景気が良くなるとタクシー使うという意味がわからない
2013年 05月 27日
景気が良くなったからタクシー使うとか、
景気が悪くなったからタクシー使わないとか、
そういう感覚がまったく意味不明なんです。
景気回復の兆しとしてタクシーの需要回復がよく持ち出される。
先日、日経新聞に「タクシー需要 底入れの兆し 東京6年ぶりプラス」という記事が出ていた。
2012年度の話だが、観光などで個人の利用が増え、
需要が回復している反面、
法人需要は盛り上がりに欠け、本格回復にはもう少し時間がかかりそうだ、という内容だ。
この記事のトーンからいえば、
景気が良くなると法人需要が回復するのだろうか?
景気が良くなると、仕事が忙しくなるから、
タクシーの利用頻度が増えるのかもしれないし、
接待が増えて、飲み会が増えて、
タクシーで帰ることが増えるからなのかもしれないし、
単に景気が良いからという気分から、
タクシーを安易に使う人が増えてしまうからなのかもしれない。
でもそれって、今の日本経済の足を引っ張っている元凶であり、
未だに過去の日本の高度成長モデルにしがみついている、
「老害」世代の悪しき風習なんじゃないか。
景気に浮かれてタクシー利用増やすから、
後で不景気になった時に困ったことになるんじゃないか。
その貴重なお金をもっと前向きな投資に使えばいいのに。
アベノミクスでまたしても2008年金融危機前の、
世界同時バブル、円安バブルの状況を思い起こすわけだけど、
今のように株高で浮かれまくっていた2006~2007年の頃。
私が勤めていた会社は金融関係の仕事が多く、
仕事が増えて、にわかバブルにわいていた。
社内での飲み会も結構頻繁に行われていたのだが、
そこで不思議なことがあった。
毎回、みな電車を使わずタクシーで帰るのだ。
確かにその当時は今のアベノミクスと同様に、
世間では浮かれたムードがあったし、
実際に仕事も増えていた。
でも少ない人数の会社とはいえ、
みんなが飲み会の帰りにタクシー使ったら、
それだけで10万~20万円の金がふっとんじゃう。
社内の飲み会なんだし、別に終電で帰ればいいのに、
と思いながらも、一度、タクシーの快適さに慣れてしまうと、
電車で帰るの面倒だなと思ってしまう。
ましてや私の場合、タクシーで帰ると、
ちょうどこの頃、頻繁に撮影していた、
京浜工業地帯の夜景が高速道路の横目に見える。
工場萌えとしてはたまらない特典なわけです。
でも景気が良いとか株高でバブルだとかいって、
このお金の使い方はおかしいんじゃないか。
タクシーで帰らなければ、
その分、食事代・飲み代を3倍ぐらいにできるわけだし、
そんなことしなくても、タクシー代に消えるなら、
給与に還元してほしいし、
いくらでも生産的な使い方があるんじゃないか。
それで社長に「飲み会のタクシー代って無駄じゃないですか?」
と勇気を振り絞って言ってみたところ、
その意味を理解してくれて、以後そうした「無駄遣い」は格段に減った。
そういえば25歳で最年少上場を果たした、
リブセンスの社長村上太一氏を描いた本を読むと、
上場したのに住んでいるのは、
8畳一間のマンションで、冷蔵庫もないという。
本を読む限り、別に清貧を気取っているわけでも、
かっこつけているわけでもなく、
必要性を感じていないからといった感じだ。
その後、別件の取材でインタビューしたが、
金満・傲慢な匂いがまったくしなかった。
未だにいるじゃないですか。
ちょっとビジネスがうまくいって、金が入ってきたら、
やれ高級車だの高級時計だの高級マンションだの買いまくって、
それを平然とメディアに出て自慢してしまう人たち。
ああいうの見ると、正直いたいなと思うわけです。
前時代的な発想というか、「田舎者」の発想というか。
「私はお金の使い方を知らないバカです」と、
全国に宣言しているみたいじゃないか。
いや別にもとから高級車が好きで、
お金持ちになったら買いたいなというならいいと思うけど、
そうではない。
単に「値段の高い物がいいもの」と思い込んでいる、
値段でしか価値がわからないかわいそうな人間だ。
以前、テレビでやっていた「超高級ワインと超安物ワインを見分けられるか」
とかやってみたらまず見分けがつかないのだろう。
「不景気」が当たり前の世代や、
「不景気」でも失業せずに、
食べていければそれでいいと思う人たちにとって、
景気が良くなったから急に金遣いが荒くなるとか、
タクシーを使いまくるとか、
はっきりいって感覚として理解不能なわけです。
別にタクシー使うなって言っているわけではない。
「不景気」だろうが、ぶっ倒れそうで、
とても歩いて病院に行けないような状況なら、タクシーを使うし、
何人か複数で乗り合わせて、電車賃で人数分払うより、
少し割高でも時間が早ければ使うし、
荷物が重いとか、足の不自由な人と一緒にいるとか、
出張でレンタカーの方が安くても、
慣れない道を行かねばならず、事故の危険とか考えると、
タクシー利用した方がいいとか
必要性があれば使えばいい。
ただそれだけの話で景気の良し悪しとは根本的に関係ない。
結局、景気が悪くなるのって、
景気が良くなった時に後先考えず、
無駄遣いする人たちがいるからではないか。
そういう散財需要って長く続くわけがない。
景気が良いというかバブルの時がおかしな時代で、
景気が悪い時が当たり前と思えば、
別になんてことはない。
こう考えている人が増えているとすると、
いくら政府がやっきになって、
景気を良くしようと思っても無駄だということになる。
ポイントがもらえるから物を買うとか、
この時だけ増税前だから安く買えるとか、
そんなことで消費や投資を判断しない。
必要な時に必要な物を買う。
欲しい物がなければ買わない。
ほとんど大差ないモデルチェンジで、
いちいち新製品に買い替えたりしたり、
景気が良いからといって豪遊したりはしない。
そういう「賢い消費者」が増えれば増えるほど、
どれだけ景気を刺激しても景気は良くならない。
そう考えるともはや景気が良い悪いということ自体に、
はっきりいって何の意味もなくなってくる。
良かろうが悪かろうが、
無駄な消費はせず、欲しい物を欲しい時だけに買う、
という姿勢を貫いていれば、
逆にそんなにお金使わないから、
あくせく働く必要もないよねって話になってくる。
もうGDPの数字で豊かさを測る時代はとっくに終わったんです。
にもかかわらず、その数字にこだわり続けている、
前近代的な価値観の持ち主が社会を動かしている。
だから無理やり景気を良くしようとして、
異次元のことをやってしまうから、
その反動が大きな谷となってやってきてしまう。
世界同時バブルに浮かれた帰結は、
世界同時不況の金融危機だった。
たった5年前の話をもう忘れてしまったのだろうか。
過去の失敗から学ばない限り、
世界はまた同じことの歴史を繰り返すだろう。
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