今年もCESの時期がやってきた。AMDは現地時間で1月6日の朝11時から基調講演を行う。この模様はYouTubeでもLiveStreamとして配信される予定だが、これに先立って発表内容の事前紹介があったので、こちらをベースにまず内容をお届けしたいと思う。ちなみにAMDというかLisa Su氏は"One more thing"がお好きなのだが、これは事前紹介に含まれていないのが通例であり、なので基調講演後にUpdateをお届けする可能性がある。

<動画>AMD at CES 2025


■ 基調講演の開催を受けて1月7日AM05時59分に追記
このRyzen 9 9900X3D/9950X3Dであるが、基調講演で発売が2025年3月と示された。ただし価格は以前として未公表である(Photo32)。

  • Photo32: 今回基調講演はJack Huynh氏(SVP&GM, Computing&Graphics Group)が行い、Lisa Su CEOは登壇しなかった。


Ryzen 9 9950XDとRyzen 9 9900、そしてRyzen 9045 HX

さてまずDesktop CPUであるが、3D V-Cache搭載モデルにハイエンドとなるRyzen 9 9950XD及びRyzen 9 9900が追加された(Photo01)。構成的には従来同様、2つのCCDのウチの片方が3D V-Cache搭載ということになる(Photo02)。Base Frequencyは不明だが、Max Boostは5.7GHzと同じままなので、当然性能もRyzen 9 9950Xからの底上げが期待できる。Ryzen 7 7950X3D及びCore Ultra 285KとのGaming Performance比較(Photo03,04)及びその他のアプリケーションでのPerformance比較(Photo05,06)では大きな性能の伸びがある事を示している。発売は2025年第1四半期中とされているが価格はまだ未公表であった(Photo07)。

このDesktop CPUをそのまま転用したのが、Gaming MobileとかMobile Workstationなどの大型ノート向けとなるRyzen 9045 HXシリーズである(Photo08)。位置づけとしてはRyzen 7045HXシリーズの後継製品で、既存のRyzen 9 7945HX3D/ 7945HX/ 7845HXを置き換える格好になる(Photo09)。投入時期は2025年前半中ということで、COMPUTEXのタイミングでこれを搭載したノート製品の紹介などが行われるのかもしれない。

  • Photo01: 逆にX無しモデルの発表は後送りになった模様。ちょっと意外だが、十分売れてるので安価なモデルを発表する必要が薄いのと、Ryzen 7 9700X以下のSKUはTDP 65Wで省電力性を重視する向きにも十分対応できるから後送りで良い、という事なのかもしれない。

    Photo01: 逆にX無しモデルの発表は後送りになった模様。ちょっと意外だが、十分売れてるので安価なモデルを発表する必要が薄いのと、Ryzen 7 9700X以下のSKUはTDP 65Wで省電力性を重視する向きにも十分対応できるから後送りで良い、という事なのかもしれない。

  • Photo02: 既存のRyzen 9 9950XのL2+L3が合計80MBなので、64MB増量ということは片方のCCDに3D V-Cacheが追加されたという事になる。

  • Photo03: Ryzen 9 7950XとのGaming Performance比較。負荷の軽いCounter Strike 2で58%向上、逆にAvator:Frontier of PandoraとかCyberpunk 2077では殆ど変わらないというあたりは、GPU負荷が高いものでの差は少ないという当然の結果ではある。

  • Photo04: 同じくCore Ultra 9 285Kとの比較。Ryzen 9 9950X3Dの方が性能が上なのは当然だが、よく見ると"Core i9 285K"とあるあたりはご愛敬。

  • Photo05: 同様にアプリケーション性能だが、これに関してはむしろRyzen 9 9950Xとの比較が欲しかった。まぁお前がベンチしろ、という事なのかもしれないが。

  • Photo06: 流石にこのグレードだとCineBenchでも互角以上になる。Purgebenchを使ったPhotoshop 25.11でも性能が結構向上してるが、これProcyonでやってみたいところだ。

  • Photo07: Ryzen 9 9900X3Dの方、TDPは同じ120Wだが、Max BoostはRyzen 9 9900Xの5.6GHzからちょっと下がって5.5GHzになった。

