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大学制度 その1


ノルウェーの大学の制度は日本とはいくつか違う点があっておもしろいので、書いてみたい。
まず入学制度。(基本的に国公立大学について書いています。ノルウェーでは私立大学に行く人は稀。)

ノルウェーでは大学に行きたい人は、申請用紙に志望校学部学科を10個選ぶことが出来、
上から順々に受かったかどうかが通知される。
基本的に入試はなく、高校での成績や他の活動を点数化して、学部学科に応じてその配分が変化させられる。
そしておもしろいのは、25歳以上の人はそれだけで、いくつかポイントがもらえる。これは一度社会人として社会に出た人に教育を受けたい時に受ける機会を与え、また生涯教育を重要視するという政策からきているようだ。そして、入学を勝ち取っても、何年間か保留にしておいて、
後にはじめる人も多いようだ。特に男子は義務である1年間の兵役を、高校卒業後そして大学で勉強を始める前にする人が多いので、保留にする人は特に多いようだ。
なんとなく自由な感じのするノルウェーの入試制度だが、基本的には日本と同じように大学に入学するのは(もちろん学部学科によるが)難しく、そしてまた出るのも難しいようだ。

そして特記すべきはやはり授業料と奨学金システムである。
授業料はほぼタダである。外人も全員全てである。
正確には1学期400kr(約7000円)くらいを、なんとか代として私も支払ったと記憶しているが、
それでもほぼタダである。
これらは税金によってまかなわれている。
そして学生は奨学金として、年80、000kr(約140万円)国から支払われる。
これは上限8年まで支払われ、学業が終了後、40%を長年掛けて返済してゆく。
もちろんこの制度も税金によって下支えされている。
福祉国家たる由縁である。
このような制度が存在するため、学生で親に養ってもらっている人はまずいないし、
親もそんな気はいっさいない。子が大学生で親が住むのと同じ街の学校に通っていても、
同居しているひとは少ない。みんな学生寮か、アパートをシェアして借りている。
なお80、000krは1年最低限の生活をしてゆける額である。

わたしの場合はノルウェー人でないので、この奨学金はもらえない。
外人でもノルウェー人と結婚するともらえるらしいが、そこまでする必要は今の私にはない。
私のクラスの発展途上国からのメンバーはノルウェーの発展途上国支援のもと、
この奨学金がもらえ、そしてきちんと学業を終了し、自国に帰国し就職した際は
このお金をいっさい返還しないでいいシステムとなっている。(Quota Programmeという)
このようなシステムは他のいくつかのヨーロッパの国や、日本にもあるようだ。
そして発展途上国のエリート達にとっては、至極有名な事実のようだ。
(私はここに来るまでほとんど知らなかったけど。)

もしかしたら、興味がある人がいるかもしれないので、私が大学院に入ったときのことを書いてみたい。私のコースは授業が英語で行われるinternational courseで、主に前述の奨学金とセットで発展途上国からの生徒を受け入れるコースだ。
わたしの所属するUrban Ecological Planningというコースの場合、Quota Programmeで受け入れる生徒の枠が5人、その他の枠が2人のようだ。Quota Programme については、もちろん倍率が高く5倍くらいだったようだ。その他の枠は、私とチベットーノルウェー間の特別の制度でやってきているチベット人の生徒の二人しか申し込んでいなかったのでは、とにらんでいる。
選考には英語の能力と、大学での学士の学位の分野と成績、そして入試のために書き下ろすエッセイが判断材料となる。

英語の能力はTOFLEでいうところの500点(CBT170点)なので、大して難しくない。
これは通過すべき最低ラインで、これ以上何点もっていようと入試には影響しない。
学士の分野は、建築・都市計画・土木の分野が優先され、そうでない工学の分野を学んだ人は
、2〜3年の前述分野での実務経験によって、応募資格となる。
大学の成績はもちろん良い方がよく、私の場合は幸い琉球大学での成績が良かったので、
これは有り難かった。
そして、エッセイはなぜNTNUのこの学部で学びたいのか。他の国のもしくは他大学の他学科でなく、なぜここなのかという志望動機を書くものだ。その場で書けといわれるものではないし、辞書片手に行ってよいものだったので、私の場合もまあなんとかなったというところだろうか。
以上を選任教授と office of international relation(全ての留学関係はここを通す)
の責任者の双方の意見を尊重して、合否結果を出すというもの。
Quota Programme希望者の応募閉め切りは前年の12月頃にもかかわらず、わたしがこのコースの存在を知り、応募手続きをしたのが、翌年5月。合否検討時期が6月であったため、私もコースに合格させてもらえた。そういったフレキシブルで学びたい人に学ぶ場を与える
ノルウェーのやり方、そして、それに関しても情報を出し惜しまない姿勢に感銘を受けた。

このコースはフィールドトリップ等があるため2年に一度の開講であるのも私が入学を急いだ理由であった。

成績評価制度については、また今度。
by motokologic | 2006-06-03 05:17 | About Norway
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