今年のベストゲーム TOP 10!IGN JAPAN GOTY 2024
今年のベストは……
2024年のベストゲームを決めるIGN JAPANゲーム・オブ・ザ・イヤー2024(IGN JAPAN GOTY 2024)。昨日は各部門の最優秀作を発表したが、本日はノミネートした20作の中から、1年間の最高の10本をランキング形式で紹介しよう。発表を始める前に、アワードの対象範囲と注意点を確認してほしい。
2023年12月1日~2024年11月30日に発売されたゲームが対象
2023年12月に発売されたタイトルも対象となり、これらには『バルダーズ・ゲート3』が含まれる。
海外のゲームはローカライズ版の発売日を基準とする
海外では前から発売しているが、対象期間内に初めて日本語が適応されたタイトルも対象となる。これも『バルダーズ・ゲート3』が当てはまる。
日本語版が存在するゲームのみ
残念ながらまだ日本語版が存在しない(あるいはリリースしていない)タイトルは対象外となる。
DLCは対象外
The Game Awardsでは『ELDEN RING: SHADOW OF THE ERDTREE』がノミネートされて話題となったが、IGN JAPANのGOTYではDLCを引き続き対象外とする。
選出・結果はIGN JAPANのチーム全体で考えてものであり、レビューのスコアと一致するとは限らない。
10位『黒神話:悟空』
ボス戦が「ゲームの華」だとするならば、『黒神話:悟空』は「大輪の花を集めた花束」のようなゲームだ。創造性に富んだ造形の妖怪が敵として立ちはだかっては、主人公の前に散っていく。数も圧倒的で、演出や仕込まれた細工を考慮すると、質と量をこんなにも高次元で両立させていることに驚く。戦闘には独特の心地よさがあり、時間停止や分身にまつわる術などを起点に、瞬間的にありとあらゆる攻撃手段を総動員する流れが楽しい。
雪山や火山、砂漠のような勇猛さを備えた自然の美しさもすさまじく、そこに宗教建築が融合する小雷音寺の風景は特に美しい。読経を含む音響、天界の者の登場も相まって、原作『西遊記』を描き出そうとする雰囲気も十分。原作を知らないと物語にかなり突き放した印象があるのは玉に瑕だが、倒した妖怪たちのバックストーリーを読める小話も収録しており、この世界がもつ桁外れのスケールと豊穣さを手の込んだ翻訳とともに楽しめる。――千葉芳樹
9位『Balatro』
『Balatro』は、配られたカードでポーカーをしているうちに脳から気持ちよい汁が溢れてくる傑作だ。
スコア倍率を上げる「ジョーカー」が本作の肝となるが、どのようなものが出るかは運次第。ゆえにプレイヤーは手元のカードをポチポチするだけでよく、気軽に遊んでいるだけなのに、射幸心を煽りまくる演出や沼にハマるようなサウンドが快感を生む。
そして、飽きられることを恐れない姿勢が素晴らしい。ビデオゲームは大作、あるいはリッチであることが評価されがちだし、実際にも多くのユーザーはボリュームを求める。『Balatro』もボリューム自体は多いが、しかし気持ちいいのは一番最初であり、それ以降は惰性になりやすい。
だが、幸運に心を揺さぶられる喜びはそう何度も必要ない。その一瞬のきらめきを研ぎ澄まし、後腐れのない美しいギャンブルのようなゲームに仕上げたのが『Balatro』なのである。──渡邉卓也
本作は他にもインディーゲーム賞を受賞している。
8位『メタファー:リファンタジオ』
橋野桂が率いるスタジオ・ゼロが8年の歳月をかけた『メタファー:リファンタジオ』は、ゲームデザインの踏襲やセルフオマージュが多く、アトラスの集大成とも言えそうだ。現実と幻想が交錯する作品を手掛けてきた彼らが初めてゼロから生み出した幻想世界は、中世×ファンタジーを基にし、世界観やサウンドなど彼ら独自のエッセンスが隅々まで施され、懐かしくも新しい、壮大なファンタジーを創造した。
魅力的な仲間との長い旅路は退屈せず、各地の風習や食文化が丁寧に描かれ、好奇心が尽きない。また、仲間の年齢層が上がったことにより「青臭さ」や「綺麗事」が減り、それらに対する非情な現実を淡々と描写していく脚本は新鮮なだけに留まらず、絶対王政から民主主義に移り変わる激動の時代を描くにあたり非常にマッチしていた。
