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債券市場関係者による異次元の黒田緩和への評価、コミュニケーションの問題点が露呈

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 2月27日に2月のQUICK月次調査(債券)が公表された。調査対象は債券市場関係者180名。回答を得たのはこのうちの114名となっていた。今回は注目された日銀総裁・副総裁人事に絡んで、日本の金融政策などに対するアンケートがあった。

 黒田総裁のもとでの個別政策等についてどのように評価しますかとの問いでは、量的・質的緩和を「大いに評価する」が24%、「評価する」が58%となっており、82%が評価すると答えていた。

 マイナス金利に対しては、大いに評価するが2%、評価するが42%。合計で44%が評価するとあった。あのときにマイナス金利政策を本当に必要としていたのであろうか。

 イールドカーブ・コントロールに対しては、大いに評価するが3%、評価するが23%とさすがに減っている。評価しないが53%、まったく評価しないが21%あった。

 最割安銘柄の指値オペに対しては、大いに評価するが2%、評価するが27%。評価しないが44%、まったく評価しないが26%あった。これはディーラーとそれ以外ではやや評価が分かれたかもしれない。

 イールドカーブ・コントロール(YCC)レンジ拡大に対しては、大いに評価するが2%、評価するが50%。評価しないが37%、まったく評価しないが12%あった。

 これに関しては捉え方に違いもあって、この数字をどう捉えるべきかは難しい。修正など絶対出来ないかと思ったのに、良くやったとの見方もあろう。ここでサプライズな修正は市場に動揺を与えただけとの認識もあろう。また中途半端な修正よりも、YCCの解除こそ望ましかったとの意見もあったはずである。

 そして、市場とのコミュニケーションに対しては、大いに評価するが2%、評価するが12%。評価しないが51%、まったく評価しないが36%あった。

 日銀と市場とのコミュニケーションについては評価されていない。昨年12月20日の政策修正がサプライズとなったことで、評価を低下させた面もあろう。しかし、特にYCCについては修正であれ、撤廃であれ、事前に市場に織り込ませることが困難なことを示したともいえる。

 日銀と市場とのコミュニケーションについては、日銀の金融政策に機動性や柔軟性を失ってしまったことも大きい。ファンダメンタルズと金融政策の乖離が大きくなり、それについての日銀の説明にもかなり無理がある。これではコミュニケーションそのものが取れるはずもない。

 日銀の新しい総裁と副総裁には、金融政策の柔軟性を取り戻し、市場とのコミュニケーションを可能にしていただきたいとは思う。しかし、候補者の顔ぶれからみて、それが本当に可能なのか、やや不安でもある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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