Photoshop Camera Raw 明瞭度 (Lightroom Classic CC現像モジュール)*再追記・画像 |
『明瞭度』の効果、仕組みや動きなどについて書きました。
*すでにいつもの後輩からは相変わらず長い…と言われてしまいましたが(^▽^;)
RAW調整(現像)をしっかりと行ないたいと思っている方は参考になると思いますので、じっくりご覧下さい。
RAW調整を行う上で大切な事は各種スライダーの動きの中身です。「こう動かせばこうなるよね。」と言う単純な見た目の解釈だけでなく、「色のなにが、どこが、どう動くからどうなる。」と言う事を頭の中で「結果」と同時にイメージしながら調整していく事が画像調整の基本になります。
ほとんどのユーザーはソフト自体を作る側ではなく、画像を構成している「色の結果」を各社ソフトが提供している各種の設定を使いこなし色を置き換える事が画像調整です。
Lab→XYZ→RGB
Photoshop(AdobeCameraRAW)はCIE L*a*b* (CIELAB D50)
Photoshopで使う色空間(モード)は4種類、RGB、CMYK、Lab、マルチチャンネル
白色点変換にはBradford変換
モニターやキャリブレーション、マッチング、カラーマネジメントシステムなどなど、デジタル画像でキモになる部分は難しい部分もたくさんあると思います。学ぼうと思うとどんどん深くなる。出来るだけ深みに入らず、見た目の操作だけですまそうと思うのも人心。
ご時世もあるでしょうし、時代は「手軽に良いもの」と言う風潮も増していっている気がしますが、作家(職人)が作品に向き合う「努力」と「効率(出来るだけ手軽にぱっと見良く)」は比例しません。
しかし、多かれ少なかれ手数をいれて調整を行う以上、可能な限り良い具合になるように調整したいですよね。
その為にはやはり最低限のデジタルの基礎部分は把握しておくにこした事はありません。
明瞭度も「何(色の動き)がどうなっているのかは分かりません。」と質問を受ける事が相変わらず多いです。
改めて明瞭度の動きについて少しでも把握出来るように書いて見る事にしました。
一般に明瞭度は中間調のコントラストやローカルコントラストなどと言われて(書かれて)いる事が多いように感じます。
大雑把に(単純)解釈するのであればそれで十分かとも思いますが、著者や弁者によって感情的な表現に重きをおいて発言したり、効果の説明なのに根っこには触れていない事、その説明では的を得ていないのでは?と思う事が非常に多いので学ぼうとするユーザーは困ります。デジタルは与えられた一定の動きしかしません。そう言う意味では答えは一つのはずなんです。考え方はとても単純で動きのリズムは定められた通りにしか動かないのですから一定です。プログラミングした当事者ではないので、確かに明確に説明するのは難しいですが、理解を得れるように書けたらいいなと思います。
効果がどの部分にどのようにかかっているのかを感じながら、把握しながら調整を行う事が最も大切で重要な事だと思います。
まず一番のキモは、
明瞭度は輝度(L)チャンネルに効果を与えています。
「輝度に対してハイライト、シャドー部それぞれにかけるコントラスト」になります。
(RGBに効果を与えてはいませんので、彩度が強くなる事はありません。)
中間を少し持ち上げ、そこから両サイドにそれぞれ違う動きでコントラストの山を二つ作る感じです。
一番白、黒は動きません。
ハイライト側では白い部分は下げつつ中間部手前をより下げ、コントラストをつけるように動きます。
シャドー側も全体に持ち上げるように動いたり、隣接する輝度差でシャドー部を作ったりして、中間部とのコントラストが見えるように動きます。
全体としては少しアンダー目に作用しつつ「深み」に見える表現に影響します。
輝度の動きを見てみましょう。(画像はすべてクリックで拡大)

一番白は影響なくハイライト部の白い方は少し下げ、グレー部はより下げる。
一番黒は影響なくシャドー部のグレー部を持ち上げ、中間からシャドー部全体を少し明るくしつつメリハリをつけています。
上は単純なグラデーションでしたので、少しランダムにしてみました。

エッジだけを強調すると言う事ではありませんね。ゆるやかに、コントラストと言うよりは全体の深みが増していくような効果になっています。
写真はグラデーションだけじゃないでしょと言われそうなので、、もう少しバラします。

*これまでに何度かトーンカーブでの動きでは効果を見れないの?と質問されましたが、この記事を書こうとした時にトーンカーブでの近似検証も何度もやって見てました。

上の画像のように、グラデーションとランダムでは周囲との明るさの違いに対して、同じ動きをしません。感覚的にハイライト・シャドー側でふた山(三山と言った方がいいかもだけど)階調を作っているのだと理解した方が分かりやすいと思い、説明してみました。実際にはハイライト側を持ち上げたり、シャドー側のよりシャドー部がさらに濃くなる場合もありますので、全体としてエッジが強く感じる画もあります。しかし、だからと言って、早計にエッジシャープと解釈するのは良くないでしょう。
明瞭度マイナスも一応見てみます。(明瞭度マイナスは別途記事にしています。)

