公募/コンテスト/コンペ情報なら「Koubo」

あなたとよむ短歌 vol.57 テーマ詠「未来」結果発表 ~評や感想の受け取り方~(1/3)

タグ
川柳・俳句・短歌・詩
短歌
あなたとよむ短歌
投稿する
結果発表

テーマ詠で短歌を募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。

柴田 葵 1982年、神奈川県生まれ。元銀行員、現在はライター。「NHK短歌」や雑誌ダ・ヴィンチ「短歌ください」、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」への投稿を経て、育児クラスタ短歌サークル「いくらたん」、詩・俳句・短歌同人「Qai(クヮイ)」に参加。第6回現代短歌社賞候補。第2回石井僚一短歌賞次席「ぺらぺらなおでん」。第1回笹井宏之賞大賞「母の愛、僕のラブ」。
■作品
プリキュアになるならわたしはキュアおでん 熱いハートのキュアおでんだよ
(『母の愛、僕のラブ』より)
vol.57
テーマ詠「未来」結果発表
~評や感想の受け取り方 ~

短歌を読む・詠む連載、「あなたとよむ短歌」。
今回はテーマ詠「未来」の結果発表です。
おおよそ31音で構成される短歌は、過去・現在・未来の時間経過についてもさまざまな形で表現することが可能です。17音の俳句に取り組む人から、時間へのアプローチに短歌との違いを感じると聞いたことがあります。両方取り組まれている方、感覚的にいかがでしょうか?
他のテーマに比べて、少し抽象的な作品が多かった印象です。自分なりの「未来」に関するエピソードや、その風景を具体的にとらえて短歌にすると個性がだせるような気がします。

今回は、投稿者の方からよせられた質問もご紹介しています。ぜひ入賞作品とあわせてお読みください。

それでは、最優秀賞の発表です!
未来とは二十時間の陣痛の
後に出会えたあなたのことだ
(藻下いのりさん)

陣痛は(私も経験がありますが)いつ終わるかわからず、ただその時がくるのを待つしかなく、不安で、ひたすら押しよせる痛みに耐えつづける、そんな果てしない時間の経過です。その時間の先にある未来、そこに生まれてきたわが子そのものが未来である、という天啓のような一首。堂々と言い切った表現に力強さを感じます。



続いて、優秀賞2首です。

年末の旅行を手繰り寄せていく
SASUKEの最終ステージみたいに
(つちやよしふみさん)

TBSテレビの人気番組「SASUKE」。垂直な壁を駆け上がったり、棒にぶら下がって進んだり、待ち受ける困難を乗り越えて乗り越えて進んでいくスポーツ・エンタメ番組です。海外でも人気のようですね。
「年末に旅行があるんだ……!」という思いだけを胸に、師走の多忙な用事を一つ一つ片付けていく様子をSASUKEにたとえています。未来とは、ただ待っているだけではなくて、いろいろなものをよじ登ったり、飛び越えたり、やりすごしたりしながら獲得するものなのかもしれません。


定年の父がピアノを買ってきた
ドレミのうたも弾けないけれど
(りきながさん)

今はまだ「ドレミのうた」さえ弾けなくたって、練習すれば、未来のお父さんは弾けるようになるかもしれませんね。好きな曲、弾いてみたい曲があるのかもしれません。
お父さん自身は、そんな未来にわくわくしているのか、それとも退職したこれからの日々をどうすごそうか不安になってピアノを買ってきたのか、この一首からはわかりません。ピアノが続くかどうかもわかりません。けれども、すてきな未来になりそうな予感がします。



  1. 1
  2. 2
  3. 3