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若者が恋愛も結婚も働きもしない無気力無行動に陥る「ネズミ人間」化という中国が抱える内側の問題 #エキスパートトピ

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
提供:イメージマート

日本より出生率が低下した中国(すでに1.0を切っている)だが、その最大の要因は日本同様大幅な婚姻減である。しかも、そこに若者の「経済的問題と将来不安」が大きく影響している点も一致している。

中国では大学を卒業しても就職先がないという、日本で起きた就職氷河期が30年遅れで到来している。男性若年失業率は、ILO統計で2023年約17%もあり、日本の4%と比べても深刻である。

そんな中国では、かつて話題となった「寝そべり族」の進化系として「ネズミ人間」が増加中らしいが、これは我々が思う以上に中国にとって深刻である。

ココがポイント

中国の少子化が深刻である。(中略)国連の発表値によれば2023年は1.0、正確には、0.9986出典:荒川和久 2025/11/7(金)

中国で増殖する「ネズミ人間」 危機感を抱く中国政府

『ネズミ人間』が主流になれば、共産党にとって問題になる出典:Newsweek日本版 2025/4/25(金)

中国のネズミ人間(中略)の動画を見ましたが、『これ俺じゃん』という気持ちですね出典:マネーポストWEB 2025/10/26(日)

エキスパートの補足・見解

「ネズミ人間(Rat People)」とは、「家から出ず、食事はデリバリーで済ませ、人と交流せず、昼過ぎまで寝て、一日中スマホを見て過ごす」というものだ。

なぜ「ネズミ」というかというと、夜行性で目立たず、低エネルギーで暗い場所に隠れ、生存本能で最小限の労力で生き延びるネズミの生態を、過酷な社会・経済環境から避難する若者のライフスタイルに重ねた比喩による。ほぼ失業者を指す。

勿論、最初からそうだったわけではない。そうなってしまったのには原因がある。

根源は就職できない雇用環境だ。一生懸命頑張って大学卒業しても、その努力が報われないという理不尽な結果が、自分の将来への不安と恐怖とともに彼らを無行動状態に追い込むのである。その多くが中間層の若者である。

日本でも中間層以下の若者が置かれている環境は過酷だ。失業こそ少ないものの実質手取りは増えていない。賃上げなどは所詮上位3割の大企業の話でしかなく、結婚どころか恋愛すらできない。

日本にとっても対岸の火事ではないが、それ以上に中国にとって若者が無行動になる痛手は大きい。昨今、中国が政治的に「外に敵を作る」ことに躍起になっているのは内側の崩壊が深刻だからかもしれない。

独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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