風柳メモ

ソフトウェア・プログラミング関連の覚書が中心

eppfun AK3040Pro MAX関連の備忘録

はじめに

Amazonブラックフライデーセールで音質特化型TWSイヤホンであるDenon PerL Proを購入したのだが、せっかくaptX Losslessをサポートしているので手持ちのWindows 10のPC(Surface Book 2)でも体験したいと思い、ついついUSB-C LE Audio対応Bluetoothオーディオトランスミッター eppfun AK3040Pro MAX まで買ってしまった。

こちら、性能面ではわりあい満足できたものの、UI面では

  • アプリなしで、たった一つのボタンのみでLEDのみを参照しながら操作するようになっているため、操作方法を覚えるのが面倒
  • 付属の操作説明書(ファイルとしてはeppfun AK3040Pro MAX Japan User Manual for v2.0.pdf)が簡素すぎてわかりづらい

という不満点があった。

そこで、自分用に各種操作とそれにともなう状態変化の概要を図にまとめてみたので、備忘として記事にしておく。

eppfun AK3040Pro MAX動作概略図

eppfun AK3040Pro MAX動作概略図

  • 操作説明書v2.0の操作ガイドを元に、自分の備忘用として作成したもの
  • 一部実際の動作に基づいて推測した内容が含まれているが、内容の正確性については保証しない(間違いや過不足などについての指摘歓迎)
  • 再配布については特に制限は設けないが、良識に基づいての利用を期待

eppfun AK3040Pro MAXに関するFAQや誤解など

自分がはまった点や、Twitter(自称X)上などでAK3040 Pro MAXに対して言及しているもので、あきらかに誤解っぽいな? と思ったものなどに関するメモ。

ファームウェアの更新ができないものがある?

Amazonの製品ページ上では

aptx lossはアップグレードすることで、問題を解決することができます。Webアドレス:https://www.eppfun.com/file-share >AK3040ProMAXをダウンロード。

とあり、リンクされているページからはAK3040Pro MAX用のファームウェア(2024/12/13時点では「eppfun AK3040 Pro MAX V3.0(0528).zip」)がダウンロードできる。
ところが、これを適用しようとしても適用できないケースがある(実際に自分の購入したものも正しく適用できなかった)。

具体的には

  • 更新前のバージョンが「1.0.1」なのに、更新後は「0.0.0」と表示されてしまう
  • 再度ファームウェアを適用しようとしても、更新前のバージョンは「1.0.1」のまま

AK3040 Pro MAXのファームウェアが正常に更新出来ない様子

ただ、ファームウェアの日付は最新(V3.0)で2024/5/28となっており、その一方で自分の購入したものだとUSB Device Viewerで確認するとiSerialNumberのところが"20240822V1.0.8"となっており、これが製造日近辺を示す数字だと仮定すると、既に更新済みのファームウェアになっているのかも知れない。

上記Amazonのページでもよく見ると

製品が正常に使用されている場合は、ソフトウェアをアップグレードする必要はありません。アップグレード前にお問い合わせください。問題を確認してから操作してください。

とあるので、とくに問題なく動作しているようであれば、気にしなくてよいのかも(もちろん、気になる方はお問い合わせを)。

ボタンを押してもモードが切り替わらない?

aptX Adaptive対応のイヤホンを接続したところ、ペアリングは成功して接続されたものの、LEDが青のまま、ドングル(AK3040Pro MAX)のボタンを押しても色が変わらなかった。
とりあえず、音声再生ができるかを確認しようと音楽を鳴らすと、LEDの色が変わり、その後はドングルのボタンで切り替え可能となった。
どうやら、いったん何らかの音を再生した後でないと、モード切り替えが出来ない(ことがある?)模様。

aptX Losslessモードにできない?

せっかくDenon PerL ProをaptX Losslessで使うことを期待して購入したのに、最初はなぜかaptX Adaptive HD(96k/48k)までしか接続できなかった(LEDが赤にならない)。

いろいろ調べたところ、aptX Losslessにするためには、以下の設定が必要だった模様。

マルチペアリングはできない?

実際には複数のデバイス(SNK)とペアリング可能(同時接続はひとつのみ(Auracast時除く)*3)。
自分が試した範囲では、少なくともClassic Bluetoothデバイス4台+LE Audioデバイス1台ののべ5台分*4は記憶された模様。

ドングル(AK3040Pro MAX)経由で接続したイヤホンはヘッドセットとしては使えない?

eppfun AK3040Pro MAXの場合(説明書には明記されていないが)どうやらHFPプロファイルはサポートされているようで、イヤホンのマイクを通しての音声入力は利用可能。
入力デバイスとして「ヘッドセット マイク (eppfun AK3040Pro MAX)」を選択すればよい。

ただし注意点として、通常は音声再生専用のモードで動作しているため、マイクを使うためには(これは説明書に記載の通り)ドングルのボタンをダブルクリックして通話機能モードに切り替える必要がある(このとき、ドングルのLEDは青色の点滅(1.5s間隔)となる)。
また、ドングルとしてはaptX Voiceにも対応しているため(これも説明書には記載されている)、イヤホン側も対応しているのであれば、質の良い音声入力になることが期待できる。

