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なぜ上場企業は黒字でもリストラするのか?【リストラ時代の働き方】

東京商工リサーチによると、2024年11月15日現在における上場企業の早期・希望退職募集の対象人数は既に9,219人に達しており、2021年以来3年ぶりに1万人を超えるのは確実です(下のグラフ参照)。

引用:2024年の「早期・希望退職」募集1万人が目前 上場企業53社、人数非公開の大型募集相次ぐ |  東京商工リサーチ

国内外で9,000人を募集する日産自動車、50歳以上の社員を対象に1,000人を募集する第一生命ホールディングスや人数の上限を設定しない武田薬品工業、募集人数は未公表ですが200億円の費用計上を発表した富士通など人数非公開の大型募集も相次いでいます。

そして今年のリストラは以下の特徴があります。

・「早期・希望退職募集」を実施した企業の直近通期最終損益(単体)は、黒字が32社(構成比60.3%)、赤字が21社(同39.6%)で、黒字が約6割を占める

・黒字企業の募集人数は7,661人で、全体の約8割(同83.1%)を占める

・黒字32社のうち、27社が東証プライム上場

引用:同上 |  東京商工リサーチ

この記事では、上場企業が黒字でもリストラを行う理由とその背景を探るとともにリストラ時代の働き方を提案します。
 

■この記事を読んで頂きたい人■
・上場企業にお勤めの20~30代のサラリーマン
 
 
■この記事でわかること■
 ①上場企業が黒字でもリストラする2つの理由とその背景とは?

②リストラ時代の働き方とは?
 

<自己紹介>

筆者本人(1960年生 2023.11撮影)
筋トレ歴17年 ボクシング歴11年

<筆者略歴>
1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、ゼネコンに入社
1988年 インフラ企業に転職
2018年 子会社の不動産会社に転籍
2023年 退職

 

      

 目次

上場企業が黒字でもリストラする2つの理由とその背景とは?

理由1とその背景

一つ目の理由は、リストラの本来の目的である事業構造改革が上場企業で進められていることが挙げられますが、なぜこれまでリスクや変化を避けてきた日本企業の経営者がここに来て事業構造改革を積極的に進めるのでしょうか?

その背景には、日本の慣習である「株式持ち合い※」の解消が進んだことに伴う海外投資家などアクティビスト株主の台頭があります。

 

※「株式持ち合い」は、敵対的買収の回避や系列関係・取引関係の維持・強化を目的として、戦後からバブル期にかけて盛んに活用されましたが、バブル崩壊以後は開示ルールの厳格化や海外投資家からの批判などにより解消が進んでいます(下のグラフ参照)。

引用:野村資本市場研究所|我が国上場企業の株式持ち合い状況(2020年度)

 

すなわち、上場企業は「物言う株主」対策のために、これまで及び腰だった事業構造改革に手を付けざるを得なくなったわけです。

日本の経営者の外圧に対する弱さが、結果として、(決断力の無い日本の経営者に)事業構造改革を決断させました。

こぼれ話

日立が典型例です

このような事業構造改革の典型例は、ここ20年で株主が大きく変わった日立製作所です。

日立の海外株主比率は、2024年3月末51.1%と初めて過半となりました。

海外株主は、日立の経営に多大な影響を与えています。

彼らは日立の戦略や投資方針に対して意見を述べることがあり、これにより日立の経営方針が変わることがあります。

理由2とその背景

二つ目の理由は、年功序列と終身雇用制の破綻に対する「対症療法」です。

具体的には、賃金の割に貢献度(生産性)が低い40代以上の社員の首切りです(下のグラフ参照)。

引用:賃金を切り口とした年功序列型人事制度の検証  | 産業能率大学 総合研究所

そして、リストラ(首切り)急増の背景には、今後の70歳まで雇用延長義務化があります。

これまでは50代からの役職定年によって、何とかしのいできましたが、今後70歳まで雇用延長が義務化されれば、もう無理です。

今のうちに、雇用延長対象者を減らしたいのが本音です。

新卒一括採用で社員を囲い込み、さんざん滅私奉公せた挙句、最後まで面倒見ないというのは経営者の怠慢以外の何ものでもありません。

メンバーシップ型雇用を変革できない経営者の尻ぬぐいは、いつまで続くのでしょうか?

前述の一つ目の理由を別の視点で見れば、アクティビスト株主の台頭による事業構造改革が、この従来の「尻ぬぐい」に大義名分を与えたとも言えるかもしれません。

 

 

リストラ時代の働き方とは?

リストラ時代は、転職のリスクより一つの会社に居続けるリスクの方が大きくなる可能性のある時代です。

一つの会社に居続けていては、会社都合の異動で専門スキルが身に付く可能性が低いため、リストラで首を切られると転職は困難だからです※。

※新卒一括採用で人を確保してから、仕事を割り当てるメンバーシップ型雇用では、会社都合で異動が行われるためジェネラリストという名の「何でも屋の素人」にしかなれません。中途採用する企業は、問題解決能力を求めているため市場価値のある専門スキルがなければ採用されません。なお、ジェネラリストでもリスクが無いのは早々に選別された一部の幹部候補だけです(関連記事:日本凋落の原因【日本にGAFA生まれない理由】選別主義の実像)。

 

リストラ時代は、会社に依存するのではなく「職能※※」に依存する働き方が必要です。

 

※職能とは、特定の職務や仕事を遂行するために必要な能力やスキル、知識のことを指します。例えば、ソフトウェア開発職能(プログラミングスキル)、会計職能(経理知識)、営業職能(プレゼンテーション能力)など

 

具体的には、貢献度(生産性)より賃金が低い20代後半から30代(下のグラフ参照)は、転職(正確には転社)によってキャリアを積み、専門スキルを磨いておけばリストラに遭う可能性のある40代になっても安心です。


引用:賃金を切り口とした年功序列型人事制度の検証  | 産業能率大学 総合研究所

求人サイトに複数登録しておけば、自分の経験、スキル、職歴などを入力することで、いつでも自分の市場価値(年収)を見積もることができます。

少しでも自分を高く買ってくれる企業があれば、どんどん転職(転社)して専門スキルを磨いた方が賢明です。

40歳まで働きに見合わない安月給で働かされて、40歳になったらポイ捨てではバカバカしくてやってられません。

 

 

まとめ

✔上場企業が黒字でもリストラする2つの理由と背景とは?

【理由1】

・事業構造改革が上場企業で進められている

【背景】

・日本の慣習である「株式持ち合い」の解消に伴い、海外投資家などアクティビスト株主(物言う株主)が台頭した

・日本の経営者は、リスクや変化を避ける一方で、外圧に弱い

【理由2】

・年功序列と終身雇用制の破綻に対する「対症療法」、すなわち賃金の割に貢献度(生産性)が低い40代以上の社員の首切り

【背景】

・ 今後の70歳まで雇用延長義務化を見据えて、今のうちに、雇用延長対象者を減らしたいのが本音

✔リストラ時代の働き方とは?

・会社に依存するのではなく「職能」に依存する働き方

・貢献度(生産性)より賃金が低い20代後半から30代は、転職(正確には転社)によってキャリアを積み、専門スキルを磨いておく

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