(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)
弾劾審理の渦中にある尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の支持率が、ここへきて爆上げしている。韓国メディアは新年早々に発表されたその世論調査の結果について、驚きをもって報じている。
私にとっても寝耳に水だった。目を丸くしたのは、まさに鰻登りとも言える回復力だ。
尹大統領が12月3日に非常戒厳を宣布して数時間で解除されてからわずか1カ月ほど、さらに非常戒厳への批判を追い風に国会で弾劾訴追案が可決されてから3週間しか経っていない。
それにもかかわらず、調査会社デイリーアンの発表によると、尹大統領の支持率は、今月第1週が42.4%で、非常戒厳宣布直前の25%よりもはるかに高くなっている。
この驚異的な回復力をめぐって、韓国の報道ではさまざまな考察がなされている。
そのなかで最も注目されているのが、尹大統領の対抗馬として次期大統領として最有力視されてきた、最大野党・共に民主党代表の李在明(イ・ジェミョン)氏の不人気である。
デイリーアンは今回の世論調査で、尹大統領支持率とともに、「次期大統領として投票したくない政治家」についても調査を行った。その結果、李氏は42.1%で2位の大邱市長ホン・ジュンピョ氏(16.8%)を引き離し、ダントツとなった。
この数字は、次期大統領を虎視眈々と狙い続けてきた李氏自身にとっても由々しき事態である。というのも、韓国日報の世論調査によれば、李氏が次期大統領として最も多くの支持を集めている状況には変わりはないものの、支持率は38%にとどまったからだ。
李氏の支持率は、大統領の弾劾審理という圧倒的に有利な状況に置かれているにもかかわらず、不支持率とほぼ拮抗しており、ややもすると不支持率よりも低いかもしれない。このことは、政党支持率にも表れていて、冒頭のデイリーアンの調査によれば、 共に民主党は38.9%で、尹大統領が所属する与党・国民の力(41.0%)に逆転されている。