ゲームデザインは「ペルソナ」を踏襲しつつ、特にバトルシステムはリスク・リターンが見直され、より高い戦略性をもたらした。結果として、これまでの作品とは似て非なる独自のコマンドバトルを実現した。確かに既視感は節々にあるが、全体的に高水準にまとめ上げた作品であり、彼らの次回作には期待が高まる一方だ。――野口広志
本作は他にもサウンドトラック賞を受賞している。
7位『龍が如く8』
『龍が如く8』は、前作の要素を見事に洗練させたRPGだ。ターン制コマンドバトルではキャラクターがフィールドを移動できるようになり、位置取りや攻撃範囲を考えることが大切になった。工夫を凝らして敵を倒したときの爽快感は、2024年のRPGでも随一だ。アクションアドベンチャーだった「龍が如く」シリーズは、『龍が如く8』で第一線級のRPGに生まれ変わったといっても過言ではない。
春日と桐生のダブル主人公によるストーリーも印象的だった。ときおり知性的な言動と器の大きな発言をする春日は、もう立派な主人公だ。その一方で、桐生は自分の死期を悟って達観しているようなところがある。その桐生が仲間に奮い立たされて、隠していた気持ちを吐露していくところが何より熱かった。「龍が如く」の名シーンを桐生の本音で振り返る場面の数々だけでも、本作はプレイすべき1本となっている。――片岡龍一
6位『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』
もしも完全な新規IPとしてリリースされていたら、『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』のゲームシステムはより大きな反響を呼んだかもしれない。なにせ、主人公自らが戦うことはできないという、縛りプレイなのだから。
ゼルダ姫は、魔物の力を「カリモノ」として召喚することで、冒険に挑む。数々のゲーム作品が、モンスターを仲間にしたいというゲーマーの目標を叶えてきた。「メガテン」、「ドラクエ」、「ポケモン」……、枚挙にいとまがない。だが、それらレジェンド作品のモンスターは――本質的には――魅力的なキャラクターデザインや数値化されたパラメータの産物だった。一方で、本作の「カリモノ」システムは、まさにゲームシステムの根幹にまで彼らの個性を落とし込んでいる。バトルのみならず、ダンジョン探索においても、それは同様だ。ここで、古き良き「ゼルダの伝説」シリーズのエッセンスが開花する。制約の中で、プレイヤーのひらめきが試される。100種以上の多種多様な「カリモノ」を、いつどこでどう使うかは自分次第。プレイヤーの感性に訴えかける、実にイノベーティブな作品だ。――若葉庭
5位『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』
『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』は、スクウェア・エニックスが行ってきたリメイクのなかでもとびきりの完成度を誇るタイトルだ。
原作の時点で評価されていたフリーシナリオ、閃き、陣形、皇帝継承、年代ジャンプなどのユニークなシステムはそのままに、近年の「サガ」シリーズからタイムラインを借り、さらにアビリティというよく見かける流行りのシステムまで追加したにもかかわらず、それらが完璧に原作の要素と混ざりあい、さらにアツいバトルが生まれていることに驚愕した。
マップを隅々まで探索したくなる仕掛けである「せんせい」探しや、あまりに不透明だったクエスト管理をマーカー制にするなど、現代のゲーマーが楽しめるように気を遣った点も素晴らしい。今後の「サガ」シリーズの偉大な船出を予見するような、希望すら感じるリメイク作だと言えるだろう。――各務都心
4位『アストロボット』
『アストロボット』はTeam ASOBIのスタジオ名の通り、上質な遊びが集約されたゲームだ。「遊び」を徹底的に研究して様々なプロトタイプを作り、それらをパワーアップやギミックとしてゲームに落とし込み、クリエイティブなステージデザインでさらなる刺激を加えている。結果、スポンジになって巨大化したり、時間を止めてカジノのチップを踏み台にしたりという、退屈な瞬間のない3Dプラットフォーマーが誕生した。
