「ゼルダ」が達成できなかった「オープンエアのストーリーテリング」を達成した『Outer Wilds』――2023年を振り返る個人GOTY:お茶缶

大豊作の2023年に、「ゼルダ」にとらわれ続ける

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2022年の個人GOTYはその年に発売していないゲームばかりになってしまったけれど、2023年は本当に豊作だったので、そもそも10本を選出することにとても苦労した。ここに選出しなかったものも含めて、面白いゲームが本当にたくさんあった。

けれど、それでも結局、2023年の私の脳内は「ゼルダ、ゼルダ、ゼルダ」だった。私が最も好きなゲームシリーズである「ゼルダの伝説」の最新作であり、世界的な高評価を受けた『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の続編である『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』がついに発売したのだから、仕方がない。

発売前も、発売後も、他のゲームを遊んでいるときも、記事を書いているときも、新たな「ゼルダ」をどのように受け止めるかということでいっぱいだった。とにかく、TOP10は以下の通りだ。

  1. 『Outer Wilds』
  2. 『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』
  3. 『ピクミン4』
  4. 『MARVEL SNAP』
  5. 『ゴースト トリック』
  6. 『メトロイドプライム リマスタード』
  7. 『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』
  8. 『ファミレスを享受せよ』
  9. 『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』
  10. 『ふりかけ☆スペイシー』

「ゼルダ」を差し置いて『Outer Wilds』を1位にしたのは、本作のストーリーの語り方があまりに優れているからだ。そして、これは「ブレス オブ ザ ワイルド」と「ティアーズ オブ ザ キングダム」も目指していたが、到達できなかった語り方であると感じている。

『Outer Wilds』は本当は2022年にクリアしたタイトルだった。けれどDLCの「Echos of the Eye」をクリアしていなかったので、改めてプレイしてこのリストに入れた形だ。とはいえ、まずは「ティアーズ オブ ザ キングダム」の話をしよう。



『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は、オープンワールドの冒険のすべてを「謎解き」にしたゲームだ。このハイラルを冒険するとき、プレイヤーは目に映る景色から、ある目標を定める。例えば、「あの空島へ行く」、「この石をあそこに運ぶ」といった目標だ。そして、その目標を達成するために「ウルトラハンド」、「モドレコ」、「トーレルーフ」といった能力をどう使えばいいのかを考える。冒険の中に常に「目標と解決」が発生する、「冒険そのものが謎解き」のゲームだ。これは、前作「ブレス オブ ザ ワイルド」の築いた「かけ算の遊び」を、より従来の「ゼルダ」らしく再構築したものだと感じている。

「ゼルダ」はこれまで、冒険の途中で謎解きのためのアイテム(フックショットやバクダンなど)を手に入れて、それらを使ってダンジョンを攻略するというゲームだったが、それは「神々のトライフォース2」から「ブレス オブ ザ ワイルド」にかけて見直され、最終的には「冒険に出る前にすべてのアイテムが揃っている」というデザインになった。

「ティアーズ オブ ザ キングダム」でも、基本となるアイテムは冒険前に入手することになるのだが、その代わり、従来の「そのダンジョンの攻略のためのアイテム」の役割を「ゾナウギア」が担うようになった。例えば、「扇風機」は「まほうのツボ」と同様に、風を起こすというルールを持った謎解き用のアイテムである。従来のゼルダの遊びであるゾナウギアを、「くっつけられる(かけ算できる)」ようにすることを新しいゼルダの冒険の核としたのだ。



オープンワールドのゲームのメインストーリーは、せっかく広大な世界がひろがっているのに、クエストを順に追うだけになりがち、という問題を抱えている。「ブレス オブ ザ ワイルド」は、「ウツシエの記憶」というシステムによって、その解決を試みた。つまり、過去の出来事(ストーリー)を細かく分けて、順不同にして世界の各地に配置し、それをプレイヤーに集めさせるという方式である。「ティアーズ オブ ザ キングダム」でも同様のシステムが「龍の泪」として登場している。

これによって、能動的な攻略順を実現することには成功したのだが、これはプレイヤーが数十時間ハイラルを旅して30分ほどのカットシーンが完成するところを見せられただけにすぎず、結局ストーリーテリングとしては受動的なものにとどまっている。


『Outer Wilds』は、その問題を完全に解決している。この世界に眠るストーリーそのものを「謎解き」にすることで、攻略順のみならず、ストーリーの描き方としても能動的なものを実現した。

このゲームの前半は、ウツシエの記憶とおおむね同じだ。宇宙のあちこちに遺跡を残すNomai人の過去に何があったのかという出来事の断片、そのテキストを、世界を飛び回って集めていく。「ブレス オブ ザ ワイルド」や「ティアーズ オブ ザ キングダム」の場合はそれらを全て集めれば終わりだが、『Outer Wilds』の場合はその先がある。


ただ受動的にNomai人の遺跡のテキストを読んでいるだけではこのゲームはクリアできない。Nomai人に起こった出来事はなんだったのかということを推理し、その仮説を検証するためにさらなる冒険へ出る。本作の遺跡には、「ゼルダ」シリーズに影響を受けた謎解きが多く用意されているが、それらは本作の盤石なSFの設定によって説得力を持って支えられている。だからこそ、ストーリーの推理がそのままギミックを解く武器になる。自分の知識こそが「フックショット」になるゲームなのだ。

ウツシエの記憶のシステムが「謎解き」と密接に絡み合うことで、真に能動的なストーリーテリング、つまり、「ブレス オブ ザ ワイルド」の能動的な冒険へのコンセプトである「オープンエア」を、ストーリーを描くことにおいても実現している。

もちろん、『Outer Wilds』は「ティアーズ オブ ザ キングダム」のようなアクションアドベンチャーゲームではない。どちらにも目指す方向性がある。ただ、少なくとも本作は、ストーリーを能動的にするという点においては、「ティアーズ オブ ザ キングダム」の一歩先を行っているゲームだと感じている。


『Outer Wilds』は、「ストーリー自体が謎解きのゲーム」で、『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は、「冒険自体が謎解きのゲーム」だ。どちらも本当に面白い。しかし、「ティアーズ オブ ザ キングダム」は、「ストーリーも冒険も謎解きのゲーム」になるポテンシャルを秘めていたのではないかと感じている。長々と書いたが、つまるところ私は、あのハイラルのどこかで待っているゼルダを、本当は“自分の手で”見つけ出したかったのだ。
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