回帰が盛んに行われています。『フルリモートワークがこれからのスタンダードになる』と判断された方の中には地方や出社しにくい郊外に転居した方も居られました。物理出社の強制と共に転職、フリーランス化に向けて動いている方もお見掛けしています。再度都内に戻ってこられる方も居られます。
セミナーなどで私がこのことに触れる際は、物理出社を強制することで働きにくさを強調し、退職パッケージを払わずに退職を促すことが可能となるため「緩やかなレイオフ」と表現しています。大手外資ITなどで年収レンジが高い方も居られ、どう着地していくかは私も注視しています。
また、地方自治体はフルリモートワークやワーケーションをネタにした人口流入を期待していたこともあり、地方創生の行方についても気になっています。
1位、2位 エンジニアバブル
1位と2位はエンジニアバブルのについてのものでした。2015年にアベノミクスとしてエンジニア給与の高騰が始まり、2022年11月まで継続しました。
現在転職活動をするとなると、提示年収が2022年以前のように上がるパターンとしては下記のようなものがあります。
資金調達が上手くいっている数えるほどのスタートアップ
資金力に余裕のある日系大手の合弁ベンチャー
他社コンサルや社内での自力DXが失敗して炎上したところに派遣されるコンサルティングファームのPMO
情報のアップデートが遅れており、2022年までの感覚でなんとなく提示している企業
上記以外のところも募集はしているものの、求人ハードルが高いために内定が出ないであるとか、年収が現職と据え置きやダウン提示されたりするために内定承諾されないというパターンが増加しています。
番外:生成AIの進化
2023年、ITエンジニアのキャリアに大きく影響する技術進化の一つが生成AIでした。かつては「AIにつまらない業務を任せてヒトは楽しいクリエイティブな仕事をしよう」という言説もありましたが、AIが小説もかけば絵も描くようになりました。
国内の生成AIスタートアップは海外勢のリリースラッシュでピボットを余儀なくされるような事象もありました。
先日もXで話題になっていましたが、『エンジニアになりたいという人のコードレビューを依頼されたので見たところ、ChatGPTが出力したコピペを見せられた』というものもありました。先の未経験・微経験フリーランスにも当てはまる話ですが、総合職と比較して単価が高めのITエンジニアについて、『経営層は何に価値を感じてお金を払うのか』ということは強く求められていくと考えられます。これは選考の変化、例えばスキルテストの実施や実施方法の変化にも繋がっていくでしょう。
求められる景気の良い話
採用に関するご相談を企業様よりよく頂くのですが、これから採用をしたいという場合は『何を目的に採用するのか』ということをお聞きするようにしています。この際、『開発費を下げたい』という経営層が一定数居られます。2014年以前であれば『SIerやSESで客先に行くのが辛い』という中堅エンジニアが採用できることがありました。以後はそのようなことは無く、安価な給与提示ではジュニア層しか来ません。エンジニアに何を求め、何を任せたいのかを言語化し、適切な給与提示をしていく必要があります。
採用に苦労する企業がある一方で雇いすぎたためにレイオフなどで調整する企業もあります。人材が欲しい企業がある一方で、調整する企業もある。人の流れとお金の流れに翻弄された一年でした。
エンジニアバブルの記事を書いたとき「エンジニアの給与を下げて買い叩くクズの陰謀論だ」と揶揄する人がおられました。残念ながら採用支援の文脈では、企業が給与を積んで転職が決まる方が貢献しやすいですし、大型の新規相談も来ます。人材業界界隈の方と集まった時にもよく話題になりますが、景気の良い話が求められます。
YOORサロンではIT人材動向について2023年振り返りと2024年予測を行います。後日アーカイブでYouTube公開予定です。
ITエンジニア界隈のことや、キャリアのことなど質問を受け付けます。人事や人材業界の方もお気軽にどうぞ。
— 久松剛 レンタルEM (@makaibito) October 20, 2023
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