廉価ながら高性能でつくりのよいモデルが相次いでディスコンとなり、ちょっと寂しい状況の続いていた富士フイルムXシリーズのミラーレス。ようやくその後継と述べてよいモデルが登場しました。その名も「X-M5」。Xシリーズの新しいセグメントとなるミラーレスです。ファインダーを省き、Vlogモードを搭載するなど、動画撮影をかなり意識したつくりとなっていますが、果たして静止画撮影に関して写真愛好家の期待に沿うカメラとなっているでしょうか。じっくりチェックしたいと思います。
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動画撮影に軸足を置く「X-M5」。静止画の撮影に関して言えば手軽で持ち運びしやすいミラーレスとして活躍してくれそうです。直販サイトでの価格は、ボディ単体モデルが136,400円、「XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ」が付属するレンズキット152,900円となります
Xシリーズの中でもコンパクトなボディは好印象
まず手に取って驚くのは、コンパクトで軽量なこと。ファインダーを搭載していないこともありますが、切り詰めたタイトなボディシェイプで、APS-Cフォーマットのミラーレスとしては小型軽量な部類に入ります。キットレンズで沈胴タイプの「XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ」や、パンケーキタイプの「XF23mmF2 R WR」などの組み合わせであれば、バッグの片隅など楽々入ってしまうほどで、持ち運びは苦になりません。
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カメラ前面部の様子。X100シリーズやX-E4などとボディシェイプはよく似ています。有効2610万画素裏面照射型X-Trans CMOS 4センサーと、画像処理エンジンX-Processor 5を搭載
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カメラ背面部の様子。フォーカスレバーを使ってAFフレームの移動やメニューの設定など行うため、操作部材は少なく、シンプルなつくりとしています。手の大きいユーザーとしては、フォーカスレバーがもう少し上にあったほうが操作しやすいかもしれません
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「X-T5」とくらべると「X-M5」がいかに小さいか分かると思います。装着しているレンズは、レンズキットとして付属する標準ズーム「XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ」。パワーズームを採用しています
コンパクトなボディゆえ一層目立つのが、トップカバーにある2つのアナログダイヤル。シャッターボタン側にモードダイヤルを、反対側にフィルムシミュレーションダイヤルを配置します。なかでもフィルムシミュレーションダイヤルは、先に発売した「X-T50」で初搭載したもので、直感的そして速やかにミュレーションが設定できとても便利。本モデルのメインターゲットとするビギナーやライトユーザーでも、手軽にフィルムシミュレーションの多彩な仕上がりが楽しめそうです。搭載するシミュレーションは全部で20モード。そのうち「ACROS」と「モノクロ」はYe(イエロー)/R(レッド)/G(グリーン)のフィルターを付加したものも選択できます。
一方、モードダイヤルには前述のように動画撮影に軸足を置くカメラらしく、Vlogモードを搭載。細かな設定なしに動画撮影が楽しめますので、日々の出来事をインターネットで発信したい人だけでなく、記録して残しておきたい人にも便利に思えます。ちなみに液晶モニター(3インチ/104万ドット)は、自撮りを考慮したバリアングルタイプとなります。
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トップカバー左にはフィルムシミュレーションダイヤルを配置。アナログダイヤルのため設定されているシミュレーションが一目で分かり、切り換えも速やかに行うことが可能。「FS1」から「FS3」までのポジションには、パラメータを自分好みとしたシミュレーションを登録できます
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トップカバー左には撮影モードダイヤルを配置。VlogモードやFILTER(アドバンストフィルター)モードもここで選択します。こちらもアナログダイヤルなので、設定されているモードが電源のON/OFFに関わらずひと目で確認できます
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液晶モニターは自撮りを考慮しバリアングルタイプとしています。スペックは3インチ、104万ドットでカメラのクラスを考えれば不足のないものです。冷却ファン「FAN-001」は液晶モニターを開いた状態で装着します
撮影時のAFフレームの移動のほか、メニューの選択や決定などフォーカスレバーで行うのは「X-T50」や「X-E4」などと同様。ボディサイズが小さいので十字キーが置けなかったということもあるかと思いますが、おかげでカメラ背面部はスッキリ。従来からのXシリーズユーザーなら違和感なく操作でき、Xシリーズのカメラを使ったことのない新しいユーザーでも慣れるのに時間は要しないと思われます。
そのほか外観上の特徴として、シャッターボタンに他社のデジタル一眼レフ、ミラーレスでは見かける機会の少ないケーブルレリーズ用のメスネジが切られていることも挙げられます。先ほど動画撮影に軸足を置くと述べましたが、これは静止画撮影を意識したつくりであるとともに、往年の写真愛好家にとっては懐かしく感じられるものです。しかもケーブルレリーズは、電気的な信号でシャッターを切るリモートレリーズにくらべ廉価なのも嬉しい部分。三脚にカメラをセットして撮影することの多いユーザーは、ケーブルレリーズをバッグのポケットなどに忍ばせておくことをおすすめします。