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Facebook疲れとLINEに見る、コミュニケーションのモバイル化とダイレクト化

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
1億ユーザーを突破したLINEは、モバイル化とダイレクト化の象徴的存在と考える。

最近考えていることが、掲題の通り「Facebook疲れとLINEに見る、コミュニケーションのモバイル化とダイレクト化」ということ。ちょっとした問題提起なので、適宜コメントを残して頂ければ幸いです。

CNNに掲載された、米国人に広がるフェイスブック疲れ 6割が数週間の「休暇」という記事では、タイトルの通り、Facebookにアクセスしない休暇期間を採ったことがある人が6割に上ると指摘しています。

休んだ理由としては、「実生活が多忙」(21%)、「時間の無駄」(10%)、「コンテンツに興味がない」(10%)、「劇的な展開やゴシップの不足」(9%)などが挙がる一方、「プライバシーやセキュリティー上の不安」を挙げたユーザーは4%にとどまった。

出典:米国人に広がるフェイスブック疲れ 6割が数週間の「休暇」

「実生活が多忙」という理由は、モバイルからスキマ時間にアクセスしているので、わざわざFacebook用の時間を確保しているわけじゃないよ、と思われるかも知れませんが、「時間の無駄」「コンテンツに興味がない」という次点の理由は、なるべく長くFacebookのウェブページやアプリを開き、企業や個人のコンテンツに混じって広告を稼ぎたいFacebookにとっては頭の痛い問題。

一方で、1億ユーザーを突破したLINEは、2011年にトレンド化したモバイルでのグループメッセージングアプリ改め、ソーシャルメッセージングアプリのカテゴリに属しています。

当のFacebookも2011年3月に、グループメッセージングアプリBelugaを買収しています(主に、ex-Googlerのスモールチームのタレントを引き入れたかったと思われます)。結果、Belugaはサービスを終了し、おそらくそのDNAが現在のFacebook Messengerアプリに引き継がれているように思います。

ダイレクト化するコミュニケーション

FacebookとLINEの違いは、コミュニケーションが間接的か、直接的か。つまり、Facebookのソーシャルな「ニュースフィード」はエッジランクでフィルタリングされてはいますが、必ずしも必要な情報でミタされているわけではなく、最近では広告も混じってきます。一方でLINEは友人とのコミュニケーションだけで構成されています。

アクセスする端末がモバイルに移った場合、LINEのように「友人からのメッセージ」というトリガーでアプリを開く動作は自然です。スキマ時間に新着のメッセージに返事をすることも同様で、アプリを開く理由も、その上での動作も、全て相手が明確で直接メッセージを交換するコミュニケーションになっています。

しかしFacebookの場合、ウォールから必要な情報を選び取ってコメントしたり「いいね」ボタンを押すという動作はLINEのようなダイレクト感はなく、モバイルの場合小さな画面で友人の動向を察知するのは骨が折れます。

自分がポストした写真にコメントがつけば、そこに返事をするカタチでコミュニケーションが成立しますが、コメントしたい写真を探す時間をいかに生活時間から発見するか、米国人に拡がる〜の記事の休暇の理由を見ると、ちょっと期待が薄れるかも知れません。

目的性の違いにも注目

他方日本では、就職活動でのFacebook活用は伸びているそうです。

電通PRの調査を報じたCNET Japanの記事ではTwitter、LINEを抑えて3割の人がFacebookを就職活動に生かしているそうです。実名で登録でき、プロフィールページを充実させることができるFacebookが、名刺代わりに機能する点を生かしているとのこと。

西海岸ではFacebookはプライベート、LinkedInはビジネス、ときっちりとした使い分けが見られますが、昨年取材しに行ったニューヨークではLinkedInではなくFacebookをビジネスのコネクションとコミュニケーションのツールに活発に使っていました。

この使い方は、LinkedInより早く実名SNSとして日本に上陸したFacebookの日本での使われ方に似ていますし、上に挙げた「ソー活」(ソーシャル就活)でのFacebook活用にも通じるものがあります。

こうした仕事や就職活動に生かすという前提でFacebookを使うという目的性があれば、仕事の一部としてメンテナンスすること、「Facebook疲れ」を意識することは少ないかも知れません。あるいは、休暇にはFacebookにアクセスしない、という手段を執ることもできるわけですから。

充実の体験のみが集まる場?

ただニューヨークで、仕事でもFacebookを使うという前提にしかれたとき、じゃあどんな写真をアップするの?と訪ねたときの反応が印象的でした。

「マクドナルドでさくっとお昼を済ませたときは写真をアップしないけど、有名なステーキハウスの予約が取れたときは写真を撮りまくるの。意味、分かるでしょ?」とのこと。

つまり自分が自慢できたり、他人にうらやましがられる体験をしたときには積極的に自分のタイムラインに写真をアップするけれど、そうでないときは沈黙するというのです。写真、行った場所、思ったことなど、全てにおいて、このフィルタがかけられて投稿されるのが、ビジネスで使われるFacebook。

言い方はアレだけど、仕事をする個人にフォーカスするとFacebookは「リア充アピールのツール」の色を強めていくのだろうか。逆にそれが面白いコンテンツと認定されれば、Facebookのニュースフィードを見るインセンティブにもなるし、そこに混じって企業が投稿するポストも楽しまれることになる。

果たして、見晴らしの良いデスクトップではなく、画面の狭いモバイルで、こうしたコンテンツに対してどのようにトリガーを作るのか。引き続き、経過を見ながら考えていきたいところです。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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