「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
「各温泉地の居心地」を測る際の「統一基準」を設定
車中泊・旅行・温泉の3つの観点から、5つの独自の基準を設定した。
これらを温泉地に当てはめ、○△☓で評価すると、客観的な「居心地度」が浮かび上がってくる。目的はあくまでも「居心地度」を可視化することで、「ランク付け」ではないため、あえて大まかにしてある。
1.車中泊好適地度
温泉めぐりの途中で食事や昼寝をしながら時間を過ごすには、こういった環境があるとありがたい。
ただ混雑している駐車場で、白昼堂々と長時間駐車をするような迷惑行為は論外だ。
写真は城崎温泉街から4キロほど離れた「気比の浜海水浴場」。
海岸はキャンプ場として整備されており、水洗トイレと炊事棟がある。しかも海水浴シーズン以外は無料で利用することができる。
2.滞在好適度
本格的な湯治でも、最初の入浴に妥当とされる時間はせいぜい10分ほど。
つまり車中泊で訪れても、食事や観光をするか、何かスポーツでもしないかぎりは、時間を持て余すことになる。
世界遺産の「那智大社」に近い南紀勝浦温泉は、日本有数のマグロ水揚基地としても有名だが、ここでは一度も冷凍していない「生」のマグロを、驚くほどの値段で食べられる。
3.湯めぐりサービス度
食事や公共交通機関の制約を受けない車中泊の旅人は、多くの温泉施設に足を運べる時間の余裕を有している。
それだけに「湯めぐり手形」あるいは「温泉手形」といった割引制度は、日帰り客以上にありがたいサービスになる。
個性的な温泉が多い栃木県の塩原温泉郷には、塩原温泉郷用と、隣接する那須高原を含めた2種類の温泉手形が用意されている。
4.温泉情緒度
温泉地の中には、大規模な旅館やホテルの中に歓楽要素が集約され、温泉街が消滅していたり、元々存在しないところがある。
だが、温泉とともに郷土料理や地酒を味わいたい車中泊の旅人は、けして少なくないはずだ。
道後温泉のメインストリートは、本館から駅前に続く「はいから通り」。アーケードになっているため雨天でもゆっくり土産物を見てまわれる。
5.名湯・秘湯度
同じ温泉に行くのなら、名を馳せたところから訪ねてみたいのが人情というものだ。ブログなどのウェブサイトを持つ温泉マニアほど、その思いは強かろう。
この温泉には、平安時代に後白河法皇が熊野詣での往来時に、また江戸時代には徳川吉宗公も訪れたという記録が残る。