そこが知りたい家電の新技術
シャープの蚊取空清の完成度をガチ実験で試す! 結果はもはや閲覧禁止!?
2017年6月29日 07:00
この記事には、大量の蚊や羽虫などが付着した粘着シートの画像、および多数の虫の死骸の写真が、数多く掲載されています。これらは、実験の様子やその結果を示すものです。
――――はっきり言って、キモイです(笑)――――
(笑)とか書いちゃいましたが、嫌いな人はマジ笑えないです。もし無数の虫の画像に嫌悪感を抱く方は、この記事の閲覧を禁止します。またお食事などの時間帯にも、お気をつけください。
以降の記事を閲覧する場合は、この注意書きを理解・許諾した上で閲覧するものとし、インプレスおよび筆者は一切の責務を負わないものとします。
なお記事の続きが読めない方に、この記事を要約すると「シャープの蚊取空清の実力は確か!! 殺虫剤みたいなヤバイ成分が入ってないから買え!」となります。
昨年発売のセンセーショナルな家電と言えばシャープの「蚊取空清 FU-GK50」だろう。その名の通り、空気清浄機に、「蚊取り」機能がついた全く新しい、ハイブリッド(?)な家電だ。これまでにない新しい機能が注目を集めたが、空気清浄機に蚊取り機能がついているってはっきり言って、ワケがわからない……。
というわけで、大阪は八尾市にあるシャープの開発拠点まで真相を確かめにいってきた!
蚊はただかゆいだけじゃない! 病気を媒介する怖い存在
そもそも、この製品が日本で発売されたのは、2016年の4月。でも実は、もっと以前から東南アジア諸国で発売されていて、高い評価を得ていたのだ。まだ画面をスクロールしていない人もいると思うので、現地で捕獲した蚊の写真は、あとでのお楽しみ(というか肝試し)にするが、感動とキモさで鳥肌が立つほどだ。
日本では、蚊に刺されたといっても「かゆい」というくらいだが、赤道直下の国やアジアでは、蚊は病気を媒介する怖い虫。日本でもフツーに飛んでいるヒトスジシマ蚊も大きな脅威だ。アジアの国々では、蚊を取るということは、家族を守るということに直結するのだ。
そんなASEAN諸国の蚊の悩みに対応すべく、開発されたこの製品。ぶっちゃけ言っちゃうと、空気清浄機に粘着テープをつけただけ。空気清浄機が部屋の汚れた空気を吸うのと同時に、蚊も吸い込んで粘着テープで捕獲する。一見すると、もう時代錯誤にもほどがあるだろ? っていう位、古式ゆかしいアナログで古典的な方法で蚊を捕らえる。
それゆえ一部では「シャープがぶっ壊れた!」「こんなの売れるわけないじゃん!」と囁かれていたほど。もちろん筆者も激しく同意していた(笑)。が、国内で発売開始されるやいなや、蚊取空清は売れまくり、品切れ状態が続く。シャープは工場をフル稼動させてこれに対応するほどだった。
蚊がバンバン採れるとレビューや口コミが広がり、一躍注目の家電に。はじめはマユツバだった筆者もその性能に驚き、テレビなどで紹介しまくった(笑)。
ウソみたいに蚊が取れまくった東南アジアでのプレ販売
というわけでさっそく、どのぐらい蚊が取れるのか? を写真で見ていくことにしよう。
まずは日本より先行発売されたインドネシアでの写真だ。蚊にとってインドネシアは暮らしやすいらしく、丸々太ったというか、日本より明らかにデカい蚊が大量に取れている。
続いてはインドのお隣にあるバングラディッシュでの実地試験。バングラディッシュは、経済特区を設け外国企業を誘致しているので、中国に続くアジアの生産拠点として注目を集めている。
蚊に加えてガのような羽虫もたくさん捕らえている。いずれにしても日本の虫より大型が、どっさり捕まっているようだ。
前述したように、この製品、仕組み自体はかなりシンプルなものだが、そのシンプルさこそ、各国で支持されている理由なのだ。
というのも、ASEAN各国をはじめとした東南アジアでは、蚊を媒介する病気が多いこともあって、強力な殺虫剤が多く販売されている。効き目が強すぎて、虫以外の動物や人にも悪影響を及ぼしかねないということで、成分が問題視されているのだ。
そこに登場したシャープの蚊取空清は、殺虫剤を一切使わず、蚊の習性を逆手にとって粘着テープに捕獲するというアプローチ。室内で使ってももちろん安全、どころか空気まで綺麗にしてくれるというおまけつき! ASEAN諸国ではまだまだ高級家電ではあるが、シャープは、少しでも一般層にも購入してもらえるよう、価格の安いモデルを用意するなどして、東南アジア各国をはじめ世界15カ国で人気を集めている。
次に見せてもらったのは、沖縄で実験したもの。沖縄という土地柄もあってか、蚊以外にもコバエや蛾などの羽虫に加えて、コオロギらしきものが粘着テープについていた。
100匹の蚊を使って工場でガチンコ実験!
