富士山を撮り続けるフォトグラファーが教える、富士山撮影におすすめのスポット5選と美しさを引き出すコツ

富士山を撮り続けるフォトグラファーが教える、富士山撮影におすすめのスポット5選と美しさを引き出すコツ

みなさん、こんにちは。長野県出身のフォトグラファー、Daisuke Uematsu(@daisukephotography)です。普段は「四季の美しさ」をテーマに、さまざまな地で風景を撮影しています。

 

D800、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
D800、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
D850、AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR
D800、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
(上・右下)D800、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED、(左下)D850、AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR

 

その中でも日本最高峰の独立峰「富士山」は、一年を通して四季それぞれの美しい景色に出会うことができる被写体です。特に冬の時期は空気が澄んでいて、真っ白に冠雪した富士山はインパクトがあり圧倒されます。

今回は、富士山のおすすめ撮影スポットと、場所や時期ごとの撮影のポイントを紹介していきますので、ぜひご覧ください!

 

富士山撮影のおすすめスポット5選

はじめての方や遠方から撮影に行く方は、WEBやSNSを見て「どんな富士山を撮りたいか」イメージしながら、スポットを探すのがいいと思います。

ここでは、私のおすすめスポットを5か所紹介しますので、場所選びの参考にしてみてください。

 

富士山撮影の持ち物

富士山を撮り続けるフォトグラファーが教える、富士山撮影におすすめのスポット5選と美しさを引き出すコツ

  • カメラ:手持ち撮影では軽くてグリップ感がいいもの、暗い時間の撮影もあるため高感度に強いものが◎
  • レンズ:山梨など富士山に近い場所で撮る場合は14~70mmまでカバーできるレンズ、長野など遠くから撮る場合は200mmまでカバーできる望遠レンズ
  • 三脚:軽くて丈夫なものがおすすめ(私はカーボン素材のGITZO「GT3542」を愛用)
  • 予備バッテリー:気温が低いと消耗が早いため、多いほど安心
  • その他:お手入れ道具など

①山中湖 雄大な富士の姿が映る美しい湖

Z 6II、NIKKOR Z 14-30mm f/4 S

Z 6II、NIKKOR Z 14-30mm f/4 S

設定:14mm・F11・1/15秒・ISO100/12月上旬撮影/山中湖交流プラザ きらら付近

 

山梨県の山中湖は、富士五湖の中で富士山に一番近く、雄大な姿が間近に。山中湖の西側に富士山があるため、特に夕方がおすすめです。風が穏やかな日は、夕焼けに染まる富士山とリフレクションを撮ることができます。

 

  • 撮影場所:山中湖交流プラザ きらら付近、長池親水公園付近、山中湖花の都公園付近など
  • 機材:14~70mm程度までカバーできるレンズ
  • 三脚:夕方以降に撮影するときは必要

 

 

D850、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

D850、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

設定:70mm・F22・1/160秒・ISO64/1月上旬撮影/山中湖花の都公園付近

 

太陽が富士山山頂に重なる「ダイヤモンド富士」、山中湖を中心とした周辺エリアでは10月中旬~2月下旬までの期間で山頂と重なります。光芒の美しさは、F値を大きくすることで際立ちます。

秋~冬にかけては、ダイヤモンド富士→夕焼けをぜひ狙ってみてください。

 

D850、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

D850、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

設定:38mm・F13・1/500秒・ISO100/1月上旬撮影/長池親水公園付近

 

山中湖では運がいいと白鳥に出会えます。

この日は湖面が比較的穏やかだったので、白鳥の反射まで写るように広角にし、羽を広げる瞬間を連写で撮影しました。いつ羽ばたくかは白鳥次第なので、カメラを構えて静かに待つ忍耐力も大切です。

なお、写真は1/500秒ですが羽の先はわずかにブレています。羽先まで止めるには1/500秒以上にしましょう。

②河口湖 季節の植物と富士が織り成す風景

D850、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

D850、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

設定:50mm・F16・1/160秒・ISO160/6月中旬撮影

 

山中湖と同じく富士五湖の一つ。北岸の遊歩道では、さまざまな花や植物と富士山を一緒に撮ることができます。

 

