インダストリアル・ミュージックの始祖であり、音楽シーンのみならずその後のカルチャーやアートに多大な影響を与え続けている伝説のバンド、スロッビング・グリッスル。代表作『20 Jazz Funk Greats』を発表後の81年と、ジェネシス・P・オリッジの離脱やヒプノシスのメンバーでもあったピーター・クリストファーソンの訃報を受けた2010年と2度の解散をした後も、ピーター以外の3人=X-TGとして活動していた。\r\n\r\n
そのスロッビング・グリッスルが、デビュー40周年を越えた2017年、ミュートとの再契約が決定。その全作品がリイシューされることになった。その第1弾として先日11月3日に77年のファースト・アルバム『The Second Annual Report』、Pitchforkで満点を獲得した前述のサード・アルバム『20 Jazz Funk Greats』(79年)、2004年発表のベスト・アルバム『The Taste Of TG: A Beginner’s Guide To The Music Of Throbbing Gristle』の3作がリイシュー。いま改めてその異形のサウンドに耳を傾けるタイミングとなったと言えるだろう。\r\n\r\n
今回は、カメラマン/音楽ライターの久保憲司がコラムを執筆。スロッビング・グリッスルの軌跡を辿りつつ、彼らが当時も今も特別な理由をエピソードたっぷりに綴ってもらった。 *Mikiki編集部\r\n\r\n
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77年、イギリス中の若者を熱狂させたパンクと同じように、突然注目された音楽があった。それがノイズ、インダストリアル・ミュージックと呼ばれる音楽だった。そして、その発端がスロッビング・グリッスルだった。\r\n\r\n
昨今アイドルたちがノイズをやったり、シンセサイザー少女がモジュラー・シンセをグィグィ動かして恍惚な笑みを浮かべるその原点がスロッピング・グリッスルなのだ。そういえば、メンバーのコージー・ファニ・トゥッティは元祖シンセ美女ですね。違いました。正確には2番目で、最初に登場した電気美女はデリア・ダービシャーです。BBCのTV番組「ドクター・フー」※のテーマ・ソングを電子音で演奏したデリアはコージーと同じようにシンセだけではなくテープ・コラージュなんかもこなすノイズ美女でもありました。\r\n\r\n ※63年からイギリスのBBCで放映されている世界最長のSFドラマ・シリーズ\r\n\r\n