坂口博信 ファイナルファンタジー1ができるまでを語る

坂口博信 ファイナルファンタジー1ができるまでを語る TOKYO M.A.A.D SPIN

坂口博信さんが2023年12月25日放送のJ-WAVE『ゆう坊とマシリトのKosoKoso放送局』の中でドラクエ1発売で衝撃を受け、ファイナルファンタジー1の制作を進めた話をしていました。

(鳥嶋和彦)で、そうこうしていて、その後にドラクエ?

(堀井雄二)『ポートピア』を出した後、ドラクエ出したね。

(坂口博信)あれはショックでしたね。やっぱり、出てきた時に。あれ、容量小さかったですよね。64KBでしょう? そんなもので入るはずがないっていう。

(鳥嶋和彦)出せないと思ってた。

(坂口博信)だってマップもある程度広くないと、やっぱり成り立たないじゃないですか。で、ストーリーも20時間とか……まあ、入らないだろうみたいな。なにしろセーブができなかったんで。そこですっぱり諦めちゃっていたんですよ。だからあの復活の呪文って来た時には「はあ? それがあったか!」みたいな。

(鳥嶋和彦)あれ、復活の自分ってどこから、誰の提案で?

(堀井雄二)いや、俺が考えたんだけど。

(鳥嶋和彦)やっぱり考えたの?

(堀井雄二)「これでできるんじゃないか?」って。で、「パスワード」っていうのだとつまらないから。「ふっかつのじゅもん」って。

(坂口博信)それがいいですよね。復活の呪文っていうネーミングが堀井さんっぽいって思ったな。「あこきすししししさそし」みたいな。

(鳥嶋和彦)そうそう(笑)。ちょっと間違って、蹴ったり触ったりするともうパスワードがパアだからね。あの時、あちこちで悲劇が起きていたと思うよ。

(堀井雄二)「ぱ」と「ば」を間違えたりとかね。

(坂口博信)そうそう。「どうしてこれで受け付けてくれないの? もう前のに戻るしかない……」みたいな。

(鳥嶋和彦)だから何回か復活の呪文を、2個か3個、取っとかなきゃいけないんだよね。

(堀井雄二)今だったら写真に撮ればいいんだけどね。

(坂口博信)写真もね、当時は現像しなきゃいけなかったからね。

(鳥嶋和彦)それでそういう風に無理だと思っていたのに、ドラクエが出てきて。どうでした?

ドラクエ登場にショックを受ける

(坂口博信)ああ、だからそれはショックですね。PCでアドベンチャーゲームだけじゃなくて、その後にロープレも作っていたし。なにしろ『ウィザードリィ』のファンだったし。その後のロープレも、自分は遊ぶ方もファンでしたから。どうしても作りたかったんですよね。でも「無理だろう」と思っていて。で、しかもアクションゲームを出しても出しても、やっぱあまり納得できるものが作れないというか。たぶん僕はアクションゲームを作れない人間なんで。

(鳥嶋和彦)向いてないと。

(坂口博信)はい。そしたらもう、ドラクエが出てきちゃったから「うわっ、これはやられたな!」って。

(堀井雄二)1をプレイしたの?

(坂口博信)1をやりました。スクウェアで集まって、みんなでやりましたね。

(鳥嶋和彦)ああ、みんなで?

(坂口博信)はい。それで僕が適当にカタカタッて名前を入れたら「あううお」になって。

(鳥嶋和彦)ああ、それがTwitterネームのあれ(@auuo)なの?

(坂口博信)ああ、そうです。僕、ずっとなにかゲームをやる時は「あううお」でやってます。そのドラクエ1以来。で、Twitterネームも「auuo」なんです。それでみんなで囲んで遊んで。ただ、その後すぐには自分たちで作ろうっていう風にはもちろんならなくて。

(鳥嶋和彦)ああ、そうなんだ。

(坂口博信)やっぱり遊んでみて「これは大変だよね」ってことになりましたよね。ロープレを作るのは。まあ、ストーリーはもちろん入ってくるし。長時間の遊びなんで。それが果たしていけるのか? ないしは、とは言ってもこの小さい空間にやっぱりすごく工夫してドラクエは入っていたんで。「これを超えることはできるのか?」みたいな。心配にもなってくるというかね。ただその後、しばらくしたらセーブできるのメモリチップができて。で、容量も128とかで。ドラクエ1の倍かな?

