そのアイテムは本当にレア?オンラインゲームにおける真の希少性とは...
オンラインゲームでレアなアイテムはプレイヤーの誰もが欲がるものだが、本当に希少なアイテムなのかを考えてみると興味深い

「レア」と書いてあるから希少なわけではない
装備に「レア」や「レジェンダリー」のように書かれていても、周囲の多数のプレイヤーが同じものを所有しているなら本当に希少な物だとは言い難い。
オンラインゲームにおけるレアやスーパーレア等の表記は、希少性を表しているというより等級やグレードを示しているだけの事が多い。
このパターンでは、「希少な装備を手に入れた」のではなく、「強い装備を手に入れた」と表現する方が正しい。
【希少】・・・少なくて珍しいこと。きわめてまれで少ないこと。
金やプラチナが希少なのは埋蔵量が限られているからだ。
無尽蔵に手に入るのであれば希少性は無くなる。
オンラインゲームでアイテムの希少性を確かめる上で重要になってくるのは「潜在的な入手可能性(potential availability)」である。つまり、そのアイテムはどれくらい供給されているのか、入手しようと思えば容易く入手可能なのかどうかである。
“潜在的に”誰もが入手可能なら希少価値は下がる
NPCが安価で売っているアイテムは当然誰でも入手可能で希少価値は全くない。
では、高難易度のコンテンツをクリアしたら「必ず」入手できるアイテムや装備の価値はどうなのだろうか。
一見、『難しいコンテンツをクリアする』というハードルを乗り越える必要があるので、そこで得られる報酬は希少性が高いようにも感じられるが、倒せば必ず入手できてしまうのであれば希少性はそれほど高くないと言える。
なぜなら、クリア者が増えればその分だけサーバーにレアアイテムが存在する数が上限なく増えていくからだ。最初に攻略を成功させる人達の苦労は多大だが、攻略法を知った上でその後に続くプレイヤーの難易度はそれほど高いわけではない。
さらに、自分自身が高難易度のコンテンツを突破できなくても、誰かが代わりにプレイしてクリアしてしまえばそのアイテムは入手できてしまう。入手法に関して代替手段が存在していると、やはりアイテムの希少性も下がる。
また、直接ドロップしなくとも、何回もクリアするとトークンがたまって交換できるといった仕組みも希少性を下げる。
このような「潜在的な」入手可能性がオンラインゲームにおけるアイテムや装備等の希少価値を決める最大の要因となる。
正真正銘レアなアイテムは、他の誰かが代わり手に入れてあげようとは到底思わない程、入手が困難であることがほとんどだ。
「ガチャ」の景品における希少性は特殊
ガチャ課金のような「くじ」を利用して得られるレアアイテムの希少性は特殊である。
排出確率が低く、それまでサーバー上にわずかな数しか存在していないとしても、際限なくガチャを回すことができる潤沢な資金を持つ人が登場すれば、その激レアアイテムの潜在的な入手可能性は高くなり、その人にとっての希少性は下がると考えられる。
ガチャを回すにはお金を投入するだけで労力はほぼ必要としないため、極論を言えば、無限にガチャに課金することで無限にレアアイテムを入手できることになり、サーバー上のレアアイテムの供給数が一気に増加するからである。
(1日に最大n回しかガチャを回せないというような制限があるなら話は変わってくる。)
一方で、課金できる金額に限界がある平均的なプレイヤーから見れば、そのようなレアアイテムの入手は困難であり、希少価値が高いと感じることになるだろう。
モバイルゲーム等のガチャ課金で得られる激レアアイテムは基本的には希少だが、いくらでも課金できる人の前ではその希少価値を維持するのは難しい。
モバイルゲームでは、一段高いレアリティのアイテムがアップデート等で登場し、以前は希少性が高かった物の価値が急に下がるという現象もありがちだ。そこは割り切るしかないのだろう。
オンラインRPGで正真正銘「希少性のあるレアアイテム」とは
装備のツールチップに書かれた「レア」の文字や、コンテンツの難易度に惑わされることのない、誰から見ても希少性が高いアイテムの条件。
1. アイテムをドロップするモンスター自体が希少であり、なおかつドロップレートが低い
当該アイテムがドロップするモンスターがフィールドに1匹しかおらず、そのモンスターの再出現までの間隔が長く、さらにそのモンスターを倒した際の戦利品獲得権限が単一のパーティにしか与えられず、ドロップレートも低い物。
レアモンスターの取り合いに勝ち、なおかつ運が良くなければ入手できないのであれば、そのアイテムの希少性は非常に高い。
この場合、リスポーンも頻繁ではないため、討伐の回数も当然少なくなる。そこから低いドロップレートに挑む必要があるため、当該の超レアアイテムがサーバーに存在する数が増えるまでにかなりの時間を要する。
2. 少数のプレイヤーしか獲得条件を満たせない