しかし、ここまで見せてもらった実験結果は、あくまでもシャープ内部で行なったものだ。まぁ大きな会社なので、ウソを言っているとは言わないが、多少盛っている可能性もなきにしもあらず(笑)。とはいえ、筆者の自宅で蚊を放って捕獲するのはあまりにもバイオハザード的。「疑っているわけじゃないけど、オレの前で実験して見せてよ! 別に疑ってるわけじゃないっすよ♪」ということで、工場の一角を借りて蚊の捕獲実験を行なった(笑)。いや、本当に疑ってるわけじゃないけど、念のためね♪
当初は琵琶湖も近いので、虫カゴをもって琵琶湖虫(ユスリ蚊)で実験しようと提案した。実はこのユスリ蚊、実験などでよく使われる蚊の仲間なのだが、人の血を吸わないイイヤツ。よく夕方に蚊柱を作るアノ蚊なのだ。だが疑い半分で実験オファーした筆者の魂胆を見抜いたのか、シャープの担当者さんの魂に火が付いてしまった(ちょとアオリすぎた蚊?)ようで、「大丈夫です! 本物の蚊を買っておきますからっ!」と、アカイエ蚊を100匹用意してくれた。うわっ! 見てるだけでかゆっ! 後で値段を調べてみたら、うわっ! パチンコ玉の10倍以上高いじゃん!
さて実験室は、だいたい6畳ほど。そこに蚊取空清を設置して夕方の17時から翌日14時までおよそ20時間運転した。比較対象として反対側に、黒いダンボールをくり貫いた蚊取空清「もどき」も設置。
いよいよ蚊の入った容器のフタを空けて、バイオハザードっ! みんなで一目散で部屋の外に逃げる! 走って! いい大人が何やってんだか(笑)。
こうして大仕事を終えた我々は工場を後にして、吉本新喜劇を見て大いに笑って、たこ焼き屋さんを何軒もはしごして、実験の成功を祈りつつ大いに遊んだ(笑)。そして翌日まで放置して、粘着シートの具合を確かめたのが、コレ!
パッと見は少ないように見えるが、数えてみると94匹! つまり蚊の捕獲率は、94%というわけだ。これはかなりの捕獲率というか、敵をほぼ制圧できたいっていいだろう。
実験室を舞う敵残党は2匹のみ。あと4匹の蚊は行方不明となっていたことを考えると、実捕獲率95%以上としてもいいだろう。今回の実験は密室で行なったもので、家庭でも同様の結果になるとは言い切れないが、それにしてもなかなかの威力だ。
蚊は粘着シートにくっついて1日ほどすると餓死するという。今回は、前日の夕方から実験をしたので、まだ生きている蚊も何匹かいた。しかしもがいているうちに、さらに粘着シートにくっつき逃げられないようだ。
蚊が思わず飛び込みたくなる蚊取空清だから殺虫成分なしでOK!
