フクシマは・・・チェルノブイリ事故以降、依然として続く高い癌発症リスク
チェルノブイリ原発事故当時18歳未満であった者を対象とする事故後25年経過した時点のスクリーングに関する米国国立衛生研究所(NIH)の研究報告が発表されている。
当研究によれば、小児期や思春期にチェルノブイリ原発事故で放射性降下物を浴びた人々の甲状腺癌の発症リスクは、依然として低下していないという。
ウクライナのチェルノブイリ原発事故からほぼ25年が経つが、降下した放射性ヨウ素131(放射線同位体)の曝露が、事故当時に小児期や思春期(サイト注1:0~17歳)であったチェルノブイリ住民に依然として発症する甲状腺癌の原因であろうと研究者らは述べる。
米国国立衛生研究所の一機関である米国国立癌研究所(NCI)の研究者らに主導される国際的な研究チームは、放射性ヨウ素131からの放射線の吸収量が高ければ高いほど甲状腺癌の発症リスクが高まるという明らかな吸収線量-反応関係(dose-response relationship)(サイト注2:doseに関しては本文末に掲げられているリンク先等を参照のこと)がいまだ減少傾向に転じていないことを見出した。
この研究は事故当時、小児期や青年期であったチェルノブイリ住民の放射性ヨウ素131線量に関連した甲状腺癌発症リスクを研究した初めての前向き研究であり、2011年3月17日のEnvironmental Health Perspectives誌に発表された。
「この試験はこれまでのチェルノブイリ研究と多くの重要な点で異なっています。まず、われわれは事故発生後2カ月以内に測定した甲状腺に吸収された放射性ヨウ素由来の放射能をもとに研究を行いました」と、研究著者であるNCI放射線疫学部門のAlina Brenner医学博士は説明した。「第二に、標準的な検査方法を用いて甲状腺癌を同定しました。吸収線量に関係なく、コホートに含まれる全員に対してスクリーニング検査を行いました」。
この研究は1986年4月26日のチェルノブイリ事故当時18歳未満であった、事故現場に近接する当時のウクライナ州の3地区(チェルニーヒウ、ジトームィル、キエフ)に住んでいた12,500人を対象としている。事故発生後の2カ月間に対象者全員に対して甲状腺に吸収された放射能が測定され、この測定値を用いてそれぞれの放射性ヨウ素131の吸収線量が推定された。10年間にわたって最多4回、参加者は甲状腺癌のスクリーニング検査を受けた。初回の検査は事故後12~14年後に行われた。
甲状腺が腫れた感覚の有無、超音波検査(体内の甲状腺画像を音波を用いて描出する手法)、内分泌専門医による個別の臨床検査および甲状腺検査といった標準的なスクリーニング検査方法が用いられた。参加者には甲状腺に吸収されたヨウ素の放射能量の推定に関連する項目を含む一連の質問票への記入が求められた。これらの項目には、事故後2カ月間の住居歴や牛乳消費量(サイト注3:放射性降下物の付着した牧草を餌としていた牛の場合、汚染リスクがある)、甲状腺に吸収される放射性ヨウ素の吸収線量を低減させるため予防的に投与される安定ヨウ素投与の有無といった項目が含まれていた。甲状腺癌が疑われる者には生検が勧められ、癌細胞となる可能性のある細胞が採取され顕微鏡検査が行われた。また、適宜、外科的切除術も検討された。参加者のうち合計65人が甲状腺癌と診断された。
研究者らは、放射性ヨウ素131の崩壊の際に生じるエネルギーが一人一人の甲状腺へ吸収される量(測定単位はグレイ)との関係から癌発症リスクを算出した。1グレイは放射線の吸収線量の国際単位系である。1グレイ上がるごとに放射線関連の甲状腺癌の発症リスクは2倍に上昇していた。
研究期間中に研究者らは、事故当時に当該地域に住んでいた人々において上昇した癌発症リスクが時間の経過とともに低下することを示すデータを提示できなかった。しかし、過去に原爆を生き延びた後、医学的に放射線照射を受けた者に対して別個の研究が行われているが、この研究によれば、放射線曝露から約30年後に癌発症リスクが低下し始めるが、40年後には再度上昇することが示された。研究者らは、癌発症リスクが最終的に低下し始めると思われる時期の決定には参加者の追跡を継続することが必要であると考えている。
チェルノブイリ原発事故関連の詳細な情報は、NCIの研究サイトhttp://chernobyl.cancer.govをご覧ください。
放射性ヨウ素131降下物に関する詳細な情報は、
http://www.cancer.gov/cancertopics/causes/i131をご覧ください。
放射線線量の測定に関する詳細な情報は、
http://www.cancer.gov/cancertopics/causes/i131をご覧ください。
NCIの癌疫学・遺伝学部門に関する詳細な情報は、
http://dceg.cancer.govをご覧ください。
NCIは、癌の予防とその生物学の探索研究、新規治療法の開発、新しい研究者の研修などを通じて率先して国家癌計画(National Cancer Program)を行い、また癌負担を劇的に軽減し癌患者とその家族の生活を改善するNIHのプログラムを実践している。癌に関する詳細な情報は、NCIのウェブサイト(www.cancer.gov)、またはNCIの癌情報サービス(1-800-4-CANCER (1-800-422-6237))をご利用ください。
米国国立衛生研究所(NIH)--米国国立衛生研究所--は27の研究施設と治療センターを擁する米国保健社会福祉省の一機関である。NIHは基礎医学、臨床医学、橋渡し的医学研究を運営し支援する主要な連邦機関であり、一般疾患と稀少疾患双方の原因、治療、治癒のための研究を行う。NIHに関する詳細な情報やNIHのプログラムについては、www.nih.govをご覧ください。
参考文献: Brenner AV, Tronko MD, Hatch M, Bogdanova TI, Oliynik VA, Lubin JH, Zablotska LB, Tereschenko VP, McConnell RJ, Zamotaeva GA, O’Kane P, Bouville AC, Chaykovskaya LV, Greenebaum E, Paster IP, Shpak VM, Ron E. 、「チェルノブイリ原発事故関連のウクライナにおける甲状腺癌発症頻度に関する放射線ヨウ素131線量-反応関係」(EHP誌第119巻、2011年3月17日)。
サイト注1.http://chernobyl.cancer.gov/studies/ukram.php?lev=1&page=21(英文)
サイト注2. http://www.bt.cdc.gov/radiation/pdf/measurement.pdf (英文)、財団法人原子力安全研究協会「緊急被ばく医療の知識」平成15年
サイト注3.http://www.cancer.gov/cancertopics/i131/abouti131/exposed(英文)
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窪田 美穂 訳
後藤 悌(呼吸器内科/東京大学大学院医学系研究科)監修
以上、
http://www.cancerit.jp/
文面は
http://www.cancerit.jp/xoops/modules/nci_topic/index.php?page=article&storyid=415
以上、
ほとんど風化してしまいそうな安全神話、事故後チェルノブイリに入った日本の医療学者のフクシマに対する安全・安心表明のインパクトと政治利用・・・。
その中枢・中核となっている福島県立医大・長崎大医学部・放射線影響研究所、こうした研究結果にたいしても、いつもの「見解の相違」というのだろう。
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