(堀井雄二)ドラクエ3だと256になっていたね。

(坂口博信)ああ、じゃあ4倍ですね。

(鳥嶋和彦)当時、そういう記憶容量の話、してたもんね。

(坂口博信)全然違いますよね。で、そうですね。「バンク切り替え」とかって言って。切り替えながら……本来メモリーに入らないはずの絵のデータを切り替えながら出せるとかっていう。任天堂さんはMMCチップっていうのを使って、いろいろ新しいプログラムのテクニックが使えるように改造を……ある意味、ファミコン改造ですね。その改造チップがROMにもう入っているみたいな。

(堀井雄二)FFって最初からセーブができたもんね。

(坂口博信)そうですね。そこでセーブができたんです。で、容量も増えたんで。「ドラクエに勝つにはどうしたらいいかな?」って。だから最初は地形に「斜め」を入れるっていう(笑)。これが一応、こうだったんで。「俺たち、斜めで勝てるんじゃね?」みたいな。で、斜めを入れたらかっこよくなりますよね?

(鳥嶋和彦)見た目から入っていったんだ。スクウェアらしいね。見た目から入っていくところが(笑)。

(坂口博信)そうですね。当時から見た目重視でしたね。

(堀井雄二)FFはすごい見た目があれだったもんね。

(鳥嶋和彦)FF1はドラクエ1のどのぐらい後?

(坂口博信)1が87年?

(堀井雄二)ドラクエ1は86年。

(坂口博信)で、FF1は87年ですね。だから1年後です。

(鳥嶋和彦)じゃあ、ドラクエ2はもう出ていたっていうこと?

(堀井雄二)2はもう出ている。

(鳥嶋和彦)あれ、半年後だもんね。

(坂口博信)開発期間が当時は9ヶ月から10ヶ月ぐらいでたぶん作ってたんで。

(鳥嶋和彦)何人ぐらいで?

(坂口博信)最初は4人なんですけど。スクウェア内で人気がなかったんで、誰も集まってくれなくて。

(鳥嶋和彦)「人気がない」って、あなたが?(笑)。

(坂口博信)それはちょっと語弊がありますけども(笑)。

(鳥嶋和彦)プロジェクトが?(笑)。

(坂口博信)いや、僕もちょっと当時、厳しく言っていたんで。

(鳥嶋和彦)やっぱりあなたじゃん?(笑)。

(坂口博信)いやいや、そうですね。でも、動き出して。だから、募集から始まりましたね。

(鳥嶋和彦)社内募集から?

(坂口博信)いや、社外ですね。フロムエー、リクルート誌で。それで河津が来て。石井浩一が来て。だから今で言うトップのクリエイターたちがたまたまそこで4、5人集まった感じですね。

(鳥嶋和彦)へー。そこはラッキーだったね。人気がなくてよかったじゃない?(笑)。

社外募集をして主要なクリエイターが集まる

(坂口博信)まあ、それもどうなんだ?っていう感じですけどね。それで集まったメンツも本当によかったんで、何とか完成っていう感じですかね。まあ最後は社内で他のチームにいたプログラマーとかも手伝いに入ってくれて。それでも最後、12人ぐらいじゃないですか?

(鳥嶋和彦)10人で作ったんだ。

(坂口博信)10から12ぐらい。

(鳥嶋和彦)あの当時、ドラクエって中村さんのところも入れて?

(堀井雄二)あれは20人ぐらいじゃない?

(鳥嶋和彦)そうだよね。よく撮影に行ったもんね。中村くんのところにね。

(堀井雄二)八幡山だったね。

(鳥嶋和彦)八幡山。そうそう。

(坂口博信)中村光一さんはね、優秀なプログラマーですもんね。『ドアドア』とかね。

(鳥嶋和彦)だからウィンドウの開き方とか、ものすごい彼らしいもんね。テンポが良くて。

(堀井雄二)ウィンドウは彼、絶対にやりたいってね。

(坂口博信)あと、ドラクエは効果音がよかったですよね。ダンジョンに入っていく時の「ザッザッザッザッ……」とか。やっぱり、どうしてもビジュアルで限界があるんで。あの音が入ることで、やっぱり中に降りて入っていく感じとか。あれはすごいなって思いましたね。

(鳥嶋和彦)植松さんとか天野さんっていうのも最初から坂口さんが「この人たちをやりたい」とか、見つけていったの?

(坂口博信)相手は鳥山明とかですから、勝てるわけがないじゃないですか。で、堀井さんのあの味のあるメッセージ。それにすぎやまこういちさんでしょう? 勝てるわけがないじゃないですか。まず、そこからスタートなんで。まあ、あがきですよね。対抗するために。植松さんはもうずっと組んでたんで、とにかく頑張るしかないですけど。やっぱり誰か、イラストレーターで世界観を作りたかったので。それはみんなで吟味しましたよ。だから。

(鳥嶋和彦)だからやっぱりドラクエをどう倒すか? どう超えるか?っていうことのマーケティングで考えていった?

(坂口博信)まあ、少なくとも追いつきたいとか、2番手近くには行きたいっていうような感覚があったんで。ないしは、差別化もしたかったし。

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