年収650万円を「東京都」に奪われた男性の言い分 何を答えても否定ありきのパワハラ面接だった
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。 トモアキさん(仮名、50代)は今年3月、東京都の非正規公務員であるスクールカウンセラー(SC)を雇い止めにされた。勤続およそ10年。合わせて3校を担当しており、年収は約650万円だったという。それだけの収入を一気に失ったのだ。4月以降は一転、家賃の支払いにも事欠く暮らしを強いられている。 【画像】東京都教育委員会から届いた「不合格」通知
同じ時期、トモアキさんを含む250人のSCが一斉に“解雇”された。今年10月には、このうちの10人が東京都に対し、地位確認などを求めて東京地裁に提訴。SCの大半が女性という中で、トモアキさんは原告に名前を連ねる唯一の男性である。 ■わずか5分ほどで終わった面接 経済的な困窮に加え、トモアキさんが今も納得できないのは、雇い止めに先駆けて行われた面接試験だという。「何を答えても否定ありきのパワハラ面接でした」。
トモアキさんの話を基に一部を再現してみよう。 面接官:SCの仕事でうれしかったことを上げてください。 トモアキさん:授業の観察をしていたときに落ち着きのない子どもがいたので声がけをしたところ、それがきっかけとなり集中できるようになり、後日、その子どもから「ありがとうございました」と言われたことです。 面接官:先生でもないのに授業中に声をかけたんですか! 先生でもないのに? トモアキさん:管理職からもどんどん声をかけてほしいと言われていましたので……。
面接官の仕草:(信じられないといった様子で首を左右に振る) 面接官:保護者や子どもからあなたとは二度と話したくないと言われたらどうしますか? トモアキさん:無理して前面には立たず、先生方の後方支援に回ります。 面接官:それでもあなたの話を聞きたくないと言ってきたら? トモアキさんの心の声:(後方支援に回るって言っているのに、「話を聞きたくない」って、質問が矛盾してないか? ) 面接官は2人。トモアキさんによると、1人は終始仏頂面、もう1人は何を答えても、理解できないといわんばかりに首をかしげるジェスチャーを繰り返したという。このほかにも、事例の背景を説明していたトモアキさんを遮り「話が長いんで、もっと端的に答えて」と言ったり、要約して話そうとすると「よくわからないのでもう少し説明して」と言ったり。わずか5分ほどだったという面接を、トモアキさんが振り返る。