  • 撮影場所:河口湖北岸
  • 機材:24~70mm程度までカバーできるレンズ
  • 三脚:日中は手持ちでも十分撮影可能ですが、夜は必要

 

 

D850、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

D850、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

設定:24mm・F8・1/250秒・ISO200/11月中旬撮影

 

朝の斜光に照らされる富士山を、紅葉の額縁に入れました。早朝は河口湖の湖面も風がないと穏やかですが、モーターボートが動き出すと波が出てきます。

 

D850、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

D850、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

設定:58mm・F9・12秒・ISO160/1月下旬撮影

 

冬に行われる「河口湖・冬花火」と富士山の共演は格別です。花火の広がりや尾を写すため、長時間露出で撮影しました。湖面のリフレクションで美しさが倍増しています。花火はバルブ撮影のためレリーズを準備するか、スマホでリモート撮影ができるニコンの無料アプリ「SnapBridge」を活用しましょう。

※2021年は、1月16日~2月21日の土日と「富士山の日」2月23日に開催予定(詳細はこちら)。

③新倉山浅間公園 富士×五重塔×桜の和の三重奏

D850、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

D850、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

設定:15mm・F8・1/640秒・ISO250/4月中旬撮影

 

山梨県の新倉山中腹にあるこの公園は、海外の人気も高い撮影スポットです。特に春は、富士山×五重塔「忠霊塔」と桜のコラボレーションが絶景です。

桜の時期は三脚使用禁止ですが、手持ちでも十分撮影できます。

 

  • 撮影場所:忠霊塔の裏側にある展望台
  • 機材:14~24mm程度の超広角レンズ
  • 三脚:桜の時期は三脚は使用禁止。その他の時期は三脚があるとバリエーション撮影が可能

ただし、忠霊塔までは約400段の階段があるため、荷物を極力軽くしましょう。

 

 

D850、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

D850、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

設定:17mm・F22・1/10秒・ISO64/11月上旬撮影

 

紅葉の時期もおすすめです。春とは日没位置が変わり、忠霊塔の間から太陽光を入れることができます。

F値を大きくし、光芒を際立たせるのがポイント。シャッタースピードを遅くして露出を調整するため、三脚があると安心です。明暗差が大きくなるため、白とびしないように露出を抑えます。

 

D850、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

D850、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

設定:17mm・F9・25秒・ISO800/2月下旬撮影

 

こちらは降雪後の夜に撮影した写真。空気が澄んでいて、クリアな富士山と街明かりが美しいです。三脚に固定して、25秒の長時間露出で街を鮮やかに写しました。

④精進湖 富士山とリフレクションの神秘的な光景

D850、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

D850、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

設定:24mm・F2.8・30秒・ISO1600/3月中旬撮影

 

富士五湖の中で一番小さい精進湖は、風の影響を受けにくいため、リフレクションを撮影するのに向いています。特に深夜から明け方は風が穏やかな日が多く、星空と朝焼けを狙いに行くことが多いです。

上の写真は、午前3時すぎに撮影した天の川。滑らかな湖面に星々が映っています。

 

  • 撮影場所:精進湖他手合浜
  • 機材:24mm以上をカバーできるレンズ
  • 三脚:夜間~明け方の撮影では必要

 

 

D850、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

D850、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

設定:24mm・F11・8秒・ISO100/3月中旬撮影

 

午前5時頃の朝焼けは、淡いグラデーションが湖面に美しく反射しています。ここは、富士山の両側が山で囲まれているように見えます。超広角で広く写すと富士山の存在感が薄れてしまうため、焦点距離は24mm以上がよく、70mmまでカバーできるレンズも持っていくのがおすすめです。

⑤高ボッチ高原 街と富士を一望する長野の景勝

Z 6II、AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR

Z 6II、AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR

設定:120mm・F8・30秒・ISO800/12月上旬撮影

 

今回の中で唯一の地元・長野県のスポット。富士山と諏訪湖を一望でき、10月~12月中旬くらいまでが空気が澄んでいてベストシーズンです。ただし、道路が凍結している場合があるため、車で行く方はスタッドレスタイヤ装着かチェーンを持参しましょう。

