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『ガンダム』連邦がジオンに「物量で勝っていた」←本当? 答えはどこに

『機動戦士ガンダム』の地球連邦軍は、「ジオン軍を物量で圧倒した」といわれています。しかし、ジオンのザクが8000機以上生産されたのに対し、連邦のジムは3800機程度。本当に物量で圧倒していたのでしょうか。

連邦軍、ジオンとそこまで物量の差があったか?

ジオン軍の「顔」だったザクII 画像は「HG 1/144 ザクII」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
ジオン軍の「顔」だったザクII 画像は「HG 1/144 ザクII」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

『機動戦士ガンダム』の一年戦争は、開戦当初はモビルスーツ(以下MS)を装備したジオン軍が連邦軍を圧倒したものの、地球侵攻作戦で膠着(こうちゃく)状態となり、国力が30倍ある連邦軍が物量でジオンを逆転し、勝利したといわれています。

 ただ、開戦時のジオン軍勝利を支えたMS「ザク」の生産数は「ザクI」や派生機を含むと、8000機以上(4000機説もあります)といわれています。ジオン軍はこの他にも「ゲルググ」738機(派生機含む)、「グフ」200機以上など、多数のMSを生産しています。「ドム」系は分かりませんが、改良型の「ドワッジ」が88機生産されているのですから、これも数百機は製造されているでしょう。さらに「ズゴック」などの水陸両用MSも量産されています。

 ジオン軍の機動中隊は「MS3機、ドップ8機、ガウ攻撃空母1機」とのことなので、「ドップ」や「ガトル」、「マゼラ・アタック」といった兵器もMS以上に生産しているかもしれません。さらに、「ビグロ」14機、「グラブロ」4機、「エルメス」3機など、強力なモビルアーマーや各種艦艇もこれ以外に生産しているわけです。

 これに対し、連邦軍の主力MS「ジム」は派生機を含むと3800機程度です。派生機を含む数字なので、「ジムコマンド」や、「ジムスナイパーカスタム」のような機体も含め、3800機ということです。これに加えて、「ガンダム」などの試作機が少数あるということなのでしょう。

 後発作品の機体を考えても、ガンダム、「ガンキャノン」、「ガンタンク」などの試作機全てで、せいぜい100~200機といったところでしょうし、MSに匹敵する「コア・ブースター」も16機生産で6機実戦参加ということなので、これも大量生産はされていないようです。

「本当は『ジム』がもっと生産されている」ということもなさそうです。『機動戦士ガンダム0083』を見ると、地球連邦軍は宇宙世紀0083年に「ザクII」を連邦軍仕様として採用、配備しています。一年戦争中に生産されたジムが十分にあるなら、敵軍の旧式MSを採用する必要はありませんから「ザクは余るほどあったけど、ジムは十分な数が存在しなかったので、ザクを採用した」と推察できるわけです。だから、ザク8000機、ジム3800機という数字は一定の説得力があります。

「ボール」の生産数は不明ですが、ジム系の倍作っていたとしても、7600機でザク以下です。同時に生産できる数量では連邦が勝っているのでしょうが、これではどう見ても、MSだけで1万機を軽く超えていそうなジオン軍を圧倒できる物量とは思えません。

 しかし、劇中ではジオン軍は連邦軍の物量に押されている様子が描かれています。「ソーラ・レイ」で艦隊の30%が消滅してもなお、「ア・バオア・クー戦」でジオン軍が物量で勝る描写は見られません。これはどう解釈すればいいのでしょうか。

 筆者は「連邦軍の教育型コンピューター」と「ジオン軍の統合整備計画」を結びつけることで、答えが出るように感じています。地球連邦軍のMSには教育型コンピューターが搭載されており、「アムロ・レイ」など優れたパイロットの操縦データが、量産型MSの戦闘能力を底上げしています。この戦闘データには「対戦経験のあるジオン軍MS」への対処方法が含まれていると考えられます。

 つまり、「ジオン軍MSの行動パターンが、連邦軍の教育型コンピューターに予測されることで、見逃せないほどに戦力が低下した」のではないでしょうか。ジオン軍もコンピューターのアップデートで対抗するでしょうけど、戦闘プログラムを入れ替え、機体側も対応するため、保有する機体を改修し、入れ替えながら、戦うしかなくなっていたということです。

 また、ジオン軍が一年戦争末期に行った「統合整備計画」の前提も、「同時に兵力を展開できなかった」理由と考えます。これはジオン軍MSの「メーカーごとに異なる部品」「装備」「操縦系の規格・生産ライン」を統一した機種に生産ラインを変更する計画です。

 裏を返せば、それまで「ジオン軍のMSは機体ごとに操縦系統が異なり、パイロットが新型機種に対応するための再訓練に時間がかかった」ということになります。

 これが「学徒動員兵を新鋭機・ゲルググを乗せる」という描写につながっているのでしょう。ゲルググの操縦系統が、各主力MSと異なるため、熟練パイロットを再訓練して前線から下げるより、予備知識のない新兵に渡した方が、総合的な戦力が大きくなる、という意味です。こうした理由で、政治色の強いエース部隊「キマイラ」や、ニュータイプで物事の理解が速い「シャア・アズナブル」など、一部の例外以外は、ゲルググ向けの再訓練をしなかったと考えられるわけです。

 つまり「ジオン軍は、生産力はともかく、連邦に劣らない数量を持ってはいたが、数量を戦場に出せる環境整備の面で、連邦に劣っていた。かなりの数量とそれに対応したパイロット自体は存在したから、それが後のアクシズ/ネオ・ジオンにつながるような、相応の規模の軍隊が編成できるだけの人員となった」ということなのではないでしょうか。

(安藤昌季)

【画像】くっ、量産できてれば! コチラが「ビグ・ザム」と後継機になり損ねた機体です(4枚)

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