「サムスン就職は人生成功の鍵」、韓国学生の過酷な就活事情

「サムスン就職は人生成功の鍵」、韓国学生の過酷な就活事情
11月8日、韓国・釜山にある就職予備校では、大企業サムスン・グループの職を勝ち取るため、大学生たちが日夜勉強に励んでいる。写真は同予備校の講師。10月撮影(2013年 ロイター/Kim Hong-Ji)
[釜山 8日 ロイター] -「われわれなら、きっとできる」──。こんな掛け声を大声で唱えていたのは、韓国・釜山にある就職予備校の一室を埋めた70人。彼らは、一生の仕事となる大企業サムスン・グループの職を勝ち取るため、日夜勉強に励む大学生たちだ。
家電から造船までさまざまなビジネスを手掛ける同国有数の企業グループ、サムスン。同グループへの就職は、恵まれた給与や福利厚生だけでなく、良い結婚相手を見つける鍵にもなる。
「チェボル」と呼ばれるサムスンや現代などのコングロマリット(複合企業)は定期採用を年2回行うが、例年この時期は採用試験のシーズンとなっている。
父親も釜山近郊のサムスンに勤めるというShin Seong-hwanさん(25)はこの日、午後8時の面接本番に備えて午前10時には現地に到着した。既に適性試験をクリアしたShinさんは、月末まで続く過酷な面接に臨む。
今回の採用試験で採用を手にするのは、10万人を超える応募者のうち5500人という狭き門だ。「複合企業で職を得られれば、自分や親にとって名誉になる」と話すのは、政府の関連機関である韓国労働研究院のシニアリサーチャーHur Jai-joon氏。
しかし、全国経済人連合会によると、大手複合企業の社員は総労働人口のわずか6.8%で、ほとんどの人にとってはかなわぬ夢だと言える。
とはいえ、サムスンは昔からこうした厳しい試験を課してきたわけではない。元社員によると、30年前には顔相を読む占い師が面接に同席していたという。
しかし、就職先として最も人気のある企業となった今、サムスンを目指す学生らは就職予備校やテキスト、オンライン講義で対策を怠らない。サムスンの試験はその厳しいプロセスから、合格するのに何年もかかる公務員試験と比較されるほどだ。
工学系の大学院を卒業したHanNam-gyuさん(27)も、サムスンの就職対策のために予備校に通った1人。こうしたシステムは、大学入学のための学生浪人のほかに、就職浪人という新たな層を生むという批判もあるが、Hanさんは予備校について「彼らはプロで、たくさんのことを学んでいる」と肯定する。
昨年に続き今年も試験に挑戦しているHanさんは、グループ企業のサムスンC&Tに応募。「2次試験に合格した後、母は泣いて喜んでくれた」と話し、「自慢の息子になるためにもサムスンに入りたい」と述べた。

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