電通総研は、SAP ERPのユーザーを対象とした「SAPユーザー意識調査結果2024年度版」を発表した。「SAP ERP Central Component(ECC) 6.0」から「SAP S/4HANA」への移行が進んでおり、ユーザーが妥当だとする想定移行費用が高額化していることも分かった。
同社は、1995年からSAP関連ソリューションを提供し、のべ300以上のプロジェクト経験があるという。今回の調査は、SAP ERPを導入している国内の約1300社を対象として、9月24日~10月31日にアンケートなどを行い、275社が回答。内訳はECC 6.0のユーザーが167社、S/4HANAユーザーが108社、双方を利用する企業はいずれにも加算して算出しているとのこと。
まずS/4HANAのユーザー比率は、2024年度調査では39.3%に上り、2023年度調査から11.8%ポイント、2022年度調査からは23.0ポイント上昇した。
SAP S/4HANAの利用状況(出典:電通総研)
ECC 6.0のユーザーが想定しているS/4HANAへの移行方式では、現行のアドオンを継承する「コンバージョン」が32.7%で最も多く、以下は「未定」が24.2%、「第三者保守に移管し、ECC 6.0を継続利用」が15.2%、「『RISE with SAP』へ移行」が14.5%、「リビルド」が5.5%、「S/4HANA以外のERPを導入」が4.2%だった。RISE with SAPの選択は、2023年度調査から9.7ポイント増加した。
SAP S/4HANAへの移行方針(出典:電通総研)
また、ECC 6.0のユーザーが想定しているS/4HANAの稼働環境では、「パブリッククラウド」が43.4%で最も多く、以下は「RISE with SAP」が32.1%、「未定」が23.2%、「プライベートクラウド」が12.6%、「オンプレミス/データセンター」が8.2%、「SAP HANA Enterprise Cloud」が6.9%、「GROW with SAP」が4.4%だった。2023年度調査と比べ、RISE with SAPで12.2ポイント、パブリッククラウドで7.0ポイントそれぞれ上昇した一方、オンプレミス/データセンターは9.4ポイント減少。全体的にクラウド環境を選択する傾向が強まった。
SAP S/4HANAの想定プラットフォーム(出典:電通総研)
ECC 6.0のユーザーが妥当だと想定している移行費用は、「未定」が23.9%で最多だが、金額別では「5億~10億円」(18.2%)、「1億~3億円」(17.6%)、「3億~5億円」(15.7%)「10億円以上」(14.5%)、「5000万~1億円」(5.0%)、「5000万円以下」(5.0%)の順だった。2023年度調査に比べて、3億円以上と想定する企業の割合が増加し、3億円以下で減少。想定する移行費用が高額化していた。
妥当だと思うSAP S/4HANAへの想定移行費用(出典:電通総研)
ECC 6.0のユーザーが今後検討している取り組みたいテーマには、「AI活用」(53.5%)や「経営データの分析効率化・高度化」(50.0%)、「ローコード開発ツールによるアプリケーション開発」(37.3%)などが挙がった。