宇多丸 高橋幸宏を追悼する

宇多丸 高橋幸宏を追悼する アフター6ジャンクション

宇多丸さんが2023年1月16日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で亡くなった高橋幸宏さんを追悼していました。

(宇内梨沙)宇内梨沙がピンチヒッターをやらせていただきます。

(宇多丸)まあうなぽんが来ればね、バカ話のひとつでもして盛り上げたいのは山々なんですが。今日はどうしても、このニュースをこの番組でもお伝えしたいということで。既にいろんなね報道番組とか、ネットとかでも出ておりますが。YMO、イエロー・マジック・オーケストラのドラマーとしても知られ、もちろん数々のバンド。そしてソロ活動でも活躍されました、ミュージシャンの高橋幸宏さんが今月11日に誤嚥性肺炎のため亡くなっていたことがわかったと報道されました。70歳という。若いんですよね。お若い。

ここのところね、脳腫瘍の手術で闘病とかをされてるってのもあったんですが。割とこの訃報に関しては、突然我々は聞いたという感じで、びっくりしちゃって。僕も本当に最初、聞いた時はちょっと絶句っていうか。ちょっとしばらく、本当に何もできなくなるぐらいボーッとしてしまったという感じですけど。リスナーの方からもメールをいただいておりまして。ちょっと代表的なところをご紹介しますね。「1月15日(日)、朝から仕事をしながら安住さんの『日曜天国』を聞いていると信じられないニュースが流れました。高橋幸宏さんが亡くなりました。一瞬、何を言ってるのかわかりませんでした。『えっ、そんなわけないじゃんか。そんなバカな。信じられない』と。

たしかに闘病されていたし、音楽活動も休んでいらしたけど、亡くなるなんて……幸宏さんはいつでも先進的な音楽を生み出し続けていて、いつでもおしゃれで、いつでもかっこよくて、いつでもユーモアがあって、最高にイカした方です。クールなドラムも素晴らしいですが、歌声も優しくて穏やかでとても大好きです。宇多丸さんは幸宏さんから音楽的な影響も大きいと思いますが、それだけでなく、ファッションや文化的な影響も多大に受けておられるのではないでしょうか? 宇多丸さんの受けた衝撃は想像すらできません。

簡単に『ご冥福をお祈りします』なんて言えないです」というようなお気遣いをいただいて。この方の他、いろんな方からも関連のニュースなどいただいて。でもまさに、聞いた時にはちょっと呆然としてしまうというような感じ。まさに、この番組だと本当についこの間、11月1日にライブアンドダイレクトのコーナーに高野寛さんにご出演いただいて。幸宏さんの音楽活動50周年記念ライブということで。みんなが総集結してやると。で、「ご本人はちょっと体調がすぐれないのでご出演はされませんが、でもやっぱりみんな、幸宏さんが大好きで……」って。高野寛さん自身がもちろんね、偉大なミュージシャンとしてずっとやられてますけども。高野さんからしても、本当にもう憧れの人で。「夢のようだ」みたいなことをおっしゃっていて。そんな話をしたのも本当についこの間のことで。

で、その時に高野さんに僕も言いましたけど。本当に僕、YMOもそうだし、お三方の活動も全て、すごく大ファンですけども。なんかね、結果的にというか、そんなに意識してってことじゃないんだけど。たとえば、この番組が終わって帰り道、私はビールを買って一杯やりながら、お気に入りの帰り道を音楽を聞きながら歩くのが本当に楽しみなんですけど。そことかで、もちろん今の新しい音楽も聞いたりするんだけど。ヒップホップを聞くこともあるけども。やっぱりね、幸宏さんの曲を聞く率が本気で高くて。

なので、たとえばサブスクリプションサービスでもオフラインでダウンロードをしておいて。即スタンバイアルバムってあるじゃない? 即スタンバイアルバムはもう幸宏さんのは一通り……いつでも幸宏さんの曲は出せるみたいな。そんぐらい、なんていうか、すごく……今でも普通に聞き続けてるっていう感じで。幸宏さんね、もちろんドラマーとしていろんな特徴が……これは皆さん、おっしゃると思いますが。非常に正確なというか。

打ち込みに近いような、異常に正確なドラミング。でも、それを生でやる。それによって、なんというか、本当に幸宏さんのドラミングでしか味わえないかっこよさっていうか。もっと言えば、今っぽさですよね。幸宏さんの曲は今聞いても全然古びないのがやっぱりその幸宏さんの非常に正確な……でも、それでちゃんと生のニュアンスも豊かなドラミングあってこそというのもあるし。

