NTTドコモがLTEに対応した次世代iPad/iPhoneの取り扱いを来年2012年夏から秋にかけて開始する――12月1日に公開され話題となっている日経ビジネスオンラインの記事だ。NTTドコモはすぐに否定の声明を発表しているが、ここでは「iPhoneでのLTE対応」「ドコモとAppleが販売提携」の2点を中心に、その可能性を分析してみたい。

iPhone 4S

まず結論からいうと、前者については疑問の余地はなく、当然あるべき可能性だといえる。現在AppleはiPadとiPhoneの3GモデムにQualcommのベースバンドチップを採用しているが、それはこのチップがGSMとCDMAの2系統のネットワークを同時サポートするためだ。問題はこのQualcommのベースバンドチップのLTE対応だが、同社は11月中旬にLTE/HSPA+ならびにLTE/EV-DOに対応した3G/4G両対応のGobi 4000、MDM9200/9600を発表しており、組み込み部品としてはすでに準備ができている。これらを採用する際の問題は「部品コスト」「バッテリ消費の増大」の2点だけで、これを良しとするならば来年夏以降に登場するとみられる次世代iPadやiPhoneでの採用は不思議ではない。

次の問題はドコモとAppleの提携の部分だ。Appleとしては各国でiPhone/iPadを販売するキャリアが拡大することはビジネス的にも重要であるため、当然日本最大の携帯キャリアであるドコモとの交渉は持つべきだろうし、実際持ちたいと考えるだろう。だが以前にSprint-NextelがiPhoneの取り扱いを開始したときにWall Street Journalなどが報じていたように、Appleは携帯キャリアにiPhoneなどの端末を卸す際、その販売数量についてコミッション(約束)を結ぶ習慣があるとされている。携帯キャリアにとっては規定数量以上の端末を販売できないと損を被る可能性があるため、非常に不利な内容だ。さらに、大手キャリアほどそのノルマがきついという話もあるため、もしこれらが事実のうえでドコモがAppleとの販売契約に合意したというならば、ドコモはこうした条件をすべて呑んだということを意味する。特にWSJが報じたSprintの契約内容をうかがう限り、端末全体の年間販売台数の4分の1から3分の1程度がiPhoneの販売ノルマとなるため、相当の販売努力が必要とみられる。これまでの端末調達体制やマーケティング展開を根本から見直す必要があるくらいの方針転換を迫られるだろう。

日経ビジネスの報道では「アップルはドコモにiPhoneやiPadの販売権を与える条件として、ドコモが昨年12月に商用化したLTEネットワーク(サービス名は「Xi(クロッシィ)」)に対応させることを要求し、ドコモがこれに応じたもようだ」とあるが、おそらくネットワーク対応は争点ではない。その意味するところは次節で説明するが、これはどちらかといえば携帯キャリアが端末メーカーに要求する内容だ。むしろ、先に挙げたコミッションなどの契約内容の詰めの部分が問題だと筆者は考えている。

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