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IT企業の年頭所感

エンタープライズ領域におけるAIエージェント元年--グーグル・クラウド・平手代表

ZDNET Japan Staff

2025-01-10 11:30

 2025年に向けたIT企業のトップメッセージや年頭所感を紹介する。

グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 日本代表 平手智行氏

 2024年は、生成AIを「試す」フェーズから、企業のコア業務に組み込んで責任を持って「使う」フェーズへと大きく転換した一年となりました。特に注目すべき点は、企業内の膨大なデータ活用が本格化したことです。企業データの約8割を占める非構造化データの活用は企業にとって大きな課題でした。マルチモーダルな生成AIを活用することで、これらの潜在的なデータを自然言語で扱えるようになり、現場で使われていた非構造化データが、企業全体で活用されるとともに、AIの専門知識を持たない社員の方々へのAIの民主化が促進され、さらに企業のデータ活用の精度が向上しました。

 2024年ノーベル化学賞を受賞した「Google DeepMind」のSir.DemisHassabisとDr.JohnJumperの功績も示すように、AIは社会や企業のコア業務において具体的な価値をもたらす段階に入ったといえます。

 「Google Cloud Next Tokyo ’24」や「Generative AI SummitTokyo '24 Fall」では、実践的で革新的な生成AIのお取り組みを多くのお客さまよりご紹介いただきました。また、「Gemini for Google Workspace」が日本語にも対応したことで、ビジネス変革に直結する生成AIの活用が進んできています。

 そして2025年、生成AIのビジネスへの本格利用を始める上でAIエージェントは欠かせない要素となります。AIエージェントは目標を達成するために、生成AI自らが状況を判断し、計画を立て、行動し、結果から学習することができる優秀なアシスタントのようなもので、さまざまなAI技術を組み合わせることで実現できます。

 エージェント時代に向けて、Googleは2024年12月に「Gemini 2.0」を発表いたしました。Gemini 2.0は高度な推論機能をAIによる概要に導入し、高度な数式、マルチモーダルに対応したクエリ、コーディングなど、より複雑なトピックや複数ステップの質問に対応できるAIモデルです。Gemini 2.0の進歩は、私たちが10年にわたり投資してきた、独自のフルスタックAIイノベーションである、第6世代TPUの「Trillium」などのカスタムハードウェア上に構築されています。この先進的なTrilliumは日本をはじめとする各リージョンでご利用いただけます。

 AIエージェントは、特に「ナレッジポータルの構築」「コールセンターや顧客サポートの効率化および自動化」「テキスト、音声、画像、動画などの非構造化データの処理の自動化」などの領域でビジネス上の高い効果を発揮します。そこで、Google Cloudは、2024年12月に企業内のさまざまなデータや知見を活用できるプラットフォームとなる「Google Agentspace」を発表しました。Agentspaceを活用すれば、Geminiの高度な推論能力、Googleの検索機能、そしてGoogle Cloud製品だけでなく、「Microsoft 365」やServiceNow、Box、Dropbox、SAP、Oracleなどに保存された企業内データを組み合わせることができるため、生産性は飛躍的に向上します。

 企業がAIエージェントを活用する上で、以下4つのポイントは必要不可欠です。Google Cloudは、この4つの取り組みについて引き続き注力してまいります。

(1)マルチモーダル対応による非構造化データの活用拡大

 1つ目は、テキスト、音声、画像、動画といった多種多様なデータ種別への対応です。生成AI活用が普及する前のデータ活用は、主として表形式の数値データ、いわゆる構造化データのみを対象として、コマンドをプロンプトとして入力して利用していました。しかし現在は、テキスト、音声、画像、動画といった非構造化データも、生成AIを通じて容易に処理できるようになっています。これにより、企業内に蓄積された多様なデータを業務やビジネスの意思決定に活用できる環境が整いました。「Google Veo」や「Imagen 3」を「Vertex AI」上で提供開始したことでクリエイティブ制作のワークフローを効率化します。

(2)ロングコンテキストへの対応による情報処理能力の飛躍的向上

 2つ目は、ロングコンテキスト機能の強化です。Geminiでは最大200万トークン(約2時間の動画、PDF約1500枚、21時間の音声やプログラムコードなど)までの情報を一度に処理できるようになりました。これにより、企業活動に必要な膨大な前提知識を踏まえた、より正確で文脈に即した回答が可能になっています。例えば、長時間の会議の内容から重要な論点を抽出したり、複数のレポートから必要な情報をまとめて分析したりといった高度な情報処理が実現できます。

(3)企業データの安全な活用

 3つ目は、企業固有データの安全かつ効果的な活用です。特に検索拡張生成(RAG)やグラウンディング技術の進化により、企業固有のデータや最新の情報に基づいた、より正確な回答が可能になりました。また、生成AIの課題とされていたハルシネーション(幻覚)への対策も格段に強化されています。Googleは企業の持つデータとGoogle検索結果を組み合わせた回答を可能にする技術を提供しており、企業が安心して、また、責任を持って生成AIをビジネスに活用できる環境を整えています。

(4)包括的なセキュリティ強化

 これは、AIを守ることと、AIで守ることの2つの観点に大別されます。AIシステム特有の脆弱性(敵対的サンプル攻撃、データポイズニング、モデル盗難など)に対しては、「セキュアAIフレームワーク」を通じて包括的な対策を提供しています。AIを活用したセキュリティ強化として、「Gemini in Google Security Operations」などのAIを組み込んだソリューションで脅威の迅速な検出、調査や対応の自動化を実現し、セキュリティ運用の自動化、効率化による人材不足の課題解決にも貢献しています。

 2025年は、生成AIを活用した企業データの戦略的活用がより一層重要となります。データ、AIを中心に企業のシステムのモダナイズは加速していくでしょう。Google Cloudは既存のお客さまに限定することなく、オンプレミスを含むハイブリッドクラウドやマルチクラウド環境のお客さまも含めて強力なサポート体制と先進的なソリューションを提供してまいります。そして、大胆かつ責任あるAIの基本理念を守りながら、引き続きAIおよび生成AIの可能性を最大限に引き出す新たな技術や製品を提供することで、パートナーさまとともに生成AIを通じたお客さまのビジネス成長に貢献してまいります。

 本年も変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

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