与党税制大綱、「年収の壁」123万円・防衛増税は26年度から

自公国、年収の壁引き上げ幅で協議継続へ 幹事長が確認
 自民、公明と国民民主の3党幹事長が20日会談し、所得税の非課税枠「年収103万円の壁」の引き上げ幅を巡る協議を継続することを確認した。写真は国会議事堂。2016年2月撮影(2024年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 20日 ロイター] - 自民党と公明党は20日、2025年度の税制改正大綱を決定した。所得税の非課税枠「年収103万円の壁」は123万円まで引き上げると明記したが、178万円への引き上げを求める国民民主党が25年度予算案に反対する可能性も示していることから、今後も協議を行っていくとした。防衛力強化の原資とする法人税とたばこ税は26年度から引上げるが、所得税増税の時期は明記しなかった。
年収103万円の壁を巡っては、与党が先週国民民主党に示した案を反映し、所得税の控除額を20万円引き上げて123万円にする。最後に引き上げが実施された1995年と比べて消費者物価指数が10%程度上昇したことを理由に挙げている。自公と国民民主の幹事長間で合意した「178万円を目指して」という文言も盛り込み、「引き続き、真摯に協議を行っていく」とした。
<3党協議来週にも、本予算までに動き>
会見した宮沢洋一自民税調会長は「123万円への引き上げで6000-7000億円の減収になる」との試算を明らかにした。「3党は来週にも税調協議が始まるため、(25年度)予算(成立)までいろいろな動きがあると思う」とも述べた。公明党の赤羽一嘉税調会長も「3党協議は継続する。国民生活の向上につながる税制を目指し、財源にも責任のある形で結論を出したい」と強調した。
  防衛力強化のため段階的に増税し、27年度までに1兆円超を確保する方針を決めている法人・所得・たばこの3税は、法人税について税額に税率4%を付加する防衛特別法人税(仮称)を26年4月に新設し、たばこ税も26年4月に加熱式たばこの税率を引き上げて、紙巻きたばことそろえ、そのうえで、たばこ全体の税率を29年4月まで3回にわけて1本当たり計1.5円引き上げる。
政府と自民党が当初27年1月に実施を予定していた所得税率1%引き上げは、公明党などの反対で見送られ、「103万円の壁の引き上げの影響も勘案しながら引き続き検討する」と記載された。
<暗号資産、課税見直し検討>
このほか、大学生などを扶養する親の税負担を軽くする「特定扶養控除」と呼ばれる仕組みでは、子どものバイトなどの年収上限を103万円から150万円に引き上げ、上限を超えた場合も世帯の手取りが減るのを抑える新たな仕組みをつくる。
  個人型確定拠出年金「iⅮeCo(イデコ)」、企業型確定拠出年金の税優遇の拡充(拠出限度額の引き上げ)や、中小企業の法人税率の軽減特例の2年間延長も盛り込まれた。
2024年度の税制大綱では、児童手当を高校生まで拡充するのに伴い、高校生世代の子どもを持つ親の税負担を軽減する扶養控除を縮小する方針だったが、公明党や国民民主党から反対する意見が出て、1年間の時限的措置として現行水準を維持する。住宅ローン減税についても、子育て世帯や若者夫婦向けの優遇措置を2025年末まで1年間延長する。
将来の検討事項として、ビットコインなど暗号資産(仮想通貨)の取引にかかわる課税に関し、「一定の暗号資産を広く国民の資産形成に資する金融商品」と位置づけ、投資家保護などに必要な法整備をするとともに、取引業者の税務当局への報告義務などを前提に、課税の見直しを検討するとした。

竹本能文※

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