30年以上に渡って尖り続けてきた古参JRPG「サガ」シリーズ……その最新作とリメイクが両立した歴史的瞬間――2024年を振り返る個人GOTY:各務都心
バトルがおもしろければ何時間でも遊んでいられる
筆者が2024年に遊んだゲームでランキングを付けるならば、以下の通りになる。
- 『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』
- 『ANIMAL WELL』
- 『鏡のマジョリティア』
- 『INDIKA』
- 『SILENT HILL 2』
- 『Gimmick! 2』
- 『Leap Year』
- 『未解決事件は終わらせないといけないから』(筆者によるコラム)
- 『サガ エメラルド ビヨンド』
- 『ファイナルファンタジーVII リバース』
『ロマンシングサガ2 リベンジオブザセブン』には度肝を抜かれた。あんなにおもしろかったオリジナル版を、さらにおもしろくすることができるなんて……と。
本作は武器攻撃や魔法を主体としたコマンド選択式RPGであり、街やダンジョンを行き来するといったオールドスクールな見た目をしているものの、システム自体は1993年発売のオリジナル版からしてとても尖っている。
主人公は帝国の皇帝であり、世界中を旅して領土を拡げながら、人類に仇なす「七英雄」という存在と1000年近くに渡って攻防を繰り広げる。この時点で昨今のオープンワールドゲームに先駆けた「フリーシナリオ」を完成させており、後述するレベル制の廃止などにより、全体の難易度バランスも保たれたままである。あえて棘のある言い方をするが、どうしてほとんどのオープンワールドRPGがこの設計を真似しないのか、不思議である。
シナリオは人類に裏切られて復讐鬼と化した七英雄たちの視点から語られ、主人公サイドが明確な善として描かれているわけでもなく、王族として脅威の排除をせねばならないというモチベーションだけが担保されているため、どこに寄り道しても違和感はない(ドラマが割と淡白で、台詞回しが独特なところは認めよう)。
バトルにおいては、キャラクターたちのレベルがなく、代わりにランダムで技を閃き、帝国を拡張させていかなければ魔法に当たる術は弱いままだ。どこに行っても敵モンスターたちが主人公パーティーに比例して強くなり、ずっと緊張感のあるバトルを強いられる。これがとてつもなくおもしろく、作業感がまったくない。
今回のリメイクによって、オリジナル版にあった不親切だった要素がほとんど取り除かれた点も大きい。クエストマーカー制や閃きの可視化は、本シリーズを初めて遊ぶ人に対して大胆かつ重要な改良ポイントだった。
また「アビリティの付け替え」という、RPGを遊んだことのある人類ならすぐ思いつきそうな単純な要素が、『ロマンシング サ・ガ2』に対してここまでしっくり来る改良になるとは誰も思わなかっただろう。これにより、オリジナル版よりさらにパーティーメンバーの入れ替えをしなければならなくなったので、誰がどんな特性をもっているかということに気づきやすくなった。
シリーズの伝統に則り今回もラスボスはとんでもなく強く、このゲームに存在する大抵の技・術・陣形・装備に熟知し、その効果を試していないと勝てないようになっている。ゲームと向き合い、用意されたパターンを正確に把握することに情熱を燃やすタイプのプレイヤーは、今すぐ遊んだほうがいい傑作だった。
さて、そんな「サガ」シリーズの最高傑作とも名高い作品がリメイクされた裏で、シリーズの最新作も発売している。『サガ エメラルド ビヨンド』である。
先にネガティブな面を話しておくと、予算がかかっていないがゆえなのか貧相に見えるポイントがいくつもある。紙芝居形式のストーリーは前作『サガ スカーレット グレイス』よりもさらに淡白を極め、UIはわかりづらく、トレード機能は必要だったのかも怪しい。
しかしながら、ことバトルにおいては、もはやコマンド選択式RPGにおいて最高傑作と呼んでも差し支えないのではないかというほどのめり込んだ。
前作同様に、左右に敵が並んだタイムライン形式であり、順番に敵味方が殴り合っていく作りだが、大きくユニークなフィーチャーがふたつある。
ひとつは「連携範囲」というもの。敵味方すべてのキャラクターが使用する技には必ず連携範囲という緑の帯が存在しており、これの端をくっつけることで連携攻撃が発生する。もちろん、連携すればするほど大ダメージが生まれるので、基本的には毎回これを狙っていくことになる。
よって、タイムラインのどこかで大勢の味方とくっつくために、装備や陣形などですばやさを揃える必要がある。それでも敵が割り込んでくる場合は、敵の行動順を遅くする技や、味方の行動に併せて行動できる技などを差し込んで、とにかくひとつでも多く連携を繋げるために1ターンごとに熟考することになる。
この、串団子ないし連結車両みたいなものを作りまくる遊びだけでも凄まじくおもしろいのに、これに加えて「独壇場」というシステムもある。
こちらは逆に前後2マスに敵も味方も一切いない状態で攻撃すると、自分一人だけで(残りのアクションポイント分だけ)何度も攻撃を放つ大技である。
連携・独壇場は、主人公パーティーだけでなく敵パーティーも同じように行ってくるので、こっちが固まって連携しようとすると、敵が後ろのほうにポツンといて、独壇場が発動して負けました……なんてことも起き得る。
さらに言えば、JRPGのコマンド選択式戦闘は、ボスのHP半減による形態変化やギミック以外にドラマを作りづらいところがあるだろうが、この独壇場の仕組みのおかげで、戦闘時の作業が起きにくくなっている。
敵味方どちらも死力を尽くした消耗戦となった場合は、最後に一縷の望みをかけて独壇場を撃ち合う……なんてこともある。このクライマックスを演出するために、回復アイテムや回復魔法を用意していないというのもストイックすぎて惚れ惚れするくらいだ。
コマンド選択式RPGの戦闘のおもしろさをここまで追求し続けてきたのは「サガ」シリーズ以外にないだろう。1989年の『魔界塔士サ・ガ』から35年……ゲームボーイから出発した河津秋敏のクリエイティブは、いまだに鋭く尖り続けている。
サガの話だけで2024年を締めくくるのはさすがに乱暴なので、もう少しだけそのほかの良作についても語っておこう。
大作ラッシュだった2023年に比べて、2024年は『Leap Year』や『未解決事件は終わらせないといけないから』など、きらりと光る小粒なインディーゲームが印象に残った。数時間で終わるボリュームであるからこそ、アイデアとシナリオとゲームデザインが完璧に絡み合った作品が多かった印象である。
まず『INDIKA』。The Game AwardsでGames for Impactを受賞しなかった理由を教えてほしいほど、衝撃的な作品だった。宗教についてあまり詳しくない人でも、この4時間弱の悲惨な旅路に付き合ってみてほしい。きっと得も言われぬ感情に襲われることだろう。
また、3位に選出したのはフリーゲーム『鏡のマジョリティア』だ。今作は一人用カードゲームに『Chants of Sennaar』のような言語解読パズルを組み合わせた怪作である。ホビーアニメに一匙だけ皮肉を足したようなオリジナリティあふれるストーリーも評価したい。
2024年は、傑作RPGと小粒なインディーゲームを交互に楽しんだ一年だった。来年は『餓狼伝説 City of the Wolves』を買って、またアツい対戦の場に戻りたい所存である。