前作がすでにDualSenseの特徴を研究し尽くしていたが、本作はこれらを「遊びに落とし込むこと」にさらに長けており、ネズミのように小さくなって歩くだけで感覚が変わるといった感動をプレイヤーに与えた。
VR専用タイトル『ASTRO BOT: RESCUE MISSION』がもたらした衝撃をよりアプローチしやすい大衆向けタイトルとして継続することで、アストロはPlayStationを代表するキャラクターに成長したのだ。――クラベ・エスラ
本作は他にもファミリーゲーム賞を受賞している。
3位『ファイナルファンタジーVII リバース』
『ファイナルファンタジーVII リバース』は、オリジナル版や前作『ファイナルファンタジーVII リメイク』が描いた終末論的な暗さとは、まったく異なるアプローチを選択している。広大なフィールドには陽光と緑が満ち溢れ、コスタ・デル・ソルは地中海リゾートのような開放感を、コスモキャニオンはエアーズロックやグランドキャニオンのような渓谷美を、そしてゴールドソーサーはラスベガスのような享楽的な光景を湛えている。そうした場所に訪れたキャラクターたちは、学生の修学旅行さながら無邪気にはしゃいでいる。
つまり本作の真価は、世界を救うという壮大な使命を持つ「冒険」というより、むしろ「観光」――つまりは「ヴァカンス」という体験にある。そのなかで描かれるティファやエアリスとの恋愛模様、バレットやレッドXIIIとのコミカルな交流劇は、不器用で未熟なクラウドの視点から「青春ストーリー」として形作られていく。
前作の冗長なバトルや探索の欠点も克服されており、フルリメイク作品として卓越した完成度を誇る本作は、あえて別のタイトルを付けるならば「ファイナルファンタジーVII ヴァカンス」、あるいは「ファイナルファンタジーVII ~修学旅行編~」として、不思議な魅力を達成しているように思えてならない。――福山幸司
本作は他にもワールドビルディング賞を受賞している。
2位『バルダーズ・ゲート3』
『バルダーズ・ゲート3』はCRPGを現代に大きく普及させたゲームであり、それによって開発元のLarian Studiosは多くの新規ユーザーと無限のXPを手に入れた。古き良き「ダンジョンズ&ドラゴンズ」を彷彿とさせるテーブルトップRPGのゲームプレイ、一流のストーリーテリング、そして魅力的なキャラクターとビジュアルデザインをもつこのゲームは、CRPGを何年も触っていない人にも豊かな新体験をもたらした。
複雑でありながら親しみやすい戦闘システムと、探検の欲求を促す無数のロケーションを備えた本作は、とにかく夢中になれるゲームだった。ゲームプレイと世界観があまりにも魅力に満ちていて、やめ時を失ってしまうほどだ。Larian Studiosの次回作は「バルダーズ・ゲート」の関連作品ではないらしいが、彼らがサイコロを振って新しいゲームを世に出す日が今から楽しみだ。――ロブソン・ダニエル
本作は他にもゲームデザイン賞を受賞している。
1位『SILENT HILL 2』
IGN USがオールタイムベストに選んだホラーゲームの23年越しのリメイク作『SILENT HILL 2』は、ゲームとしての遊びやすさや霧の表現の進化など現代ならではの価値を獲得しつつも、発売当時にこのゲームが有していた先進性を改めて多くのプレイヤーに示すこととなった。
死んだと思っていた妻を追い、霧深い街サイレント・ヒルを訪れた主人公・ジェイムス。妻思いの愛情深い夫の側面を覗かせながらも、クリーチャーに対して過剰なほどの攻撃を加えるジェイムスを操作することで、プレイヤーは彼の内に秘められた暴力性を体験する。現在で言えばトキシック・マスキュリニティとも説明できるジェイムスの内面を、これほど説得力のある形で表現していたオリジナル版の鋭さに驚くとともに、目を背けたくような恐怖と暴力の向こうにある、割り切れないからこそ胸に迫る愛の形が浮かび上がる。
原作の美しさを損ねないまま、リメイク作品の持つ使命を十全に果たした新たなマスターピースが誕生した。――山田集佳
本作は他にもストーリー賞、サウンドデザイン賞を受賞している。