※冬季は路面状況によって閉鎖されます(現在は閉鎖中です)。詳細は塩尻市のHPをご確認ください。

 

  • 撮影場所:高ボッチ高原
  • 機材:富士山と距離があるため200mm程度までカバーできる望遠レンズ
  • 三脚:夜景〜日の出までの撮影では必要

 

 

Z 6II、AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR

Z 6II、AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR

設定:200mm・F8・30秒・ISO500/12月上旬撮影

 

先ほどの写真と同じ場所で200mmまでズームすることで、富士山の存在感が増しました。夜明け前はかなり暗いため、適正露出にするため30秒にしています。長時間露出にしたことで、湖面に明かりが伸びて幻想的に仕上がりました。

 

D850、AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR
D850、AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR
D850、AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR

設定: (左)130mm・F5.6・180秒・ISO125、(右)135mm・F13・1/4秒・ISO64/11月上旬撮影

 

高ボッチ高原では雲海が発生することがあります。左は午前5時頃に撮ったもので、露出を3分と長くすることで滑らかな雲海に街明かりが入り、幻想的な景色を作りだしました。

右は午前6時頃の朝焼けに染まる雲海です。諏訪盆地にふたをするように広がる雲海の向こうに富士山が悠然とそびえ立っています。

富士山撮影の事前準備とプロセス

おすすめスポットのうち、「山中湖」にZ 6IIを持って撮影に行ってきました。実際にどんなふうに準備をして撮影をするのか、裏側をご紹介したいと思います。

事前に富士山の方向や天気をチェック

富士山との位置関係を確認

山中湖では西側に富士山があるため、太陽が沈む夕方によく行きます。どんな写真を撮りたいかイメージできたら、富士山との位置関係や日の出・日の入り方向や時刻の確認をしましょう。

 

天気や雲の動きをチェック

撮影前日には天気予報をチェックします。必ず確認するのが、風速と雲の動きです。湖では風がなければリフレクションも撮影できます。経験則として風速1m以内であれば、湖面は穏やかなときが多いです。

当日には再度、雲の量や動きをGPV気象予報やライブカメラでチェックして、雨雲がないか、富士山をおおい隠すような雲がないか確認します。

 

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

自然が相手ですから予想と実際が違うこともありますが、経験として次に生かすことができるので無駄にはなりません。

位置決めは、他の撮影者に十分配慮する

夕方の撮影では、日没の1時間前には到着するようにします。

 

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

予定の場所に着くとすでに数名のフォトグラファーがいたので、三脚を立てる前に挨拶をしました。お互い気持ちよく撮影するには大切なことです。

 

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

今回は、山中湖交流プラザ きらら付近でリフレクションを狙います。水辺はぬかるんでいる場所が多いので、注意が必要です。

 

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S

 

また、水面に泥が出ている場所があり、三脚が立てられるギリギリまで近づいても上の写真のようにきれいな反射にならない場合があります。まわりのフォトグラファーに配慮しながら、いいポイントを探しましょう。

カメラは水面に近くなるほど実像と反射のバランスを均等にできるのですが、足元の泥などが写りこみやすくなります。場所を変えてもどうしても写りこむ場合は、カメラ位置を高くして余分なものが入らないようにしましょう。

富士山をどう見せたいかで設定を決める

Z 6II、NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
Z 6II、NIKKOR Z 14-30mm f/4 S
Z 6II、(左)NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S、(右)NIKKOR Z 14-30mm f/4 S

左:24mm、右:14mm

 

この日の「富士山を取り巻くように発生した雲を生かす」という撮影イメージに合わせて、焦点距離や設定を決めていきます。

 

  • レンズ:雲とリフレクションの放射状の広がりを表現するため、14mmを選択。
  • F値:富士山などを広大な構図で撮る場合 F8以上を目安に。今回は繊細な雲を描写するために絞りすぎずF8に設定。
  • ISO感度:極力低く設定(ISO100に)。
  • シャッタースピード:F値とISO感度を決め、シャッタースピードで露出調整(今回は1/100~1/250秒程度)。暗い時間や水面を滑らかにしたい場合などは長時間露出にすることもあります。

