「エッジコンピューティング」は、モノのインターネット(IoT)時代において、クラウドコンピューティングと並んで重要になる――。IDC Japanは9月2日、国内エッジコンピューティング市場の分析結果を発表して、国内ベンダーの取り組みについて広く調査した。
エッジコンピューティングは、中央のサーバに対し、ネットワークのエッジ(末端)のユーザーに近いところでコンピューティング処理を実行することを意味する。ネットワークコストを抑えレスポンスのリアルタイム性を高められるなどのメリットがある。
エッジコンピューティングはこれまでも、ウェブパフォーマンスの向上を目的とするコンテンツ配信ネットワーク(CDN)などで広く利用されてきたが、IoTにおいてその重要性に再び注目が集まっている。
IoTにおいては、IoTデバイスと、そこから遠く離れたクラウドコンピューティングだけでは不十分で、IoTデバイスの近くでコンピューティング処理を行うエッジコンピューティングが必要であるということが広く認識されつつある。なお、エッジコンピューティングと類似の概念として「フォグコンピューティング」もある。
同社の調査分析の結果、IoTで利用されるエッジコンピューティングの特徴として明らかになった点は以下の通り。
- アナリティクス志向:IoTデバイスで生成された膨大なデータをクラウドに集約せずに、IoTデバイスにより近いところでアナリティクス処理するためにエッジコンピューティングが利用される
- システムの機能分散による全体最適化:システム全体(エッジ、クラウド、IoTデバイス)にインテリジェンス機能を分散し、これらを連携させることでシステム全体のコストや負荷を低減できる
- 異なるエッジ間で連携:エッジコンピューティングがデータ流通プラットフォームとなり、エッジ間でデータを流通させることで、企業や業界の壁を越えてデータを利活用する新たなソリューションとビジネス機会が作られる
またエッジコンピューティングは、エッジのロケーションによって「オンサイト型」と「広域ネットワーク内型」の2つに分類でき(下図参照)、各々適するユースケース(用途)が異なること、クラウドコンピューティングと同様にパブリック、プライベート、業界(コミュニティー)型などに分類されることも分かった。
エッジの場所によるエッジコンピューティングの分類(IDC Japan提供)
現在、エッジコンピューティングについての一般的な認識は、レスポンスのリアルタイム性を高めるための、IoTデバイスとクラウドコンピューティング間の中間システムといった程度にとどまっている。今後は、データを活用するための基盤としても、エッジコンピューティングの重要性は高まっていくとしている。