葬儀屋さんである私が今回実際に
数珠「じゅず」をAmazonで買ってみたので、そのレポートです。
どんな珠数を買えばいいか、どのようにお葬式で使うかというマナーについてもご説明いたします。
数珠ってどういうものか見たことも聞いたこともないという方は少ないと思いますが
いざお葬式という時になって、
「持っていない、どうしよう」
とあわてる方が多いようです。
そんな方のために、この記事を書きました。
数珠という言葉について
ちなみに「じゅず」という音にひっぱられて「珠数」と書きがちなのですが
一般的には数珠と書かれることが多いです。
ただ辞書には「珠数」という表記も載っているので間違いではありません。
念珠(ねんじゅ)とよばれることもあります。
ちなみに「珠」は「しゅ・たま」と読み、球と同じ意味です。
「真珠(しんじゅ)」という言葉にも使われていますね。
数珠ってなに
数珠(じゅず)ってそもそも何なのかという話です。
元々は念仏を唱えた回数を数える道具です。
お坊さんをはじめとして信者はお念仏(例えば「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」など)
を唱えるわけですが、ずっと頭の中で唱えた回数数えている状態って
悟りにはほど遠いわけで
念仏の回数に意識を集中しなくてもいいように、カウンター(計数器)としての機能を持っているわけですね。
あの珠(たま)の数ですが、人間の煩悩の数に合わせて108個が基本です。
とはいえ108個あると実際にかなり長くてポケットに入れておくということができないものですから、実際は108の約数(54,36,27)の珠で構成されていることが多いです。
私の出身地では、法事で念仏を唱える時、珠の一個がゴルフボール大で円周が4メートルくらいの数珠を、使うときがあります。
参列者が円座を組んでその巨大な数珠を念仏を唱えつつ時計回りに回転させるのです。
一つの珠だけ大きくて野球のボール大であり、おそらくそれが念仏のカウントの目安になっているようです。
もしかするとあれが数珠の起源に近いのかもしれません。
珠数は必要なのか
おそらく現代のお葬式では念仏を参列者が百回以上唱える機会はないでしょう。
つまり本来の計数器としての数珠の機能を考えるなら、数珠は不要です。
葬儀屋さんである私も実はこれまで持っていませんでした。
たまに遺族の方で、葬儀式場に着いてから「数珠を忘れちゃった」とあわて出す人がいます。
そんなときは上記の説明を簡単にして、「だから別に無くてもいいですよ」と安心してもらいます。
余談ですが葬儀会館や火葬場などでは販売しているケースもあるので、どうしてもほしい方はスタッフを呼び止めて尋ねてみてください。
さて
おそらく首都圏の葬儀の現場では数珠の持参率は5割くらいではないでしょうか。
とはいえ袱紗とならんで数珠は持っていると「分かっている」感を増してくれます。
受付であえて胸元からシルバーの万年筆を取り出すような感じ、と言えば伝わるでしょうか。
特に若い方がさらっと数珠を持っていると、とてもしっかりした印象を与えます。
後述するように数千円の安いものでも一つ持っていれば、一生使えるものですから
買っておいて損はないです。
Amazonで注文してみた
前述したように私は数珠を持っていなかったのですが
今回の記事を書くにあたり自分でも一つ購入してみることにしました。
Amazonで「数珠」というワードで検索してみました。
1,000円~70万円!までたくさんの数珠が検索結果に表れます。
さて数珠の値段は何で決まるのでしょうか。
房の部分が化学繊維ではなく正絹(シルク)になっているという違いもありますが
一番大きな要因は珠の素材です。
例えばこの70万円を越える数珠は
珠の部分に沈香(じんこう)が使われています。
沈香とはお香で使われる貴重な香木の一種で、その希少性から高額な値段が付いています。
おそらく匂いがすると思うので、お葬式で使うとちょっと迷惑かもしれません・・・
そして私が選んだのはこの数珠。
これにした理由は安かったから。
980円です。
Amazonプライム対象商品だったので
翌日到着。
↑こんな感じで届きます。
↑箱を開けたところ
↑サイズ比較用ため新書を置いてみました。
小さめなので女性用としてもいけるんじゃないでしょうか。
珠の部分はプラスチック
房(ふさ)は人絹、つまりレーヨンです。
良いところ挙げると、当然ですが「安い」ことです。
次に悪いところです。
正直なところ、色が黒で、照明の下でぱっと見るだけでは、オニキスもプラスチックもよく分かりません。
しかしこの珠数は透明なプラスチック部分が存在することによって安物だとバレてしまいます。
また実際手に持った状態だと珠より房の部分の素材が目立つのですが、ここがレーヨンというのも弱いところです。
あと珠数の最悪の事態というのは珠を通したヒモが切れてしまうこと。
式場にまき散らかされた珠はお葬式の最中だと回収不能です。
踏んでしまうと転んで傷害沙汰になる可能性も。
まず起こりませんが、私は過去一度だけ経験があります。
この商品がそうだというわけではありませんが
この点からも安いものは不安が残ります。
その他の珠数
少し予算があるなら下記のものはどうでしょうか。
5,000円ほどで、房は正絹に、珠はオニキスになっています。
それから素材の良し悪しがばれにくいという理由で色は黒をおすすめします。
私が購入した数珠とこの数珠の間の価格帯に黒檀という木の素材の珠があるのですが、安い黒檀は色むらなどのバラツキが起こりがちなので、おすすめしません。
一般的に女性用は男性用より一回り小さいサイズで販売されています。
しかし最安値の女性用は珠が黒ではなく色付きのプラスチックであることが多いため、同じ予算でも女性用は安っぽく見えてしまいがちです。
そのためご予算が無い場合は黒いのをお選びになることをおすすめします。
少し予算があるなら写真のようなオニキスのものをどうぞ。
珠数の持ち方
数珠の持ち方ですが
基本左手で持ちます。
焼香の案内直前に、4本指を通した状態で左手で握っておき、
右手で焼香後、そのまま手を合わせてください。
特に握りを変える必要はないので難しくないはずです。
マナー本によっては宗派によって数珠の種類や持ち方が違う、と書いているものもありますが
スノビズム(知識・教養をひけらかして良い気になること)に過ぎないのではないでしょうか。
実際の現場ではほとんど気に留められていません。
以上Amazonで珠数を買った話でした。