UPDATE ミラクル・リナックスは8月15日、企業向けシステム監視ツール「MIRACLE ZBX 2.0」を無償で公開した。yumコマンドのほかにウェブでもダウンロードできる。
MIRACLE ZBXは、オープンソースソフトウェア(OSS)の統合監視ツール「Zabbix」をベースに、ミラクル・リナックスが企業向けに開発した機能などを盛り込んでおり、ミラクル・リナックスが独自にパッケージとして作成している。
Zabbixは、サーバやネットワーク、アプリケーションを集中的に監視する。監視対象のサーバに“Zabbixエージェント”を導入し、監視システムの中心となる“Zabbixサーバ”が、エージェントからのサーバのリソース情報やアプリケーションの稼働情報を収集する。Zabbixサーバの監視設定と収集データは「MySQL」に保存される。
日本国内では、通信や金融、公共などの業種でZabbixが導入されるようになっている。だが、機能や品質、サポートの面でZabbixでは対応が難しいとする向きもある。ミラクル・リナックスでは2006年からZabbixに携わるようになり、その中で日本企業の要望に対応する形でZabbixの修正パッチを作成するようになっている。
修正パッチはミラクル・リナックスに所属する個人がコミュニティに通知するとともに、MIRACLE ZBXに取り込んで提供している。ミラクル・リナックスは2012年12月にZabbixの開発元であるZabbix SIAのパートナー企業を外れている。
「ミラクル・リナックスが作成した修正パッチは、6月時点で17件、8月には19件になる。Zabbixに採用された修正パッチの実績で見ると、翻訳を除いてミラクル・リナックスが世界1位になる」(ミラクル・リナックス 執行役員 エンタープライズビジネス本部 本部長 鈴木庸陛氏)
修正パッチは、これまでにサポート契約を結んだユーザー企業からの報告や依頼に基づいたものだ。例えば、Zabbixサーバのメモリリークの不具合やZabbixエージェントでクラッシュするという不具合などクリティカル度の高い不具合の修正は、OSSのZabbixに取り込まれている。
その一方で、MIRACLE ZBXだけに取り込んだパッチの数は22件。MIRACLE ZBXだけに取り込まれているのは、企業用途では重要な修正だからだ。
例えば、「Zabbix Proxy」と呼ばれる構成を組んだ時に監視データが欠損するという不具合も、ミラクル・リナックスが修正パッチを出した。ミッションクリティカルなシステムを支えるサーバの監視データが抜け落ちたり、順番が入れ替わったりといったトラブルは言ってしまえば、小さなものだ。だが、信頼性や可用性をとにかく重視する日本企業では、あり得ないものだ。
ここ数年、IT部門は常にコスト削減圧力にさらされている。象徴的に言われるのが、年間のIT投資の7~8割がシステムの運用維持に回されているという実態だ。そうした流れの中で「運用監視はコスト削減策の対象になりやすい」(ミラクル・リナックス エンタープライズビジネス本部 担当部長 松永貴氏)。そこで注目されたのがOSSのZabbixという背景がある。
だが、Zabbixがそのまま日本企業に最適かどうかという視点では、いささか心もとないとする見方もある。ミラクル・リナックスが作成してきた修正パッチの数が示す通り、MIRACLE ZBXは、Zabbixをより日本企業の運用実態にあわせたパッケージと表現できる。つまりは「日本企業に鍛えられた」(鈴木氏)監視ツールと言い表せる。
MIRACLE ZBXはサポート契約を交わしたユーザー企業にだけ提供されていた。今回の無償公開は、OSS活用に不安を感じるユーザー企業も含めて、より多くのユーザー企業に使ってもらって、運用管理コストの削減に交換したいという狙いがある。今回の無償公開にあわせて、ミラクル・リナックスは“MIRACLE ZBX 110番セミナー”を9月26日に開催する。ここでは、MIRACLE ZBXのサポートで実際に問い合わせがあった事例をベースに、Zabbixを利用する上で遭遇する問題と対処法を紹介する。
編集部注(8月16日12時45分):一部を修正しました。