蚊取空清の中にエサを仕込んであるわけでなし、殺虫剤を塗布しているわけでもないのに、なぜこんなに多くの蚊を捕獲できるのだろう? その秘密は、次の3つトラップにある。
・蚊が隠れたくなる黒いボディ
・蚊が大好きな紫外線LED
・蚊が入りたくなる穴
空気清浄機と言えば、清潔感や清涼感を出すために、白を中心にしたものが多い。しかし蚊取空清のカラーは「黒」。その理由は、蚊が黒いものが大好きだから。なぜか黒を好むかは明らかになっていないが、物陰に隠れるように暗く黒いところに集まる習性があるという。
またこの蚊取空清は、紫外線LEDが仕込まれている。真夏の夜にカーテンを開けておくと、網戸に無数の虫が集まってくるのはご存知の通り。これは、虫が明かりに集まってくる習性があるからだ。なかでも虫が大好きなのは、我々人が嫌う紫外線。そう日焼けする紫外線、UV(Ultra Violet)だ。
蚊取空清の吸気口内部には、紫外線を出すLEDライトが煌々と輝いており、筆者のようなオッサンが赤提灯に誘われるかのごとく、蚊をおびき寄せるのだ。なお青く光って見えるのは、人が見て分かるインジケータとして、目に見えない紫外線に加えて青く光るようになっているため。
最後の秘密は蚊が入りたくなる穴。蚊取空清の背面には、空気取り込み兼、蚊の玄関口の窓が空いている。およそ10×4cmの穴が縦に5つ、左右あわせて10個ある。この穴の大きさや数は、海外向けの製品もまったく同じで、多くの実験を重ねた結果、一番蚊の好む穴の大きさと数になったという。
先の赤提灯と同じく、飲み屋の入り口は広ければ入りやすいというわけでもなく、狭すぎてもダメ。ちょうどいい感じの引き戸をガラガラと開けて一杯飲みたいという人間の心理と同じなのかも知れない。
こうして蚊取空清の穴の中まで蚊をおびき寄せると、あとは空気清浄機の吸い込む力で蚊は中に吸い込まれ、本体内の乱れた気流やそこから逃げ出そうと飛ぶ蚊を、粘着シートが捕獲するというわけだ。
置き方の工夫でさらに捕獲率アップ!
また設置場所を工夫するとさらに捕獲率を上げられるという。たとえばテレビなどの黒くて暖かい家電の近くに置いておくと、より蚊が集まる。先に説明した通り、蚊は黒いものに集まるという習性があることに加えて、蚊が活発に活動するのは、気温26~31℃だからだ。テレビや冷蔵庫、HDDレコーダなど暖かく黒い家電の近くに置いておくと、蚊の活動が活発になるというわけだ。
逆に15℃を下回ったり、35℃を越えるようなことがあると、蚊は活動をやめて休憩するという。また蚊の種類によって、夕方から活動するもの、夜に活動するものなど、活動パターンがいろいろあるので、蚊取空清は夜だけでなく、24時間運転するのがおすすめとのことだ。
なお蚊取空清を購入したユーザーやシャープの実験によれば、蚊だけでなくハエもたくさん捕獲できる。実験によれば「キイロショウジョウバエ」の捕獲率は88%、俗称「便所バエ」と呼ばれる「オオチョウバエ」は87%捕獲できたという。なお羽は生えているがおもに歩き回る「クサビノミバエ」でも、59%捕獲できたという。
殺虫成分は一切なし! 世界の衛生事情を変える可能性を含んだ家電
最近の蚊取りスプレーは、ひと吹きするだけで部屋全体の蚊を殺せるような強い殺虫成分を含んだものがある。でも注意書きをよく読むと、金魚や小鳥、小動物が居る部屋では使わないようにと書かれたものも。
赤ちゃんやペットと暮らす世帯では、強い殺虫剤を使うことに抵抗がある方も多いだろう。こんなときは殺虫成分が一切なく、外から触れる稼動部分もない蚊取空清をオススメしたい。
またこの製品は、活性炭入り脱臭フィルターが内蔵されているので、プラズマクラスターの消臭効果とあわせて、ペットや生活臭を消臭してくれる。特にペットのいる家庭なら、導入したその日もしくは数日でその効果を実感できるだろう。
多くの家電は1年経つと、細かい部分をちょっとだけ変えてモデルチェンジをする。こうして再び消費者やマスコミの注目を集めようとするものだ。しかしシャープの蚊取空清は、「完成形なのでモデルチェンジしようがない」という。このシャープの潔さにも敬意を払いたい。
太陽光パネルや亀山の液晶、プラズマクラスターのように、世界標準となる可能性を大いに秘めた、革新的な空気清浄機&蚊取り機能だ。