  • Photo08: 今回はRyzen 9のみだが、過去にはRyzen 7 7745HXもあった。こちらの後継は無いのか、それとも後追いで発表なのかは不明。

  • Photo09: TDPは何れも54W。3D V-Cacheを搭載するのはハイエンドのRyzen 9 9955HX3Dのみ。

RDNA4ベースのRadeon RX 9070 XTとRX 9070

次が新GPUであるRDNA4(Photo10)。主な改良点はAI AcceleratorとRaytracing Accelerator、それとDisplay Engine部であるとする(Photo11)。このRDNA 4に対応したFSR4(Photo12)や、新しくAdrenalin AI(Photo13)がサポートされた。さてこのRDNA4を最初に採用するのがRadeon RX 9070 XT/9070となる(Photo14)。このRadeon RX 9070 XT/9070はGeForce RTX 4070の対抗馬と位置付けられている(Photo15)。破線でGeForce RTX 5000シリーズが示されている事から判るように、もうRTX 5000シリーズのトップエンドとは競わず、メインストリーム向けに注力するようだ。

  • Photo10: 今回はPreviewということで細かい話は無かった。

  • Photo11: つまりCompute Unit部そのものには変更が無いという意味でもある。あくまでOptimized、というところがポイント。製造プロセスはTSMC N4に。

  • Photo12: ついにMLベースのUpscalingが搭載。XeSS同様にWindowsMLベースなのだろうか?

  • Photo13: こちらについては正直まだ良く判らない。RDNA4だけでしか利用できないのか、という点を含めて今後の情報公開を待ちたい。

  • Photo14: 今回は型番のみで、性能を含めて詳細は不明。

  • Photo15: ロードマップでご紹介したように、やっぱり9080/9090のSKUはなし。ただRadeon RX 9070 XTはRadeon RX 7900 XTと同等の性能というようにも読める。

Ryzen Z2シリーズ

AMDは2023年にRyzen Z1シリーズを発表した、こちらの後継としてRyzen Z2を今回アナウンスした(Photo16)。ラインナップはZ2 ExtremeとZ2に加え、新しくZ2 Goも追加された(Photo17)。ベースとなるのは恐らくStrix Pointであるが、Ryzen Z1同様NPUを無効化しているかどうかは現状判断が出来ない。またコアも最大8coreに制限されているようだ。こちらも2025年第1四半期中に投入されるとの事だ。

  • Photo16: 2023年にはそれなりの性能だったRyzen Z1だが、流石に2年近く経過するとややスペック的に見劣りするのは致し方ない。そろそろRefreshの時期である。

  • Photo17: Ryzen Z2 Goは低価格向けのSKUということかと思われる。ただCUは12個なので、CPUの処理能力は低いがゲームはそれなりに動くという感じだろうか?

Ryzen AI 300とRyzen AI Max

2024年のCOMPUTEXの折にRyzen AI 300シリーズが発表され、その後2024年10月にはBusiness Desktop向けのRyzen AI 300 Proシリーズが追加された訳だが、これまでは全てRyzen 9のSKUだった。これに今回Ryzen 5/7のSKUが追加されることになった(Photo18)。AMDによればRyzen AI 7 350であってもQualcommのX Plus X1P-42-100とかCore Ultra 7 258Vと比べて十分に高速であり(Photo19)、NPU性能も遜色ない(というか最高速)とする(Photo20)。CPUやGPUは多少性能を落としているが、NPU性能は既存のRyzen AI 300シリーズから据え置きにしたようだ。

この追加SKU、Ryzen AI 7 350とRyzen AI 5 340が今年第1四半期に、Pro版が第2四半期にそれぞれ投入されるとしている(Photo21)。

