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問われる「ChatGPTありきのプログラマ」とその単価

フリーランス面談の中で気になったことについてX投稿したところ大きな反響を頂きました。前提として人月単価は90-100万円のフリーランスであることを念頭にしてください。

今回はChatGPTに対する位置付けと、これからより発注者に問われていくであろう「プログラマへの価値」の感じどころについてお話ししていきます。有料設定していますが、最後まで無料でお読みいただけます。もしよければ投げ銭感覚で応援をお願い致します。


頂いた反応

この投稿対し、同意頂ける反応が多かった一方で、下記のような反応が見られました。

  • どこが悪いのか分からない

  • ChatGPT4なら問題ない

  • ググるのと違いがないので問題ない

  • 久松はChatGPTの使い込みが足らない

  • ChatGPTが使えないなんて発想が古い

  • 課題が解決するまでプロンプトを入力すればよい

  • 発注者の予算が足りないだけでしょう

  • 模範解答を出せ

既に消えている投稿もあります。「模範解答を出せ」というのはその解答が流通しても困るので避けています。

議論の焦点

私の投稿のポイントとしては、Chat GPTの利用は特段否定はしていません。いくつか焦点についてお話をしていきます。

情報漏洩と契約の観点(重要ですが、今回の本質ではない)

入力した内容について、学習データに回すのがChatGPTの基本設定ですので、顧客との契約の上で使ってよいかどうかというのは前提としてあります。「課題が解決するまでプロンプトを入力すれば良いのでは」というコメントも頂いており、使い方としては正しいものの、放っておくとどこまで自社の情報が漏れていくのか恐ろしいところではあります。

今回フリーランス採用をしていても、入場時の条件に「ChatGPTが使えること」と明記している高単価人材にもお会いしました。業務委託についてはコロナ禍を境に正社員以上にフルリモートの方も増えたため、個人の所有PCを業務で使うことを許可しつつ、自社のGoogle Workspacesなどのアカウントのみを貸与する組織もあります。今回のXの反応を見るに、ChatGPT Businessのアカウントについても企業側が明示的に貸与した方が安全なシチュエーションは増えていくのではないかと考えています。

ChatGPTも困る「読み飛ばし」(今回の本質ではない)

「ChatGPTに聞きます『とだけ』」の「とだけ」がポイントですが、読み飛ばして石を投げてくる方も居られました。テキストベースであるChatGPTともどういう付き合いになっているのか、気になるところです。

ChatGPT4の盲信と、「ググるのと何が違うんですか」という意見(今回のメインテーマ)

2000年代「ググった結果を貼り付けるだけの若手」問題がありました。調査などをする際にGoogleの検索結果をコピペする人が登場していることを指しており、情報の発信元の確からしさを検証しないことから情報モラル教育が問われていきました。

Wikipediaを妄信する人たちが出てきたのもこの頃です。Wikipediaでは複数の編集者が各人の思いを達成するために編集合戦のようなことも起きるようになり、情報の確実さとしては不安定なものと言わざるを得ません。

同じ頃、論文の引用先にWebページを引用することについての話もありました。Webページはカジュアルに消えてしまうため、確認した日付と共に引用する必要があります。もちろん誰が発信しているかはポイントになりますし、Webページのことだけで固められても信ぴょう性の観点から訝しく感じられるため、論文の分野にも寄るのでしょうが多すぎるWebページの引用は懸念される傾向にありました。

トイレの落書きのような品質の情報も等しく表示されるインターネットにおいて、誰がどのような内容を発信して居るのか、その確からしさも含めて検証する必要があります。

ChatGPTについてもネット検索をしながらレポーティングしてくれるものの、ハルシネーションの課題もあり情報の信ぴょう性などは疑ってかかるのが一般的です。

それらしく出典もつけてくれるのですが引用元の確からしさは適当なものも多いです。企業に関するレポーティングなどを依頼すると、アフィリエイターが作成したゴシップサイトやヨイショ記事などをそれらしく引用してきたりするため、スポーツ新聞以下の信ぴょう性であることも少なくありません。

公式見解やその情報の確からしさなどを総合的に判断していくことが望ましいのがインターネット上の情報です。これはGoogleにしてもChatGPTにしても同じです。何よりChatGPTの入力欄の下に書いてあります。