もう一つは色に関する影響です。これが一番重要。
一般的にほとんどのユーザーは画像データをRGBで動かします。専門家は当然それに限りませんが、ソフトの大元はLabで動きます。L(輝度)に影響を与える調整をする事もある訳で、カメラマンも調整作業によっては輝度チャンネルに補正やフィルターをかける事があります。
僕もコントラストやとくにシャープ系は輝度チャンネルにお勧めする事が多いです。発言する方のほとんどがこの部分に触れていないのが個人的にはすごく気になります。色の動きは一番「画」に影響するのですから。また最近ではRGBにかかっているとの発言も見ました。その答えはやはり間違いと言わざる得ません。
画像(色)に対する効果の影響(違い)を改めて見るつもりでデータを作ってみました。

CameraRAW基本補正の「コントラスト」はRGBで効果を与えます。結果メリハリは出ますが、彩度が強くなります。明瞭度は彩度が強くはなりませんよね。どちらかと言えば彩度が沈みます。
下の二つはPhotoshopのトーンカーブでプリセットの「コントラスト強」をかけました。左が通常のRGBの画像データに対してかけたもの。右がモードをLabにして、Lチャンネルに同じくトーンカーブでプリセットの「コントラスト強」をかけました。
ピクセルに対して効果を与えるとき、RGBと輝度では色に与える影響が全く違う事が分かると思います。
輝度で白黒の強弱をつけて元からあった色をのせると考えれば良いと思います。白側は明るくなるので場合によっては彩度も明るく見えるかも知れませんが、明瞭度はとくに全体の明るさは下がっていきますし、シャドー側は色がくすんでいきます。
写真っぽいものでも比べてみましょう。

輝度に一定のリズムでカーブを与え、そこに元からある色をのせると言う事です。

使い方の部分で効果の違いを見てみましょう。

コントラストは単純明快で使い勝手も良いとされているようですが、本当に単純に中間から両サイドに広げるか縮めるかです。当然広げればハイライト部は圧縮され全体的に明るく白くなります。シャドー部はその逆。
画像ではガラスの蓋のハイライト部の表現が全く違うのが解ると思います。
繰り返しますが、ハイライト部で白い部分を押さえつつコントラストを付ける事により、白の中の白を作り出します。ハイライト部の表現が豊かになると言う事です。
*一部拡大しました。効果の違いを見て下さい。

もう一つ見てみましょう。

中央の白い駒はハイライト部のコントラストが出来るからこそ質感が再現されるのですね。
*拡大

最後にもう一つ。

明瞭度はハイライト部、シャドー部それぞれの成分を増やしますので、全体の深みも増した感じになります。
時々聞こえてくる説明の「深度が増したように効果を与えます。」と言うのは的を得ていると思います。
悪影響?破綻?

調整で色の置き換え(値点移動)を行う作業ですので、調整のし過ぎで画像がダメになる事はあります。
偽色、階調・画像崩れなど「破綻」と呼ばれる物と、動く仕組みで結果表現される「悪影響」は個人的には別の物だと思います。
「どうしたからどうなる」と言う事はやはり理解をしなければ、簡単な言葉で一括りで考えるのは良い調整を行なう妨げになると思います。
明瞭度の説明で低周波・高周波など周波数で説明されているのも見た事がありますが、やはり言葉はもっともらしく、かっこいいですが、僕は説明するのに合っているのか的をえているのかピンときません。ちょっと違う気がします。
エッジを強調しながら…とか、エッジを残しながら…なんたらとか、感想・説明を見た事もありますが、必ずしもエッジ強調がメインの処理ではありません。それはあくまで結果論です。簡潔な意味合いのシャープでもコントラストの動きでもありません。上記までに書いたように(単純な表現にさせて頂きますが)実に上手く一度にハイライト側、シャドー側でカーブを二つ作り、全体に階調の深みを出す動きを行ないます。
以上、僕の検証結果を踏まえて「明瞭度」をあらためて書いてみました。調整時のお役に立てれば幸いです。
**今更だけど、ニコンのカメラは内部処理に「明瞭度」が加わりました。最初ネーミングが一緒なのにはびっくりしたけど、、。僕はニコンユーザーではないので、確実な検証は行っていませんが、サイトなどで作例を見る限りは、名前通りでほぼ同じような動きをしているように見受けられます。
コントラストを足して全体の階調自体を左右に広げ、「明瞭度」でその中のハイライト・シャドー部に階調を足していく事で全体の階調が深く広がります。JPEG撮りをする方は有効に使うと良いと思います。
もう一つだけ、、、
CameraRaWの「ディテール」タブの『シャープ』(4種類の関連スライダー)も輝度チャンネルに効果を与えています。
こちらもRGBと説明されている方がいますが、違います。オプションを押しながら操作すると画面がグレーになりますが、「調整が解りやすいから」(だけ)では無く、そもそも輝度チャンネルで効果を与えているからです。
その下のノイズの「輝度」はそのまんま輝度ですよね。
シャープ系もRGBに与える事によっては同じように色に関わる部分で影響が出る場合もありますが、シャープ系はそれ以上に問題が出る事があります。
こちらは機会があればまた書くかも知れません。
コントラストとシャープの違い。使い方。
何がどう動くのか、どう見せるのかを正しく理解すると画像データ、作品作りの調整がより明確に行われると思います。