わたしが子供の頃は、漫画家さんという存在は雲の上にいる未知の存在でした。
いえ、現在でも雲の上の存在ではあるのですが、当時は漫画家さん自身の言葉は雑誌の欄外や目次のコメント・単行本の折り返しやおまけページくらいでしか目にすることがなく漫画家さんの本音や日常といったものは殆ど知る機会がありませんでした。
現在はブログやツイッターなどで自分自身の言葉を発信している漫画家さんが増えて、様々な本音を聞くことが出来るようになりました。直接コメントやリプライでメッセージを送ったり、時には返信をもらえることもあり古いタイプの人間の自分は現在でも「すごい時代になったなあ」としみじみ思っています。
ただ、ツイッターなどでは基本的に誰でも直接言葉を投げかけることができるがゆえに漫画家さんがその言葉をうけて戸惑いや怒りをあらわにしているケースも見受けられます。あきらかに悪意がある人は論外として、割と多いのが
「○○先生のマンガ、古本屋で買って読みました!」
…といったもの。
古本屋で…とはっきり言われても、漫画家さんにはその時点でまったく利益として還元されないわけで。かといって悪気はない言葉なので対応に困る…という雰囲気のツイートを何度か見かけたことがあります。
「古本で買っても作者に還元されないので新刊で買ってね、たとえ古本屋で買ったとしてもそれをわざわざ作家に言わないでね」
といった内容の作家さんの嘆きがタイムラインに回ってくることも何度かありました。もっと厳しい言葉ではっきりと言う作家さんも勿論います。
中には「古本でも立ち読みでも読んでもらえただけでありがたい」と表明される作家さんもいらっしゃいますが、基本的には新刊の売上は連載の存続にも直結していくわけで単なる利益以上に新刊本購入で作品及び作家を応援するという行動には大きな意味があるといえます。
しかし「古本屋で買う」以前に「古本屋に売る」人が必ず存在しているにもかかわらず「古本屋に売らないでね!」と呼びかける人は見たことが無い、とふと気づきました。
単に自分の観測範囲内で見かけなかっただけかもしれませんが…。
もちろん「古本屋は一切利用するな」とは正直言えない、と思います。自分も利用はします、実際のところ。(ここ数年、新品が手に入るものを古本屋で購入することはなくなりましたが)
なんだかんだ言って、金銭の問題、置き場の問題、新刊書店や書店流通が持っているシステムの問題…そういったさまざまなものを解消してくれる良い部分がたくさんあると思うので。
正直なところ、「新刊を買って作家を、作品を支えたい」という認識はごく一部の漫画クラスタと呼ばれるような人たちにしか浸透していないのが実情ではないかと思います。
そしてその意識は「新刊で漫画を買っている人」にも実はあまりないのでは…と思う出来事が昔ありました。
もう数年前のことなのですが、とある長期連載コミックの新刊を購入されたお客様に対して連れの方が
「お前、よくそんなに集められるね」
と話しかけました。
その時のお客様の言葉にショックを受けたのです。
「だって俺、読み終わったらすぐ売っちゃうもん」、と。
当時の自分には無い発想だったのです。当然、新古書店に新刊が並ぶという現実がある以上はそういった考え方の人は少なからずいるということになるのでしょうが。
新刊で購入しているのだから漫画家さんにも出版社にも書店にも利益が生まれて何も文句を言えることではないのです、が、これで「古本屋で買う方」だけが責められるのは何かしっくりこないな…と考えてしまいました。
勿論、漫画家さんに対して「読んだけど売りました!」と話しかける人はまずいないと思う(思いたい…)ので話題になることもないのですが…。
でも”新刊を新品で買う人”にこういった認識の人が多かれ少なかれいる以上、”新品で買うことで漫画家さんを支える”という意識が浸透しているわけがないなあ、と最近のツイッターでのやりとりを見かけては当時受けたショックを思い出してしまったのでした。
そう考えると、電子書籍で新刊が配信されるのであれば逆に「読むだけでいい」人がそちらへ流れ、「紙の本で欲しい」人が新品を買い求める…となるのではないか?という発想に至るのですが…甘いかな。甘いかも。
…言うまでもなく、「新古書店に売るために売れ筋や新刊を万引きするゴミ野郎」が消えてくれれば問題はかなり減るんですけどね…!
ふと、「古本屋で買いました!」って漫画家さんに話しかけてる人の本が万引きされて売られた本だったら…って考えたらゾッとしました。怖い怖い!
コメント
コメント一覧 (5)
古本屋があるおかげで新刊が買われる、というところもぜひ考慮していただきたいですね。
業界共通のバーコードとかオンラインのシステムとかお金は掛かったとしても技術的には難しくないんじゃないかな。
小さい古本屋は無理だろうが、ブックオフなどの大型チェーンなどなど。
ただ、出版そのものが斜陽になってきてる現状では経済的にも無理だろうけど。
俺だったら気になるシリーズは買うけどつまらなかったら売るよ。面白かった巻だけ残してる。
読んでつまらなかったらその時点でその巻は「いらないもの」だから、少しでも金になった方がいいっしょ。
その少しの金に手持ちを足して、次の本を買うよ。
古本屋がなかったら?本誌だけにするかもな。読み飛ばした回はもういいやってなるかも。
書店員の方だと本は大事な商売道具だろうしクラスタの人には宝物か芸術品なのかもしれんけど、俺みたいな消費者にとってはたぶん嗜好品で消耗品だよ。完クリしたゲーム売るのと一緒。
新刊で出た時に読みたいと思ったから買ってるわけで、買った後どうするかは消費者の自由じゃないか。
ま、もし漫画家と会う事があっても「読んだけど売りました!」と話しかけるような礼儀知らずなことはしないけどねw
「いつも買ってます」くらいかな。
ここで言うのはちょっとおかしいかもだけど。
関連して。レンタルコミックというものも広まっていますが、あれはどういう仕組みなんでしょうねー??
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