食品中の放射線の精密測定(やさしおクッキング篇&仕様書作成篇)
最近食品の放射線測定器について質問を受けることが多くなってきましたが、なかなか自分で触ったことがない測定器についていうのは難しいです。このブログではベクミルで触ったLB2045 についてかくことが多いですが、同等またはそれ以上の機種はいろいろなメーカーから出ています。以下に早野先生からいただいた同じ程度の測定能力を持った機種の表を挙げます。これ以外にもまだまだあるようですので、最後にリンクをまとめました。(同程度の機種-NaI 2インチ以上をご存知の方はおしらせください。特定の機種を推奨するものではありません。

精密な検査ができる検査機関に出す前に自分のところの商品や食品を検査したいという方が増えているようですが、特にスペクトルメーターの場合には、ソフト面でいろいろな機能が付随してきます。このエントリーでは特に食品に含まれるカリウムからの寄与の差し引きについて説明します。
一つ前のエントリーで紹介したように、γ線が測定器に入ったときにエネルギーが実際よりも低くカウントされる場合がどうしてもでます。Cs 137, 134 の量を測る場合に問題になるのは、それよりエネルギーが高いγ線を出し食品の中に普遍的にあるK40 の寄与になります。
やさしおという 塩化ナトリウム(食塩)を塩化カリウムに置き換えた商品があります。このやさしおにはカリウムがたくさんはいっていて、これをLB2045 で測定するとK40 の元気なピークが出ます。下の図はLB2045 でK40(図では 1400-1510に設定 右) とセシウム領域(450-850keVに設定 左)を同時測定した図です(LB2045にはK40 がプリセットされていないので手入力しないといけません。)もちろん「やさしお」にセシウムは入っていないのですが、570cps の誤検出をしてしまっています。一方でK40 ピークが出る領域には 513 カウントでています。食品を測定した時にカリウムが入っていると、カリウムのピークの場所に出ているよりたくさんの量がセシウムのエネルギー領域にでてしまうわけです。

LB2045 の場合はカリウム領域に出たカウント数をもとに、セシウム領域のカリウム分を差っ引く機能がついています。具体的にはカリウム領域の数に 1.1 をかけてセシウム領域のカウント数から引けばいいわけです。これを、スピルオーバコレクションといいます。下の写真はその設定をした後の測定ですが、見事にセシウム領域が0と矛盾ない値になっています。(誤差が253%であることに注意。)

この設定をするために一週間前にベクミルに早野先生といったのですが、持っていった食品にカリウムの高いものがなく早野先生は大変不満そうで、カリウムが引けるようになったんだから、食品で試したいというので、(わがまま)牛乳にやさしおを足したり、バナナを買いに走ったりしました。特に牛乳はいくらやさしおを足しても線量が上がらず、きれいに引けていましたし、バナナもカリウムは4Bq/kg で、セシウムは0とでました。
K40 の差し引きは純粋にソフト的な問題です。一旦スペクトルが数値データ化できれば、原理さえわかれば自分でも処理できます。それでも、だいたい正しいことが、ボタン一つでできるのは便利です。食品からでるカリウムは普通は数Bq/Kg 程度と思いますので、小さい誤差は気にしないという方は、金額でえらんでもいいと思いますが、業者に機器付随のソフトや、日本語マニュアルの充実度(LB2045 の場合は現在英語マニュアルの spill over collection の部分を熟読する必要があります)などを聞いてみるのもいいかもしれません。
追記(同程度の製品をご存知の方はお知らせください。)
#業者サイト(順不同)
ベルトルード LB2045 http://www.berthold-jp.com/products/isotope/foodplant.html
EMF211型ガンマ線スペクトロメータ(リンク先の詳細な資料あり) http://www.emf-japan.com/emf/emf1/emf211.html
関谷理化 CAPTUS-3000 http://www.sekiyarika.com/labo-ware/chemical-apparatus/products/captus3000/captus3000.html
日立アロカ CAN-OSP-NAI http://www.techno-ap.com/
ガンマデータ・インスツルメント GDMシリーズ(リンク先に詳細資料あり) http://www.jemsci.co.jp/products/nai/
テクノエーピー TS100B, TS150B http://www.techno-ap.com/

