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ナナメガキ

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まっすぐ向き合ってナナメに書き捨てる、エンジニアリングマネージャーの思いのたけ。ナナメ読みするくらいがちょうどいい。
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記事一覧

世界でいちばん軽量なふりかえり

「今週はタスクが忙しいからふりかえりミーティングはスキップしましょう」 「今スプリントはふりかえるネタがなさそうなのでレトロスペクティブはスキップしましょう」 心の中の悪魔にこういう甘い言葉(怪しい言葉)でそそのかされたことはありませんか。僕はあります。 でもよく考えてみてください。 1週間も仕事してふりかえることが一つもないわけあるか!! すべての仕事が円滑で、最高品質で、快適にやり遂げられたのか? そんなわけあるか!! ふりかえりをしなくて良いイテレーションなどない

日々の学びを促進し、シェアする習慣をつくる“Today We Learned”の紹介

LT会や勉強会はとても良い場ですが、持続していくのって案外難しくないですか? 一方で、チームメンバーにはもっと気軽に、頻度高く、学びや知見を共有してもらいたくないですか? これらの課題感を解消するために始めた『Today We Learned』を紹介します。 やり方は簡単で、30分枠を週2回確保し、その間で学んだことを1人10〜15分程度でシェアするだけです。もちろん『Today』のタイトルに見劣りせぬよう「毎日10分開催」などでもよく、高頻度に小さく開催することがポイン

EMとしてスポンサーシップに向き合う

名著『スタッフエンジニア』の中でスポンサーシップという考え方に触れた。これが自分のEMとしての仕事観にすごく近かったので紹介したい。 人やチームが成熟していく過程には感動がある。支援した人やチームが良いプロダクトを生み出したり、彼らの活動が周囲に良い影響を与えたりする瞬間に立ち会うことには充実感がある。 それらを求めて、僕はEMという役割を通してエンジニアに向き合う仕事をしている。 僕のマネジメントの根底にある「人を支援する」行為はメンターシップであり、マネジメントのアプ

EMになった後にしてもらった良いマネジメント体験

僕はエンジニアリングマネージャーとしてチームメンバーをマネジメントしているけれど、僕自身もマネージャーにマネジメントしてもらっている。 そんなのは当たり前のことだけれど、実はすっかり忘れていた。良いマネジメントを受けて自分自身の考え方が変化したことで思い出したのだ。 今回はその体験を掘り起こしてみよう。 * * * 良いマネジメント体験の1つ目は、コミュニケーション密度が高く孤立を感じなくなったことだ。過去の記事でも度々書いているが、マネージャーは向き合う課題の違いや課題

サバイバルフェーズが終わったのに、サバイバルから抜け出せないチーム

サバイバルフェーズが終わったのに、サバイバルモードから抜け出せないプロダクト開発チームを見たことはあるだろうか。 ここで言う「フェーズ」はチームが置かれている状況のことだ。ここで言う「モード」は自分たちのふるまいのことだ。つまり、状況と行動が不一致なままサバイバルな働き方を続けているチームが今回のテーマだ。 思い返してみると何度かこういう状態に陥っていたことがあった。その当時は、違和感はあるものの状況を変えようとまでは思っていなかった。 だが今になってようやくその状態を言

己のEM業務からあらゆるものを削ぎ落としたら、最後に残るものは何か

誰しもそうだと思うけれど、部下の勤怠管理をしたくてエンジニアリングマネージャーをやっているわけではないだろう。プロジェクト管理をしたいわけでもないし、予算策定をしたいわけでもない。 そうやって「自分がやりたいと思っているわけではないが、役割としてやらなければならないこと」をどんどん削ぎ落としていくと、最後には「EMとしてどうしてもやりたいこと」だけが残る。 EMをしている方に問いたい。己のマネジメント業務からあらゆるものを削ぎ落としていったら、最後に残るものはなんだろうか。

EM6年目はアンラーニングの年にする

2025年はアンラーニングの年にしようと決意した。 いろんなことが”わかる”ようになってしまって、新たに学ぶ意欲や姿勢が不足している危機感を抱いたからだ。 今回はそう感じたきっかけと、マネジメントを5年以上続けて感じた視点の変化について書く。 * * * 2024年末もアドベントカレンダーが賑わっていた。いくつものEM関連・アジャイル関連の良記事に目を通した。しかし新しい気付きは思ったより少なかった。 「マネージャーの発案ではなく、メンバーから新しい取り組みが生まれて