なお、LE Audioモードでも同様の通話機能モードが用意されている。
ただし、自分のところでCear pavéで試してみたところではマイク入力することはできなかったため、実動作については未確認*5。

距離の問題などで切断した後、再接続されない

イヤホン等のデバイス(SNK)と切断された際、再接続待機状態(LED青色点滅(0.5s))になる場合があり、このときには(通信圏内に戻っても)うまく再接続されないことがある模様。
この場合、ドングルのボタンを1回クリックすると、通常の待機状態(LED青色点滅(2s))に切り替わるので、通信圏内なら再接続される模様。

最初普通に使えていたのに途中からホワイトノイズが入り続けて使えなくなる

自分の場合はPC側のUSBハブとの相性だったらしく、違う端子に変えたら現象が発生しなくなった。
汎用的な解決方法があるのかは不明。

LE Audioの「Low latency gaming mode」ってなに?

操作説明書の「4.LE AUDIO Bluetooth a.コーデックの切り替え:ボタンをクリック」のところで、

Low latency gaming mode: White

なるものがあるが、これはどういうものなのか。

確証はないが、同じチップセットを使っていると思しきCreative BT-W6に搭載されているGaming Audio Profile(GMAP)と同じものではないかと推測できる。

Gaming Audio Profile(GMAP)は、Bluetoothデバイスがゲームオーディオをうまく処理できるようにするための特別な命令のセットです。LEオーディオモードのGMAP対応デバイスで低遅延を実現するには、この設定をオンにしてください。

LE Audio対応のデバイス(SNK)なのにLE Audioが使えない

操作説明書の「注意事項(正式に使用する前に必ずお読みください)」に

2.現在、LE AUDIOの世界的な標準は完全に普及しておらず、本製品は現在、 クアルコムチップ方案のLE AUDIOのみをサポートしているが、他の方案のLE AUDIO はしばらくサポートしておらず、他のブランド標準のLE AUDIO受信側と接続する と、ミスマッチの問題がある可能性がある。

とあり、少なくとも現状では、デバイス(SNK)側もQualcommのチップセットでないとLE Audioは利用できないくらいに考えておいたほうがよさそう*6。

なお、このあたりの事情は、Creative BT-W6でも同様らしい。

LE AudioモードでCear pavéには繋げる?

ユニークなポータブルスピーカーであるCear pavé 2nd Generation(CP-4000)は、CearLINK(Auracastをベースにしたシーイヤー株式会社の独自技術)により、複数台と同時に通信することでCear Fieldという仮想音源を作りだすことができるが、そのためにはCearLINK専用トランスミッターであるCear coreが必要。
ただし2024/12/14現在、CearLINKは一般販売はされていない*7。

Cear pavéはQualcomm Snapdragon Soundに対応しているため、aptX LosslessをはじめとするAK3040Pro MAXで設定可能な各種コーデックをサポートしている。
また、LE Audio(LC3)も対応しており、チップセットが同じQualcomm製であるためか、AK3040Pro MAXとの相性も問題なく、接続可能。また、CearLINKはAuracastの拡張であるため、AK3040Pro MAXからのAuracastによるブロードキャスト機能にも対応できる。

自分はCear pavéを1台しか所持していないため、LE Audio/Auracastは単体での動作しか確認していないが、こちらの記事(「シーイヤーパヴェ Cear pavéのAuracast複数台接続機器や方法について」)では2台接続できた事例が紹介されている。

AK3040Pro MAXでは素のAuracast(ブロードキャスト)となるため、複数台に同じ音声データが送信されることになるが、専用アプリ(Cear pavé App)のCear Link Positionにて各スピーカーそれぞれに位置取りを設定しておけばサラウンドのような音場を構成できそうではある。

なお、上に記したように自分のところではCear pavéのマイク入力はうまく使えていない。
どなたかマイク入力がうまく利用できている方は方法や確認すべきポイントをご教示願いたい。


*1:なおCreative BT-W6においても、Denon PerL Proを名指しで、空間オーディオを無効にする旨のFAQがある

*2:サンプルレートを96000Hzにしていると、aptX Adaptive HQ 96Kでの接続となり、aptX Losslessモードにはならない・これはCreative BT-W6でも同様のようなので、aptX Losslessの仕様(チップセットの制限?)な模様

*3:Auracast(ブロードキャスト)での複数動作については、対応するデバイスを複数所持していないため未確認

*4:イヤホン3台(Denon PerL Pro・OpenRock Pro・Hamcoc T06)+スピーカー1台(Cear pavé)・ただしCear pavéはClassicとLE Audioそれぞれのモードでペアリングしたため、2台分としている

*5:Cear pavéの場合はClassic Bluetoothでもダメだったので、自分の設定が誤っている可能性もある・なお、USB Audio ModeはVOICE CHATに切り替えても試してはいる

*6:実はQualcommさんはあまりLE Audioに対して積極的じゃないのか?……などと考えてしまうのは、下衆の勘繰りかな……

*7:現在販売されたのは2023〜2024年のクラウドファンディングと、2024年の仮予約経由で申し込まれたもののみで、仮予約も終了している