慶應義塾大学法学部 ゼミナール総合サイト

「現代国際政治のゼミというのは、いったい何を扱うのだろうか。」

「現代国際政治」という言葉を目にしたときに、おそらく多くの人はこのような疑問を抱くだろうと思いますが、今日の大国間政治をめぐる諸問題というイメージでとらえてもらえればと思います。例えば2023年度は、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、「『三つの世界』と国際秩序のゆくえ」というテーマでゼミを実施しています。春学期は、国際標準の国際政治学のテキストを輪読して、正確な基礎知識を身につけ、秋学期は台湾をめぐる米中軍事バランス、抑止と安心供与の理論と現実、グローバルサウスをめぐる国際関係などに関する最新の論文を取り上げています。ゼミ生が文献の要点を解説し、その内容を踏まえてゼミ生全員で考えて問いを立て、その問いに対する自分の考えをまとめ、ゼミで意見を持ち寄って議論し、講評・解説を聞く、というプロセスを繰り返します。この作業を通じて問うことを学び、学んだことを問うてもらいます。

というわけで、当ゼミでは、大国間政治の最先端のテーマを題材に、調査・研究に取り組んでもらいますが、その目的は、学問を楽しみながら、社会人に必要な問題解決能力を高めてもらうことにあります。国際政治の最前線を冷静に見ながら、1年間かけて皆さんと様々な「問い」について、議論しながらその答えを考えます。根拠のない単なる思い付きで議論するのではなく、様々な文献を読んで基礎知識と専門知識を身に付けながら、国際関係の構造とプロセス、そして文脈を見極める力を身につけ、「問いを立てる力」、「論理的に考える力」、「多角的・複眼的にものをみる力」、ひいては「試行錯誤しながら自分で答えを導く力」を養って欲しいと考えています。また、「第三者に分かってもらえるように話す力」なども身に着けてもらいます。

また、社会人になってからも活きるような、物事の原因や問題のありかを突き止めて、それに対処するために何をすべきかを判断し、行動を起こすのに必要な「実践する力」も身につけてもらえればと思います。私がかつて国家公務員として外務省で実務を手掛けていたこともあり、学問を通じて深く思考することはもちろん、実践も重視したいと考えています。こうした観点から、現実世界との接点を持つために、外交・防衛・報道など各種業界の実務家を招いて懇談会を開いたり、他大学との合同ゼミを開催して大型の外交シミュレーションを実施したり、状況が許せば、調査・考察の結果を海外の現場で確かめる海外自主調査旅行にも出かけ、学外で刺激を受けて視野を広げる機会も設ける予定です。社会人になるにあたって身につけるべき基本的なマナーや心がけなども日頃から指摘します。

2024年度のゼミで扱う全体テーマは、「ウクライナ、イスラエル、台湾をめぐる安全保障とアメリカ」とする予定ですが、最終的には2024年度のゼミ生と相談して決めます。春学期は安全保障に関する基礎概念を学び、秋学期はヨーロッパ、中東、アジアの安全保障に関する最新の論文を読みながら、専門的な知識を身に付けてもらいます。2024年1月には台湾総統選、11月にはアメリカ大統領選も行われますので、その結果が何を意味するのか問い、今後の安全保障や国際秩序にどのような影響が及びうるのかを考察してもらいます。国際政治の最前線について学んでもらいながら、古典と歴史を読んで旧くて新しい国際政治の問題が現在どのように顕れているのかを見抜いたり、理論を学んで複雑な事象の中に潜む本質的な問題とは何かを見極めたりする力を養ってもらいます。

 当研究会は2022年度に新設され、今回第3期生を募集しますが、ゼミの仲間たちと楽しみながら自分を鍛えたい、和気あいあいとしながらも真剣に学問に取り組みたいという意欲ある学生諸君を歓迎します。国際政治の専門知識は問いません。卒業する時に、「大学在学中に、その当時の最先端をいく国際政治のテーマについて学び、同世代の誰にも負けないほど調べて考えて議論した」と自負できるようになりたいと思う人に応募してもらいたいと思います。