なお、夕方は明暗差が大きいので、空の明るい部分に露出を合わせて白とびを防ぐのがコツです。

 

Z 6II、NIKKOR Z 14-30mm f/4 S

Z 6II、NIKKOR Z 14-30mm f/4 S

設定:14mm・F8・1/125秒・ISO100

 

以上の設定で撮影したのがこちらです。この日、富士山から広がりを見せた雲の流れが、一番きれいに表現できた瞬間でした。「雲の動きを予想して山中湖に来たかいがあった!」と思えた1枚です。

レタッチで風景の魅力を引き上げる

撮影後、私はLightroomでレタッチしています。空の表情を生かしつつ、現地で見た「空と富士山との一体感」を再現するため、以下を調整します。

 

富士山を撮り続けるフォトグラファーが教える、富士山撮影におすすめのスポット5選と美しさを引き出すコツ
富士山を撮り続けるフォトグラファーが教える、富士山撮影におすすめのスポット5選と美しさを引き出すコツ

「Lightroom」編集画面

 

  • 露光量/シャドウ:白とびしないように暗く撮影しているためプラスに。
  • ハイライト/白レベル:雲のディテールがつぶれないようにマイナスに。
  • かすみの除去:プラスにしてクリアにし、写真全体の一体感・バランスを整える。
  • トーンカーブ:右上を持ち上げ、明部を少し明るくする。

…を主に編集し、色味の補正などを微調整して仕上げます。

 

編集後
編集前

左:編集前、右:編集後

 

青空と雲との美しいコントラストを引き出しながら、富士山と空とリフレクションの一体感を出すことができました。

Photographer's Note

「富士山」は何と言っても、一年を通して変化を楽しみながら撮影できるところが魅力です。自然は日々変化しています。自然のありのままを受け入れることが大切だと思います。

 

D800、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

D800、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

設定:40mm・F2.8・15秒・ISO500/2月中旬撮影

 

こちらは2017年2月に精進湖で撮影した写真です。この日はきれいな笠雲がかかっていて、目まぐるしく変化する笠雲に休むことなくシャッターを切りました。午前2時すぎの気温は氷点下…。湖面が徐々に凍ってきて、構図の変更やピント合わせをするたびに。指先がかじかんで大変でした。それもいい思い出になっています!

 

撮るたびに魅了される富士山。私は写真をはじめた頃、はじめて撮影した「ダブルダイヤモンド富士」に感動し、富士を撮り続けてきました。今後は、人との繋がりが感じられる写真や、雪や桜など季節ごとの美しさをさらに追い求めていきたいと思っています。

みなさんもぜひ、富士山のさまざまな表情と出会いに、撮影に行ってみてください!

 

 

冬の富士山撮影の注意点

  • かなり冷えこむので、インナーや靴下は保温力や速乾性の高いものを、アウターは雨風をしっかり防いでくれるものを選び、帽子と手袋も忘れずに。
  • 車で移動する場合、路面凍結の恐れがあるため、必ず冬用タイヤ・チェーンを装着しましょう。
  • 冷え切ったカメラを暖かい車内に持ちこむとレンズが結露してしまうので注意しましょう。長時間撮影の場合、レンズヒーターを装着して結露対策しておくと安心です。

 

 

※こちらに掲載している情報は2021年1月7日現在のものです。
※Z 6IIで撮られた写真以外は、フォトグラファーが過去撮影したものです。

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20190523173955

Z 6II

製品ページ ニコンダイレクト
NIKKOR Z 14-30mm f/4 S

NIKKOR Z 14-30mm f/4 S

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※Z シリーズカメラでNIKKOR Fレンズをご使用するにはマウントアダプターFTZを装着する必要があります。

Daisuke Uematsu

Daisuke Uematsu

長野県在住のフォトグラファー。「四季の美しさ・自然と人の繋がり」をテーマとし、光と影が織り成す美しい瞬間を追い求めている。「二度と同じ写真は撮れない」という考えから、出会った景色の最も美しい瞬間をとらえることを目標としている。