あと、ボーカリストとしても非常に魅力的で。すごく特徴ある歌声と、あとはなんだろうな? 僕からすると、なんか弱い男性の歌っていうか。かっこいいんだけどね。すごくおしゃれでかっこいいんだけど、弱い男性の歌みたいなところで、すごく共感できる部分もあったし。あと、めちゃくちゃおしゃれでかっこいい。いまだにすごく聞いていて。ファッションの影響も……たとえばファッションブランドの方もずっとやられてて。思い出すのはとにかく、中学の時からずっとファンですから。憧れの人ですから。

いろんなブランドをやられてんだけど、当時Bricks MONOっていうね、僕らが中学の時にやられていたBricks MONOのお店が、ベルコモンズから西麻布に向かう外苑西の途中にあって。ちっちゃいお店だったんですけど。そこ行って。当然、買えないんだけど。シャツだけ見て「ほしいな……」みたいに思ったりとかね。そんなのもすごく思い出しますし。

とにかく、いろんな曲をかけて思い出を語るみたいなことをやっていても、きりがないぐらいなんですが。まずはちょっとね、幸宏さんのいろんな曲をかけようという時に、僕はたぶん、回数で聞いてんのはこれだと思います。以前、ライブアンドダイレクトのコーナー、サンディー & ザ・サンセッツのサンディーさんにお越しいただいた時もね、これのダブバージョン、最高ですみたいな話もしましたけども。オリジナルバージョンというか。元は高橋幸宏さんの曲です。

あのYMOのレゲエっぽい80年代の曲に超かっこいい曲が多いっていう話を前にもしましたけど。まさに、その典型の1曲と言えるんじゃないですかね。1981年『NEUROMANTIC』というアルバムの収録曲です。途中、ロキシー・ミュージックのアンディ・マッケイさんのサックスがめっちゃかっこいいんで。そこんところまでは間違いなく行きたいと思います。高橋幸宏さんで『Drip Dry Eyes』。

高橋幸宏『Drip Dry Eyes』

(宇多丸)高橋幸宏さん、1981年、アルバム『NEUROMANTIC』収録の『Drip Dry Eyes』を聞いていただいております。めちゃくちゃかっこいいですね。40年前の曲ですよ?

(宇内梨沙)なんかエモさを感じます。

(宇多丸)そうだね。あと、やっぱりクールさかな? 同時代の曲と比べても、まあその古びなさはちょっと異常な1曲かなと思いますね。他にもちょっとね、いろんなお話はしたいんですけど。とりあえず今、ベラベラと話してますけど。僕、あくまで本当に1ファンです。聞いておわかりの通り。幸宏さんご本人とお会いしたのは2010年の『WORLD HAPPINESS』というね、YMOの皆さんが開催されているフェスに若干、場違いながら我々RHYMESTERも出演させていただいて。で、打ち上げも参加して。もうでも僕もMummy-DもJINも、もうヒーローたちですから。伝説のヒーロー。だから、あまりにも伝説の人たちすぎて、ちょっと逆に緊張しないぐらいの感じで。なんかも夢の中にいるような感じで。

それで打ち上げも参加させていただいて。特にね、やっぱり幸宏さんとはお話しました。その時に。「ラジオ、聞いてるよ。映画評」なんて言っていただいて。「えっ?」なんて。それで僕、幸宏さんが出ている、とある映画をすごいめちゃくちゃディスっていたんですけども。そんな話とか。あとね、幸宏さんが出ていた映画『四月の魚』の話なんてね。これはまた、『四月の魚』の話はね、RHYMESTERの元メンバー、Dr.LOOPERが1ヶ月間、家出した後に、我々が新宿の映画館で『四月の魚』を見ていたら……みたいな。いろんな面白い話がいっぱいあるんだけど。

なので、幸宏さんにお会いしたのはその2010年に1回、ちょっと話しただけなんで。本当にもう、ただのファンとして憧れということで言わせていただいてます。番組に番組に1回、お越しいただきたかったですよね。また、こういう悔みが増えてしまいましたけど。で、もう1曲、かけたい。今、この『Drip Dry Eyes』はお聞きの通り、英語詞なんですけども。やっぱり幸宏さん、日本語の歌も本当に素敵で素晴らしくて。次にかけたいのはですね、いろいろ迷うとこなんですけど。

これね、テレビのバラエティ番組で『極楽テレビ』というですね、影山民夫さんが放送作家を務められて1ヶ月ぐらいでね、5回ぐらいしかやってないのかな? あっという間に打ち切りになってしまったバラエティ番組があって。これ、幸宏さんが出ていて。幸宏さん、お笑いもすごい好きだったから。で、それのエンディングテーマがこの曲なんですよね。これからかける曲。『Once A Fool,…』というポニーキャニオンに移籍してのアルバムからの1曲なんですけど。

