声優ファンとVTuberファンはどう違う? 「中の人」が語る、「壊れていく」理由【この業界の片隅で】
VTuberは、確固たる表現ジャンルとして、日本国内ではすっかり根付いた感があります。また、人気声優がVTuberを含めた配信活動に挑戦する事例も増えています。そもそも、両者のファンはどのように違っているのでしょうか? 実際に配信活動を行う声優の見解をもとに、アニメ業界の片隅で生きる著者・おふとん犬が解説します。
憧れを超える義務感が熱狂的な支持を生む
物心ついた頃からインターネット文化に親しんできたデジタルネイティブ世代であれば、VTuberの魅力については、比較的すんなり理解できるようです。私のように「大事なお金をクリックひとつでポンポン投げ銭しなくても」なんて言ってしまうのは、良い言葉ではありませんが、いわゆる老害仕草というやつなのでしょう。
いまひとつ理解できないことがあれば、当事者に直接教えてもらうのが一番です。
表向きにはしていませんが、VTuberの「中の人」として長く活動している人気声優に、個人的に取材させてもらったことがあります。声優としての演技の評価が高いだけでなく、いわゆる「顔出し」でのファンもかなり持っている方です。
まず尋ねたかったのが、声優ファンとVTuberファンの両者に、目立った違いはあるのかということです。あるとすれば、どの辺りに差があるのでしょうか。
「違いはあると思います」というのが答えでした。声優として活動する場合、ファンはアニメやゲームという一段高い舞台で活躍するタレントとして、憧れのまなざしで見てくれている。あるいは、舞台からファンの目線まで降りてきて気さくに振る舞うことを喜んでくれている、という感覚があるそうです。
一方でVTuberの場合は、タレントとファンという関係性とは少し違う、友人や仲間同士で行うサークル活動に近い感覚のようです。舞台上にいる憧れの存在を仰ぎ見るのではなく、目線は最初から同じ高さ。それゆえに、活動を深めれば深めるほど、友人や仲間以上の家族に近い状態まで親近感が増していくこともあります。
客観的な見え方はどうあれ、人気VTuberとファンとは、精神的には家族同様の関係性を築いています。だからこそ、ちゅうちょなく投げ銭をすることだってできるのです。「大切な家族のためにポンポンお金を払うなんて」と眉をひそめる人がいれば、確かにそれは、眉をひそめる方がおかしいでしょう。
投げ銭というのは、購買でもなくお布施でもなく夜のお仕事のチップでもなく、「家族を支えなきゃ」という義務感あるいは使命感からの仕送りに近いのです。だからこそ、配信中は受け取ったことを軽く流してしまったとしても、感謝の気持ちだけは忘れてはいけない……当事者がそんなふうに語るのは、とても印象的でした。