ニュースイッチ

創業者が中国で突然拘束…アニメグッズ越境EC、経営崩壊の顛末

創業者が中国で突然拘束…アニメグッズ越境EC、経営崩壊の顛末

イメージ

日本のアニメグッズや玩具類を中国の愛好者に配送する越境電子商取引(EC)事業を展開していたトリプルアートが2024年2月に破産手続き開始決定を受けた。14年1月に設立され、ウェブサイト「Masadora(マサドラ)」や「魔法集市」などのプラットフォームを運営し、約150万人いた会員登録者のほとんどが中国在住者だった。

日本での知名度こそ高くなかったが、中国での認知度は上昇し、22年12月期の売上高は約40億3700万円まで増加。23年4月には日本最大のフリマサービス会社と業務提携し、中国の顧客が当社のECサイトを通じて、このフリマサービス会社上の商品も購入できるようになるなど、チャンネルを広げていた。

しかし、23年8月に創業者で主要株主である代表取締役が突然中国当局に拘束。経営から離れる事態となったため、従業員だった人物が急きょ代表取締役に就任した。だが、拘束を機に経営体制が崩壊。売り上げが落ち、複数の取引先への支払いが滞り、資金繰りが悪化した。現代表は事業譲渡を模索したが奏功せず、支払い遅延については訴訟に発展。自己破産を申請することとなった。

現状、債権者が潜在的に4万―6万人いる事態となったが、中国の法規制などから全容の把握が難航。商品の特性から、数百円から数万円程度の少額債権者が大半で、弁済に際して国際送金を使えば配当より手数料が大きくなる可能性が高い一方で、手数料が安価な資金移動事業者を利用することはマネーロンダリング規制の観点で障壁があるとみられ、越境していることでその後の手続きの進捗(しんちょく)もはかどらない状況となっている。

経済産業省によれば、中国における日本からの越境EC購入額は10年度の968億円から、23年度は2兆4301億円と大きく伸長。今後も拡大する越境EC市場において破綻が生じた際には、その国特有の法規制も踏まえたリスクがあることを覚えておきたい。(帝国データバンク情報統括部)

日刊工業新聞 2025年1月9日

編集部のおすすめ