メンタルヘルスの悩み~それ、あなたは悪くない~

メンタルヘルス不調の人が増えています。「起立性調節障害」「うつ病」「睡眠障害」などを抱え、一人で悩む人は少なくありません。様々な国内外の研究を参考に考えていきます。

思春期に多い⁉︎ 起立性調節障害をどう乗り越える?

こんにちは。今回は、思春期の子どもたちに多くみられる「起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation:以下 OD と略)」について、海外の研究論文なども参考にしながら考えてみたいと思います。思春期のお子さんをお持ちのご家庭や、まさに今ODの症状に悩む学生さんに向けて、少しでも参考になれば幸いです。


起立性調節障害(OD)ってどんな病気?

起立性調節障害は、立ち上がったときに血圧や心拍数をうまく調整できず、めまいや立ちくらみ、倦怠感、動悸、朝起きられないなどの症状を引き起こす病気です。自律神経の働きがうまくいかないことが主な原因とされています。

思春期の子どもに多い理由
思春期は身体が急激に成長する時期で、ホルモンバランスや自律神経の働きが乱れやすく、心身ともに不安定になりやすい傾向があります。特に日本では、中学~高校生の約5~10%が何らかのかたちで起立性調節障害を経験するともいわれています。海外の研究(たとえば、アメリカのPediatrics誌など)でも、思春期に入るころからPOTS(Postural Orthostatic Tachycardia Syndrome)と呼ばれる類似症状が増加するという報告があります。


思春期の特徴とODの関係

1.身体的成長による負担

思春期は身長が急激に伸びたり、体重が増加したりと身体的な変化が大きい時期です。これに伴い、血管の長さや血流量の調整が追いつかない場合があり、自律神経がスムーズに働かなくなることがあります。

2.心理的ストレスの影響

学校生活や友人関係、部活動、受験など、思春期は精神的なストレスも増大しやすい時期です。精神的ストレスが重なると、自律神経のバランスは一層乱れやすくなり、ODの症状が強まる可能性があります。海外の文献でも、思春期のストレス負荷が起立性調節障害やPOTS発症のリスクを高めるとの報告があります(例:Journal of Pediatrics, 2020年)。

3.生活リズムの乱れ

夜更かしやスマートフォンの長時間使用により、睡眠時間や食事のタイミングが不規則になると、体内時計が狂いやすくなります。とくに朝起きられない症状があるODの子どもは「夜遅くまで眠れず、朝も起きられない」というリズムの乱れが、さらに症状を悪化させてしまう悪循環に陥りがちです。


海外研究から見るODの実態

■ アメリカのPOTS研究

米国では「POTS(Postural Orthostatic Tachycardia Syndrome)」という名称で研究が進められています。症状やメカニズムはODに非常に近く、起立後の心拍数の著しい上昇などが特徴です。

  • 研究によると、思春期の女子を中心に有病率が高い傾向が見られる
  • 自律神経治療や生活習慣の改善により、約70%以上の患者は成人期にかけて症状が改善する

■ ヨーロッパでの自律神経研究

欧州でも子どもの自律神経失調症や起立性の問題が増えており、学会や論文でも取り上げられています。生活リズムの改善や運動療法の効果を検証した研究が多く、軽度~中度の有酸素運動が症状軽減に有効という報告があります(European Journal of Pediatrics など)。


ODの主な症状

  • 朝起きられない・起きるのがつらい
  • めまい・立ちくらみ
  • 動悸、息切れ
  • 頭痛や吐き気
  • 倦怠感・集中力の低下

これらの症状は、疲労や睡眠不足、ストレスと重なってさらに悪化しやすいと言われています。


思春期のODに対する対策・治療

1.生活リズムの整備

  • 毎日、決まった時間に寝て起きる
  • スマホやテレビなどのブルーライトは就寝の1時間前には避ける
  • 朝起きたら少しでも日光を浴びる

2.適度な運動

  • 過度な運動ではなく、軽いストレッチやウォーキングなどから始める
  • 水泳などの有酸素運動が効果的という研究もあり
  • 続けやすい運動メニューを取り入れ、無理をしない

3.塩分・水分補給

  • 血圧が低い場合は、塩分摂取を適度に増やしてみる(医師と要相談)
  • こまめに水分補給をする

4.ストレスマネジメント

  • カウンセリングやスクールカウンセラーの利用
  • 友人や家族とのコミュニケーションを大切に
  • 余裕があれば、日記やSNSなどで気持ちを吐き出す

5.医療機関の受診と連携

  • 小児科や内科などを受診して正確な診断を受ける
  • 必要に応じて薬物療法を検討(β遮断薬や自律神経調整薬など)
  • 学校や職場と連携して、生活指導や学習サポートを受ける

親や周囲のサポートが大切

思春期の子どもは、自分の身体や心の不調をうまく言葉にできないことが多いです。症状を「怠けている」「やる気がない」と誤解されることが、さらに子どもを追い詰めてしまうことも…。まずは、ODが身体の不調によるれっきとした病気であることを理解し、周囲がサポートしていく姿勢が大切です。

  • 朝起きられないのは甘えではなく、身体が本当に起きられない状態
  • 病院で検査・診断を受け、原因を客観的に把握
  • 学校や医療機関とも連携し、無理のない範囲で治療と学業を両立

まとめ

思春期は心身ともに大きく変化する時期であり、そこに起立性調節障害(OD)の症状が重なると、本人も家族も戸惑いや不安を抱えてしまいます。しかし、海外の研究や臨床例を見ても、適切な生活習慣の調整やストレスケア、専門医の治療によって、多くのケースで改善が期待できることがわかっています。

「朝起きられない」「立ちくらみがひどい」などの症状が続いている場合には、まずは無理をせず、病院やクリニックで診察を受けてみましょう。周囲の理解とサポート、そして本人の生活リズムの見直しが進めば、思春期特有の悩みとも上手く付き合いながら、元気な日常を取り戻せるはずです。


参考文献・論文

  • Journal of Pediatrics (2020). 「Postural Orthostatic Tachycardia Syndrome in Adolescents」
  • European Journal of Pediatrics (2019). 「Lifestyle Intervention for Adolescents with Orthostatic Intolerance」
  • Pediatrics (米国小児科学会)「思春期における自律神経失調症の臨床研究」

当ブログでは他にも健康や生活リズムに関する記事を更新しています。よろしければそちらもチェックしてみてください。それでは最後までお読みいただき、ありがとうございました!
皆さんの思春期ライフが、少しでも快適なものになるよう応援しています。