さてそのRyzen AI 300の上位に新しく投入されるのがRyzen AI Max/Ryzen AI Max Proシリーズである(Photo22)。こちらCPUは既存のZen 5コアベースのCCDであるが、新しく40CUのRDNA 3.5ベースのGPUコアと50TOPSのNPU、更に最大256GB/secのメモリI/Fを搭載する新しいIoDを組みわせた製品となる。40CUということはRadeon RX 7600 XT(32CU)を上回る性能で、Radeon RX 7700 XT(54CU)よりちょっと低いくらい。Radeon RX 7600 XTが18Gbps/128bit GDDR6で288GB/sec、Radeon RX 7700 XTが18Gbps/192bit GDDR6で432GB/secのメモリ帯域を持つ事を考えると、40CUといっても結構メモリ帯域に足を引っ張られる可能性はある(Infinity Cacheをどの程度搭載するか次第だろう)ものの、Mobile向けCPUとしては破格のGPU性能である。Core Ultra 9 288Vとの、CPU性能(Photo25)及びGPU性能(Photo26)との比較に加え、AppleのM4 Proとの比較(Photo27)も示されており、またLM Studioを利用してパラメータ700億のLLMを実行すると、処理性能2.2倍、消費電力は87%減だとしている(Photo28)。この消費電力は、Ryzen AI Max+ 395がTDP 55W(CPUとGPUを含む合計)、GeForce RTX 4090が450W(GPU単体)というところからの比較だそうである。

このRyzen AI Pro Max+/Ryzen AI Pro Maxは2025年第1四半期~第2四半期にリリース予定となっている(Photo29)。恐らく通常モデルが2025年第1四半期、Pro版が第2四半期になるのであろう。

個人的な感想を言えば、CPU Coreの方は8core/16threadにして、IoDのGPUの方はRyzen AI Max Pro 380と同じ16CU構成で構わないので、2ch DDR5で利用できる様にしてRyzen 9000GシリーズとかでAM5向けに投入してほしい気が非常にするのだが、そうした計画があるかどうかを含めて現状は定かではない。

  • Photo18: 厳密に言うと、Ryzen AI Pro 300シリーズにはRyzen AI 7 Pro 360が既に存在するので、丸っきり初めてという訳でもないのだろうが。

  • Photo19: Ryzen 7ということでSnapdragon X EliteではなくSnapdragon X Plusとの比較。

  • Photo20: 比較がProcyon AIというあたりがちょっと微妙ではある。確かにNPUを使うテストもあるのだが。

  • Photo21: Ryzen AI 7 Pro 360は引き続き発売される模様。逆にRyzen AI 7 360が無いのが不思議である。

  • Photo22: 3/5/7/9の上にMaxとかMax+を作ってしまった。変な前例にならないといいのだが。

  • Photo23: 256GB/secということは、LPDDR5X-8000を4ch搭載という計算になる。まぁこの位の帯域にしないと、40CUのGPUが遊んでしまう事になるだろうが。

  • Photo24: メモリ回りがボトルネックになって、そのままAM5に転用という訳には行かないのがネックではある。

  • Photo25: コア数の違いもあり、圧倒的な性能差なのは間違いない。

  • Photo26: 当然3D Gameのフレームレートも性能差が著しい。

  • Photo27: 3D Renderingといっても実際にはCPU RenderingなのでCPU性能の比較という事になる。

  • Photo28: 比較はLlama 70b 3.1 Nemotron Q4を利用している。それにしてもDesktop版のGeForce RTX 4090と比較するとは思わなかった。

  • Photo29: 2 CCDだとMax+という訳ではなく、ハイエンドの16core構成のみMax+で、あとはMax扱いである。またローエンドのRyzen AI Max Pro 380にはPro無し版が存在しない。

Ryzen AI 200

最後がRyzen AI 200シリーズ(Photo30)であるが、これは既存のHawk PointベースのRyzen 8040シリーズのRenumberingと考えれば良い(Photo31)。

  • Photo30: まぁ名前がちょっと混乱してたので、Ryzen AIブランドで統一して判りやすくしたというのは良いのだが、NPUを含まないSKUまでRyzen AIを名乗るのは如何なものか?

  • Photo31: 全SKUという訳ではなく、HS SKUは今のところラインナップされていない。こちらはPro版以外も含めて全て2025年第2四半期に投入である。

ということで

色々盛り沢山ではあったのだが、出荷開始時期はもう少し後送りだし、Radeon RX 9000シリーズは具体的な製品紹介がまだない訳で、この辺りは今後のお楽しみである。あと冒頭で述べたように、実際の基調講演ではOne more thingということで隠し玉が登場する可能性もある。このあたりを含め、Updateがあったら別途お伝えしたい。