サラリーマン時代は甘ちゃんだった~フリーランスのコスト意識の違い
2012年 03月 15日
フリーになってまもなく1ヵ月。
会社員時代から個人で仕事をしていたし、
勤めていたのは中小企業だったから、
人よりコスト意識があるなんて思っていたけど、
やっぱり甘ちゃんだったなって、
フリーになってからつくづく感じる毎日。
代表的な例が電車賃。
今までは定期があったから、
都内に出かけるのは自己負担なし。
どこか打ち合わせに行くにも、
会社の経費で出るわけだから、定期券以外の場所でも、
電車賃のコストを意識することはあんまりなかった。
でも今は都内に出れば往復で800円ぐらいかかる。
そのため都内に出る時は1件だけの要件だけでなく、
他のアポを入れようとか、そういう意識が働くようになった。
先日は市ヶ谷で取材があったので、
これはちょうどいいとばかりに、
3月16日発売予定のかさこ新刊写真集、
「戦う場所」の見本誌を出版社にとりにいき、
そうだついでに10年前フリーだった時に、
仕事をいただいた編プロがすぐそばにあるから、
立ち寄ろうと思って行動した。
でも会社員の時ってさすがにそこまで意識は働かない。
もちろん行った場所の近くに取引先があれば、
ついでに寄ろうぐらいの気持ちはあるけど、
「電車賃をせっかく払ったのだから」
というコスト意識からではまったくない。
フリーになって気になったのは電車の乗り換えコスト。
JRに乗って、また地下鉄に乗り換えれば、
その分、最低でも往復320円が余分にかかる。
でも地図を見れば地下鉄に乗らなくても、
JRから歩いて15分ぐらいで行けそうだ。
だったら歩けば320円浮くと思って歩くことにした。
こんな意識、サラリーマン時代にはまったくなかった。
何をケチくさいことをと思うかもしれないが、
たとえば1万円の仕事で300円余分に経費がかかったら、
3%分、利益を押し下げることになる。
たかが3%と思うかもしれないけれど、
今の預金で3%の利子がついたら大喜びするのではないか。
でも預金金利は長らく超低金利のため、
ハイリスク・ローリターンの金融商品に手を出すことを、
「資産運用」だなんていって3%とか5%の利回りを求めている。
運用に置き換えたら3%ってかなり貴重な利回り。
金融商品に投資しても、3%の利益すら、
確実に得られるかわからない時代に、
地下鉄我慢して往復歩けば3%浮くわけだ。
会社員時代、やたらタクシーを使う人に、
ものすごく疑問を感じていたことはあった。
地下鉄で15分ぐらい160円で行ける距離を、
わざわざ1000円以上もかけて、急ぎでもないし、
重い荷物を持っているわけでもないのに平然と使う。
でもそういう人に限って、
「もっと働け!」「もっと営業しろ!」とかいうわけです。
だったらまずタクシー使うのやめるのが先。
売上が上がらなくてもタクシー代が浮けば、
利益率は高くなり、その分、社員に還元できる。
タクシーがもったいないと思うのは、
今のこの厳しい時代、
サラリーマンだって当たり前と思うかもしれないが、
さすがに地下鉄代とか乗り換え代が、
もったいないとかは思わないだろう。
でもたかが300円でも、仮に外回りの社員が100人いて、
1日1回その無駄を省いたとすると、
300円×100人×20営業日×12カ月で、
年間720万円も浮くわけだ。
乗り換えを我慢してちょっと歩くだけで、
売上が上がらなくても社員に7万円給与をプラスできる。
新規に営業しなくても、
余計に働かなくても10分歩くことをいとわなければ、
給与が7万円もプラスになる。
私はサラリーマン時代、
東西線で大手町駅まで定期を持っていた。
日本橋で取材がある時には、
定期範囲の大手町を1駅超えるので往復320円かかる。
でも考えてみれば大手町なら、
日本橋ぐらい簡単に歩けるわけで、10分早く出れば済む話。
もちろん10分早く出れば、
自分の時間単位当たりのコストがかかるわけだけど、
残業代がない会社なら10分早く出てもコストにはならず、
現金でこれだけのお金=利益を生み出せるわけだ。
でもなぜサラリーマン時代には「そんなの面倒くさい」としか思えず、
細かなコスト削減のモチベーションがわかないのか。
それは自分にダイレクトに見返りがないから。
裏を返せば自分の財布が傷まないからだ。
フリーになれば経費は全部自腹で出すわけです。
だから、たかだが300円でも、
そこを歩けば300円自分にプラスになると思えるし、
ましてやタクシーなんてよほどのことがない限り使わない。
でもサラリーマンだとどうか。
そこで節約したところで、
その300円は自分には入らない。
それが年間7万円にもなったとしても、
その7万円が自分のお金にならなければ、
お金がかかっても自分の体がラクな方を選んでしまう。
だからどうしたってサラリーマンでは、
本当の意味でのコスト意識を持ちにくい。
電車賃なしのフルコミッション=完全歩合の仕事なら、
コスト意識は持てるだろうが、
そうではない給与体系で、
しかもコスト削減しても自分に見返りがないと思えば、
面倒で細かなコスト削減なんてするわけもないし、
そもそもそんなことに、
意外と多くのコストがかかっていることすら気づかない。
経営者や上司に口うるさくいわれて、
「うるせえな、仕事ちゃんとやってるんだからいいだろう」
ぐらいにしかきっと思わないだろう。
もちろんお金より時間が大切な場合もあるから、
なんでもかんでもコスト削減がいいわけではなく、
使うべきところにはケチらず、しっかりお金を使うべきだ。
しかし省いてもたいしたことないものなら、
それは金を浮かせた方がいい。
コスト削減なんて限界があるというけれど、
厳密にコスト削減やっているのは、
ほんの少数のグローバル企業ぐらいで、
あとの日本企業は結構ザルじゃないのか。
今の日本政府のように。
無駄なコストを削減すれば、
その分、働かなくても済むわけだし、
逆に無駄なコストをかけていたままだと、
その分を稼ぐためにより働かなくてはならなくなる。
サラリーマン時代から個人でも仕事をしていたので、
コスト意識があるなんて思っていた私は、完全に甘ちゃんでした。
それをフリーランスになってしみじみ感じている。
まあもちろん何の制約もないフリーランスの方が、
会社からコスト削減を徹底指示されているサラリーマンより、
コスト意識ない人もいるが。
隠れたコストはいっぱいある。
ちょっとの工夫でいくらでも浮く。
景気が悪いとか時代や社会が悪いとか、
そんな言い訳の前にやれることはいっぱいある。
残業代なく長時間働けだとか、
やたらめったら何度も営業しろとか、
そんな「無能」な命令ではなく、
やれることはいくらでもある。
使うべきところにお金を使うためにも、
いらないコストはできるだけ削減したい。
所詮、サラリーマンは自営の気持ちがわからない。
http://kasakoblog.exblog.jp/15108812/