アメリカの刑務所でラーメンが大人気 そのワケとは
ロンドンでは「豚骨スープ」が受けて日本風のラーメン屋が大流行になっていますが、アメリカの刑務所で即席ラーメンがタバコを上回る人気になっているそうです。どうしてなんだろうと思って、リポートを読んでみました。
アリゾナ大学社会学部博士課程のマイケル・ギブソンライトさんは2015年5月から1年間、アメリカの刑務所で60人近い受刑者や職員から聞き取り調査を実施しました。その結果、即席ラーメンが、刑務所内の「ヤミ通貨」として使われてきたタバコに取って代わっていることが分かったそうです。
タバコが刑務所内のヤミ通貨になったのは南北戦争(1861~65年)の時代に逆上ります。アメリカの刑務所の地下経済に歴史的な変化が起きています。タバコが刑務所で禁止されているからではありません。タバコが禁止されていない刑務所でも即席ラーメンがタバコより重宝がられているそうです。
ギブソンライトさんによると、刑務所予算が削られ、刑務所のシステムだけでなく、受刑者や彼らへの支援も大きな制約を受けるようになりました。「懲罰的な倹約」が事実上の運営方針としてアメリカ全土の刑務所で取り入れられました。コスト削減と効率化が受刑者の生活に大きな変化をもたらしています。
連邦刑務所局によると、10年の刑務所予算は485億ドルで、前年から5.6%も減らされました。アメリカでは受刑者が増え過ぎて、1982年から深刻な予算不足に陥っています。ギブソンライトさんの聞き取り調査に受刑者も職員も「刑務所で提供される食事の量も質も過去20~30年間で低下した」と答えています。
ギブソンライトさんは指摘します。
「受刑者は刑務所の食事の量と質に不満を持っていました。注目されたのが即席ラーメンです。安くて腹持ちが良くて、刑務所の地下経済のヤミ通貨として取引されています。即席ラーメンはおいしくて、カロリーが豊富で、他の食品や衣服、衛生用品などの物だけでなく、洗濯、ベッドの清掃などのサービスと交換する時に非常に価値を持つようになりました」
カードゲームやサッカー賭博のチップとしても使われているそうです。即席ラーメンはタバコだけでなく、切手や封筒よりも価値があるヤミ通貨として刑務所で流通しています。緊縮財政の時代、刑務所生活も世知辛くなっています。
(おわり)