『良い会話・良い質問』アレルギー

1on1など仕事関連の会話をしているとき、コーチング本にあるような「こちらの本音や隠れた思考を引き出そうとする問いかけ」を連発され胡散臭さを感じたことありませんか。 むしろ本音を言いたくなくなるというか、「あぁ、こういう返答を期待しているんだろうな」と質問者の意図が透けて見えるような。まるで聞く側と答える側の一方通行のようなテイストの会話に、かったるさを感じるのは僕だけでしょうか。 一方で食い入るように話を聞き、興味の向くままに質問をし、表情豊かに相槌をうち、双方が会話のオ

スクラムマスターの背中を押す記事 5選

エンジニア・スクラムマスター・エンジニアリングマネージャーなどをやってきた僕ですが、その知見を書き残すのが好きでブログを続けて来ました。 具体的な知見はブログに、思考整理やアイデアの発散はnoteに書いているのですが、いつの間にか累計100記事を超えていたので、今回はその中からスクラムマスターに向けた記事を5つ紹介します。 * * * まずは実践的な記事を3つ紹介します。 それぞれのテーマは「見積もり」「デイリースクラム」「レトロスペクティブ」で、陥りがちな具体的な悩み

マネージャーは”何でも屋”ではないが、なんでもする

エンジニアリングマネージャーになりたての頃、サーバントリーダーシップを履き違えて、はたまた部活動のマネージャーの「タオルやスポドリを選手に配る姿」だけを想像して、メンバーの雑用係を買って出るようなことをしてみたことがあった。 マネージャーとしてできることなどあまりないのだから、せめて面倒事を片付ける”何でも屋”くらいの役割はしようと思っていたのだ。 しかし、当然ながらマネージャーは何でも屋ではない。 マネジメントの目的や責任を果たすために必要なことは何でもするが、”何で

EMとしてどのような実務をしているか - 自己紹介にかえて -

先日初対面のエンジニアと話す機会があった。EMをしていることを伝えると、その詳細に興味をもってくれて色々と質問してくれた(とても嬉しかった)。 そういえばマネジメントを始める以前の自分もマネジメント業務の実態についてほとんど知らず雲を掴むような曖昧さを感じてたし、今でも隣の部署のマネージャーがどのような実務をしているか深く知らない。 それを踏まえて、先日の会話を書き起こしながら私のマネジメント業務の一部を紹介してみようと思う。 プレイングをしないマネージャーは日頃なにをし

あの日の僕らの1on1はなぜ無意味な時間だったのか

かつて僕はマネージャーとする1on1が大嫌いだった。僕にとってそれは役立たなかったし、時間のムダだったし、そもそも上司に自分の内面を知られたくなかった。 自分がマネージャーになりチームメンバーと話をしたいと思うようになって散々試行錯誤してきた今、改めて当時のことを考えると、あの時間をなぜあれほど無意味に感じたのか言語化できる。 (当時のマネージャーを責める気はもちろんないですが、何様目線な表現が含まれる可能性があるので苦手な方はご注意ください) 1. 信頼関係がなかったか

人の問題を解決したかった20代、人を肯定したい30代

目先の問題をなにがなんでも解決してやりたい、という気持ちが、ここ数年は明らかに減ってきている。 マネジメント業務でぶち当たる問題の中には「時間が解決するもの」「触れることでかえって悪化するもの」「自分が解決しないほうがいいもの」などがあって、そういうものに触れているうちに曖昧さに強くなりネガティブケイパビリティが高まってきたことも要因だと思う。 でもそれは多少影響のある要素の1つに過ぎなくて、変化の本当の要因は、人生の主題が変わったことにあるのかもしれない。ふとそんなことを

僕が心理的安全性に代わって引き出したいもの

一時期から心理的安全性というものに懐疑的でいろいろ学んだり実践したりしてきたものの、やっぱりどこか腑に落ちない……。 そう思いながら長年過ごしてきたのだけれど、最近は自然と悩まなくなりました。僕にとってチームの心理的安全性とは結果として現れるものであって意図的につくるものではなくなったからです。代わりに僕がマネージャーとしてチームから引き出そうとしているものは自律性です。 チームメンバー一人ひとりが、チームとして高い成果を出し続けるために自発的に自身の活動をふりかえりアップ