これね、幸宏さんのその日本語詞の中でも一番、それこそめちゃくちゃエモいっていうか。やっぱりすごく気の弱い男の人が本当に片思いしてるだけの歌なんだけど。で、この『極楽テレビ』はあっという間に終わっちゃったんだけど、でも僕らはすごいファンで。この曲、幸宏さんの曲の中で一番、普通の人が聞いて感動する。だからこれ、ヒットする可能性があるんじゃないか?ってことで、勝手にですよ? 勝手に思っていて。でも、自分たちで買うのとかは、そんなAKBのファンみたいな感じでいっぱい買ったりとか、できないから。財力的に。だからパルコのレコード屋さんに行って、その『今日の空』のシングルをこうやって面出しして。表に出したりしてて(笑)。

そういうことをしていたぐらいで。で、幸宏さんの中ではある意味、本当にここまでエモいのはなかなかないぐらい。そういう意味で、スタイリッシュな幸宏さんのイメージからはちょっとそういうエモさが勝っているというような1曲です。僕はこれ、恥ずかしい話、1985年。16歳の時ですね。「なんで俺の気持ちを……?」って。今、俺が感じている気持ちっていう……あのね、言いたくないけど、こういう時があったんです。

(宇内梨沙)いや、誰にだってありますよ。宇多丸さんにだって、ある。

(宇多丸)まあ、そんな感じ。ちょっと歌詞にも注目して聞いてください。高橋幸宏さんで『今日の空』。

高橋幸宏『今日の空』

(宇多丸)はい。高橋幸宏さんの『Once A Fool,…』というアルバムから『今日の空』、聞いていただきました。1985年なので、正確には私、だいたいこの1年後ぐらいにね、こういう境遇というかね。まあ、あるわけですけど。それはまた別の話で。

(宇内梨沙)甘酸っぱいやつ。

(宇多丸)まあ、甘酢っていうか、巣鴨ですから。苦いだけなんですけども。酸っぱかったり、苦かったりするだけなんですけども。そういう、酸っぱかったり苦かったりする境遇を、だからたとえばさっきの『Drip Dry Eyes』とか、超オシャレな曲とか。なんて言うかな? ちょっと輝かせてくれるっていうか。いつものしょうもない帰り道も、なんかかっこよく輝かせてくれる。で、いずれ自分もああいうかっこいい大人になるんだ、みたいなね。思ってるというかね。

だから幸宏さんがロールモデルだったことは間違いないですよね。それはね。とかね、もう曲をかけるたびにいろんなことは出てくるんですが。「この曲にはこういうあれがあって」とか。あともう本当に今日はごく一部の曲しかかけておりませんが。いろんなことを思い出してきてしまって、あれですが。ということで、またちょっと後の時間で。今日、放送中のどっかで、時間があったら……幸宏さん、いろんな曲があったりするんでね。はい。かけてみたいと思います。

まずは高橋幸宏さん、ちょっと70歳というのはあまりにも早すぎるんで。「お疲れ様」というお声をおかけするには悔しい感じですけども。本当に、もう一度お会いして。番組もお呼びして、お話を伺えばよかったという後悔が本当に募ります。お悔やみ申し上げます。はい。曲は、引き続き聞き続けますので。本当にありがとうございました。

(中略)

(宇多丸)まだまだ幸宏さん曲、行くぞ! もう、埋め尽くしてやる! すいませんね。宇内さん、今日は。これからもう1曲、かけたいんですけども。1982年のアルバム『WHAT, ME WORRY?』。これ、作曲は教授、坂本龍一さんです。やっぱりお互いにクロスして作曲したりするのもYMO、この時期、ありましたし。

で、これはさっきも言いましたけどもYMOレゲエシリーズといいますか。レゲエテイストの名曲のひとつです。幸宏さんの日本語詞、最高でございます。高橋幸宏さんで『回想 Flashback』です。

高橋幸宏『Flashback』

(宇多丸)こんな感じで幸宏さんの曲を合間にここぞとばかりにはさみこんでいく本日の放送です。これを聞いている時は私、ちょうど中学生ですから。うん。あの暗黒の日々を救ってくれましたね。なんとか、巣鴨プリズンをこれで生き残れました。

<書き起こしおわり>

宇多丸 高橋幸宏主演映画『四月の魚』の思い出を語る
宇多丸さんが2023年1月16日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で亡くなった高橋幸宏さんを追悼。高橋幸宏さん主演映画『四月の魚』を高校時代、オールナイト上映で見た際の思い出を話していました。
ナイツ塙 高橋幸宏を追悼する
ナイツ塙さんが2023年1月16日放送のニッポン放送『ナイツ ザ・ラジオショー』の中で亡くなった高橋幸宏さんを追悼していました。
高田文夫 高橋幸宏を追悼する
高田文夫さんが2023年1月16日放送のニッポン放送『ラジオビバリー昼ズ』の中で亡くなった高橋幸宏さんを追悼していました。
星野源 高橋幸宏を追悼する
星野源さんが2023年1月17日放送のニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中で亡くなった高橋幸宏さんを追悼。番組内でかける曲を幸宏さん楽曲縛りで選曲していました。

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