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化石燃料にしがみつき、再生可能エネルギーを促進しない日本の温暖化対策は世界58位

木村正人在英国際ジャーナリスト
気候気候変動パフォーマンス指数(CCPI 2025)より

■「大災害は人為的な気候変動によるものだ」

[バクー発]アゼルバイジャンの首都バクーで開かれている国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)で20日、ジャーマンウォッチ、ニュークライメート・インスティテュート、CANインターナショナルが20日、気候変動パフォーマンス指数(CCPI 2025)を発表した。

CCPIは毎年、排出量・再生可能エネルギー・気候政策の観点から世界の排出量の9割を占める排出国63カ国と欧州連合(EU)の状況を評価している。再生可能エネルギーはほぼすべての高排出国で急速に普及したが、ガスのビジネスモデルにしがみつく国があまりにも多いという。

「2024年は洪水、干ばつ、異常気象など、気候変動がこれまでに経験したことのないような大災害をもたらした年だった。これは人為的な気候変動によるものだ」とニュークライメート・インスティテュートのニクラス・ホーネ氏は記者会見で強調した。

■現在の政策では日本はNDCを達成できない

58位にランクされた日本について、ホーネ氏は筆者の質問に「主な問題は化石燃料の段階的廃止だ。日本はまだ化石燃料に頼っている。NDC(国が決定する貢献)は現在の政策では達成できない。自然エネルギーも急速に拡大していない」と答えた。

化石燃料の段階的廃止と再生可能エネルギーの大幅な拡大が日本に必要なことだとホーネ氏は強調した。日本は今回のCCPIで、エネルギー使用量と温室効果ガス排出量で低い評価、気候政策と再生可能エネルギーでは非常に低い評価を受けている。

日本政府は50年までに実質排出量ゼロを達成することを約束しているが、そのための明確なロードマップは示されていない。主要7カ国(G7)は35年までに排出削減対策のない石炭火力発電を段階的に廃止すると宣言したが、日本を含む一部の国について文言が弱められた。

■日本は十分な再生可能エネルギーを導入していない

エネルギー分野で日本の脱石炭計画が不十分で、G7の中で唯一、石炭の段階的廃止を明確にしていないとCCPIは指摘する。世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ摂氏1.5度に抑えるパリ協定の目標を達成するには30年までに石炭火力発電を段階的に廃止する必要がある。

日本政府は化石燃料の段階的廃止の明確な目標を持つことが不可欠だ。また、日本はバイオマスを再生可能エネルギーと同じ脱炭素電源に分類している。大規模な石炭火力発電所とバイオマス火力発電所を併焼するため大量の木質ペレットを輸入しており、昨年、輸入は増加した。

日本は十分な再生可能エネルギーを導入しておらず、CCPIの専門家は政府が洋上風力発電や太陽光発電プロジェクトの利用を拡大し、再生可能エネルギーの接続を優先するために送電網を早急に改善するよう求めている。

■日本は国際協定の抜け穴や独自の解釈をしばしば利用する

日本は緑の気候基金や「損失と損害」基金の実施に資金援助している。にもかかわらず化石燃料を維持するため国際協定の抜け穴や独自の解釈をしばしば利用する。CCPIは日本の石油・ガス火力発電の早期段階的廃止と再生可能エネルギー拡大を含むエネルギー基本計画の策定を促す。

上位3位は例年通り空位。トップは4位のデンマーク。5位のオランダでは新政権が気候政策に後ろ向きな兆しを見せる。政権交代した英国は6位に順位を上げた。石炭の段階的廃止と化石燃料プロジェクトの新規許可に反対する政府の公約が評価された。

一方、大きく順位を下げたアルゼンチン(59位)は政権交代がいかに間違った方向への変化を引き起こすかを示している。新しく選ばれたハビエル・ミレイ大統領は、地球温暖化は人類による温室効果ガスの排出が原因という科学的コンセンサスを否定している。

■トランプ氏はインフレ抑制法をおそらく弱体化させる

世界最大の排出国である中国は55位。有望な計画、対策にもかかわらず、依然として石炭に大きく依存しており、十分な野心に欠ける。しかし再生可能エネルギーの空前のブームを経験しており、排出量はほぼピークに達しているように見える。

第2位の排出国、米国は57位。自然エネルギーとクリーンな輸送手段へのさらなる投資、化石燃料への補助金の廃止が次の重要なステップとなる。

ジャーマンウォッチのヤン・バーク氏は米大統領選の結果を受け、「政治的にはドナルド・トランプ次期米大統領がジョー・バイデン大統領によるインフレ抑制法のグリーンな未来技術を終わらせることは難しいが、おそらく弱体化させるだろう」と語る。

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。[email protected]

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