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患者さんが「死んだネズミの臭い」を訴えてきたら

2013/11/22

 (お断り:今回のブログは、汚いものが苦手な方、つわりの最中の方などは、読まない方がよいかもしれません……。)

 「胸が苦しいと言いながら握り拳を作っているときは心臓を疑え」、「胸が燃えるようだと言っているときは胃炎を疑え」など、NPNurse Practitioner)の学校では多くの時間をかけて、患者さんの言葉から的確な診断を進めるすべを教わる。これは医学校でも同じだろうが、非常に重要なスキルの一つだ。

 NP教授たちが伝授してくれた、「患者さんが、クモを見ていないのにクモにかまれたと訴えたときは、MRSAによる蜂窩織炎(ほうかしきえん/cellulitis)であることが多い」というルールは、教科書には載っていないが、何度となく役に立った。皮膚の破れた部分がクモにかまれた跡のように見えるらしい。 そのため、「クモ」の訴えがあれば、普通の蜂窩織炎に処方する抗生物質ではなく、MRSAにも効くものを処方する。

 ちなみに、私が学生だった頃と違って、ここ数年、MRSAは非常に増えている。特にここニューヨークでは、蜂窩織炎の原因はかなりの割合でMRSAなので、MRSAにも効くスルファメトキサゾール・トリメトプリム配合薬などを処方することが非常に多い。

 婦人科の授業では、NP教授に「患者さんが『死んだネズミの臭い』を訴えてきたとき」のルールについて教わった。そのときは「そんなばかな! 一体誰が“死んだネズミ”なんて口にするものか!」と思ったが、いやはや、この教授は正しかったことが後になって証明された。

 さて、「死んだネズミの臭い」が何を指すのか、お分かりだろうか?

著者プロフィール

緒方さやか(婦人科・成人科NP)●おがた さやか氏。親の転勤で米国東海岸で育つ。2006年米国イェール大学看護大学院婦人科・成人科ナースプラクティショナー学科卒。現在、カリフォルニア州にある病院の内分泌科で糖尿病の外来診察を行っている。

連載の紹介

緒方さやかの「米国NPの診察日記」
日本でも、ナースプラクティショナー(NP)導入に関する議論が始まった。NPとは何か?その仕事内容は?米国で現役NPとして働く緒方氏が、日常診療のエピソードなどを交えながら、NPの本当の姿を紹介します。

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