ランキング上位者や大会の優勝者等、レアアイテムの獲得条件を満たせるプレイヤーがわずかしかいない場合、そのレアアイテムの希少性は高いと言える。
その大会が滅多に開催されることがない場合、さらに大会限定の報酬の希少性は高くなる。
潜在的な入手可能性がほとんど0に近い条件となる。
3. ドロップレートや出現確率が恐ろしく低い
あまり推奨されないが、そのアイテムが存在する事をプレイヤーが気付かずに都市伝説化してしまうほど、ドロップレートや出現確率を低く設定しておくことで希少性を上げることができる。
ガチャやルートボックスのようなくじびき要素があるものもここに含まれる。
当然ながらそれ以上に簡単な代替の入手方法があってはならない。
4. 当該アイテムの入手に莫大な時間と労力を要する
数ヶ月あるいは1年以上という長い時間と、尋常ならざる努力を積み重ねて入手に至るようなアイテムは、サーバー上にある程度存在したとしても希少価値が高い。
年代物のワインが高価であるのと同じで、「時間」には価値がある。
ただし、これには他の要素とのバランスが必要不可欠で、時間をかけた分の能力を当該アイテムに与えなければならないという開発上の難しさがある。
中途半端な時間のかかり方では多くのプレイヤーが獲得してしまうため希少価値が生まれないので、コンテンツとしては極端なものになってしまう可能性がある。
先述した「代わりにクリアして入手」は、時間や労力を短縮させてしまうものであり、希少性を損なわせる。
したがって、高難易度コンテンツのクリアに時間をかけるという意味ではなく、コツコツ毎日積み上げていくタイプの入手法がこれに該当する。
5. ランダムで付与されているステータスが優れている
装備そのものの希少性ではなく、装備にランダムで付与されているステータスによって希少価値が出るものもある。
攻撃力や防御力等のメインのステータスとは別に、装備の入手時にランダムで付与されるボーナス特性で、この組み合わせが優れていると、レア装備がさらにレアなものになるという仕組み。
最近ではそのボーナスを自由に変更できるというオンラインRPGもあったりするが、希少性を高く維持するためにはまずその装備が簡単には入手できないものであり、なおかつ一度決まったボーナス特性は変更できない仕様にする必要がある。
6. 獲得できる数の上限が設定されている
獲得できる個数が全体で決められていると、現実世界のレアメタルのように希少価値が高いものとなる。(ex. サーバーに◯個しか存在しない等)
おそらく最もシンプルに希少性を持たせることが可能な方法だが、先駆者が圧倒的に有利で後続のプレイヤーに優しくない。
これらの条件は無謀なようにも感じるが、過去のオンラインゲームには所有者がサーバーに0.01%しか存在しないレアアイテムというのは実際に存在した。先日、「EVE Online」でチャリティオークションに出された宇宙船は同ゲームの16年の歴史の中で5隻しか存在しないとされている正真正銘希少性の高いものであった。
誰もが入手できる公平性か、アイテムの希少価値か
レアアイテムの希少性を下げてでも、誰もが入手できる公平性を重視するか、それともレアアイテムという名に恥じない希少性を維持するか。近年の主流は誰もが入手可能な公平性重視
時代の変化と共に、2000年代後半あたりからは一握りのプレイヤーしか楽しめないものや恩恵を受けられないものは否定されるようになり、「プレイヤー全員が潜在的に入手可能である」という方針でレアアイテムは扱われるようになった。
ゲームにお金を払っているのに獲得できないものがあるのはおかしい、という意見が根強いからだ。
その入手難易度も徐々に易化していき、ある時期まではボスを倒しても必ずレア装備がドロップするわけではなかったのが、最近ではとりあえず倒すことに成功すれば強力な装備がドロップするというゲームも多い。
基本的にこの施策は成功した。モンスターを取り合う事によるトラブルも減り、仕事や学業で忙しい人でも1日1~2時間のログインでレア装備を揃えることができ、オンラインRPGはより多くの人が楽しめるジャンルに変化した。
一方で、レアアイテムが希少性を失った事で、装備やアイテムを手に入れた時の嬉しさが減ったという意見や、皆が同じような能力の装備をしていて個性がないという意見も耳にする。
また、自分自身が入手できなくても、非常に希少なアイテムがゲーム内に存在している事自体がオンラインゲームを楽しくする要素だという意見もある。
それでも、全てのプレイヤーが平等にコンテンツに参加して報酬を得られる方がプレイヤーの不満は生まれにくい。
先述した「希少性が高いアイテムの条件」はあまりにも手間がかかってしまうものばかりで、最近のゲーマーのライフスタイルには適さない可能性が高い。
やはり、希少性を落としても全てのプレイヤーが時間をかけすぎずにレアアイテムが手に入るゲームの方が好まれそうだ。
ただし、正真正銘希少なアイテムが存在するのなら、それはそれでオンラインゲームらしい面白さが生まれることもあるだろう。