(科学ジャーナリスト:添田 孝史)
中国電力島根原子力発電所2号機(松江市)が2024年12月7日に再稼働した。福島第一原発と同じ沸騰水型炉としては、前月に再稼働した東北電力女川原発に次ぐ2基目だ。島根原発は全国で唯一、県庁所在地に立地し、30キロ圏内には約45万人が暮らす。設計時に考慮されていなかった直近の活断層(M7.5)も問題視されている。
原発からわずか8.5kmに県庁
松江市の中心には、1611年築城の姿をそのまま残す松江城がそびえ、国宝5城の一つとして年間約35万人の観光客を惹きつけている。
松江城の天守から北西の方角を双眼鏡でのぞけば、島根原発の見学施設「島根原子力館」の三角屋根が見える。松江城から原発まではわずか8.5kmの距離だ。
福島第一原発の事故時、地震発生から15時間後には10km圏内の住民に避難指示が出され、26時間後に8.6km地点で毎時134マイクロシーベルトの放射線が検出されている*1。平常時3000倍以上にあたる。
*1 福島県 平成23年3月11日~3月31日(東日本大震災発生以降)にモニタリングポストで測定された空間線量率等の測定結果について
島根県庁は松江城三の丸跡にあり、原子力災害の際に対応拠点となる。全国の県庁で唯一、放射線被曝を減らす設備を備えた建物だ。
東電事故の際、原発から約5kmにある現地対策本部の建物(オフサイトセンター)は室内でも放射線レベルが高くなって使えなくなり避難した。それを教訓に、2015年に放射線防護設備を導入し、7日間籠城できる食料やトイレなども備えている。