精密な検査ができる検査機関に出す前に自分のところの商品や食品を検査したいという方が増えているようですが、特にスペクトルメーターの場合には、ソフト面でいろいろな機能が付随してきます。このエントリーでは特に食品に含まれるカリウムからの寄与の差し引きについて説明します。
一つ前のエントリーで紹介したように、γ線が測定器に入ったときにエネルギーが実際よりも低くカウントされる場合がどうしてもでます。Cs 137, 134 の量を測る場合に問題になるのは、それよりエネルギーが高いγ線を出し食品の中に普遍的にあるK40 の寄与になります。
やさしおという 塩化ナトリウム(食塩)を塩化カリウムに置き換えた商品があります。このやさしおにはカリウムがたくさんはいっていて、これをLB2045 で測定するとK40 の元気なピークが出ます。下の図はLB2045 でK40(図では 1400-1510に設定 右) とセシウム領域(450-850keVに設定 左)を同時測定した図です(LB2045にはK40 がプリセットされていないので手入力しないといけません。)もちろん「やさしお」にセシウムは入っていないのですが、570cps の誤検出をしてしまっています。一方でK40 ピークが出る領域には 513 カウントでています。食品を測定した時にカリウムが入っていると、カリウムのピークの場所に出ているよりたくさんの量がセシウムのエネルギー領域にでてしまうわけです。

LB2045 の場合はカリウム領域に出たカウント数をもとに、セシウム領域のカリウム分を差っ引く機能がついています。具体的にはカリウム領域の数に 1.1 をかけてセシウム領域のカウント数から引けばいいわけです。これを、スピルオーバコレクションといいます。下の写真はその設定をした後の測定ですが、見事にセシウム領域が0と矛盾ない値になっています。(誤差が253%であることに注意。)

この設定をするために一週間前にベクミルに早野先生といったのですが、持っていった食品にカリウムの高いものがなく早野先生は大変不満そうで、カリウムが引けるようになったんだから、食品で試したいというので、(わがまま)牛乳にやさしおを足したり、バナナを買いに走ったりしました。特に牛乳はいくらやさしおを足しても線量が上がらず、きれいに引けていましたし、バナナもカリウムは4Bq/kg で、セシウムは0とでました。
K40 の差し引きは純粋にソフト的な問題です。一旦スペクトルが数値データ化できれば、原理さえわかれば自分でも処理できます。それでも、だいたい正しいことが、ボタン一つでできるのは便利です。食品からでるカリウムは普通は数Bq/Kg 程度と思いますので、小さい誤差は気にしないという方は、金額でえらんでもいいと思いますが、業者に機器付随のソフトや、日本語マニュアルの充実度(LB2045 の場合は現在英語マニュアルの spill over collection の部分を熟読する必要があります)などを聞いてみるのもいいかもしれません。
追記(同程度の製品をご存知の方はお知らせください。)
#業者サイト(順不同)
ベルトルード LB2045 http://www.berthold-jp.com/products/isotope/foodplant.html
EMF211型ガンマ線スペクトロメータ(リンク先の詳細な資料あり) http://www.emf-japan.com/emf/emf1/emf211.html
関谷理化 CAPTUS-3000 http://www.sekiyarika.com/labo-ware/chemical-apparatus/products/captus3000/captus3000.html
日立アロカ CAN-OSP-NAI http://www.techno-ap.com/
ガンマデータ・インスツルメント GDMシリーズ(リンク先に詳細資料あり) http://www.jemsci.co.jp/products/nai/
テクノエーピー TS100B, TS150B http://www.techno-ap.com/
by mihoko_nojiri
| 2011-10-09 23:54