ChatGPTの入力欄にも書いてある

リアクションしている人達の傾向

この投稿に対する反対意見の人たちの中に「未経験からWeb系フリーランスでイッセンマン」を掲げる一団がありました。

現在はフリーランス独立を奨励しているオンラインプログラミングスクールの講座の中に「ChatGPTのプログラミングへの活用方法」も組み込まれているそうです。初手からChatGPTの便利さを知ってしまうことで、「ChatGPTを業務で使うことを否定すると困る人達」は今後も増えていきそうです。

この投稿がなされた半年後の10月末に公開された動画では「AIを使いこなしたい」という質問に対して「まずは基礎をやりましょう」という旨を返されていました。その通りだと思いますが、LPやマーケティング施策に対する賛同者の一人歩きが感じられるようになったのかも知れないと邪推しています。

プロンプトエンジニアの現在

ChatGPTが登場した当初、ChatGPTのような生成AIに対し、最適な答えを返すようにプロンプトを投げることができる人材を「プロンプトエンジニア」と呼び、今後注目の職業として取り上げられていました。こちらのnoteでも、かつて存在していたと言われるSearcherの例を引き合いに、やがて他の職種に取り込まれるであろうと予測していました。

ChatGPTの出力のみを元に開発をしているエンジニアは、プロンプトエンジニアと呼べるのではないかと思い当たったので、プロンプトエンジニアの求人を調べてみました。2023年12月現在で言うと下記のような傾向があります。

  • 大規模言語モデルに関する研究開発、ビジネスサイドとの連携に基づいた課題解決

    • 60-120万円/月

  • AIプロダクトにおけるプロンプトの設計・開発、パフォーマンス最適化、改善提案

    • 30-70万円/月

  • 大規模言語モデルに対するプロンプト設計・最適化、データフロー実装、論文のリサーチと実験

    • 1,500-2,000円/時

  • プロンプトテンプレート提案、開発、資料作成(正社員)

    • 350-600万円

  • ビジネス向けプロンプトテンプレート提案、開発、資料作成(インターン)

    • 1,300円/時以上

報酬としてのバラツキはありますが、高い報酬レンジを狙うとコンサルティングフェーズにまで踏み込まないと厳しいように読めます。ChatGPTの結果のコピペ中心の開発では月単価30-60万円程度で着地するのではないでしょうか。

https://jp.indeed.com/q-プロンプトエンジニア-l-東京都-求人.html?vjk=26596378aa4c126a

まとめと今後起こりうる変化の予測

頂いたコメントの中にはChatGPTを開発支援ツールとして利用することで「もう戻れない」「開発速度が飛躍的に上がった」という声が見られました。

ChatGPTを開発パートナーとして有効利用しているプログラマが居る一方で、ChatGPTありきの経験年数の浅いプログラマも確認されるようになりました。

前者は発注者からすると同じ人数で開発速度が上がっているので(利用禁止などの現場でなければ)歓迎されるでしょう。一方で、後者の人たちの金額設定は2024年に大きく揺れていくものと思われます。先に述べたように、ChatGPTを生かしたビジネス課題の解決ができるような人材でないと、高単価を狙っていくのは厳しくなるでしょう。

Googleが浸透した際、ググった結果をコピペし、内容について問われるも「ググったら出てきました」と回答されるケースが増えて話題になりました。ChatGPTありきのコピペアウトプットは、顧客が何に対して対価を払っているのかを考えるターニングポイントになります。おそらくはスキル的なジュニア層順番に単価ダウンが起きたり、案件数・採用人数減が起きるでしょう。

今回の面談は人月単価90万円以上の方ばかりでしたが、このレベルになるとプロフェッショナルとしてのアウトプットが期待されます。何の情報を根拠に判断し、顧客に納めているのかというのは今後、よりフォーカスが当たっていくものと考えています。

折しも主に経済的なものを背景にしたエンジニアの待遇の伸び悩みが起きている中、発注者は何に対してお金を払っているのかに注目されていくと考えています。既に経験年数の浅いフリーランスでは案件獲得に難航しているという話もあり、2024年は更に潮目が変わっていくものと思われます。

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